信長への狙撃は未然に防がれたものの、善住坊がその場に残した堺銃は宗久に届けられる。そして堺に戻った兼久より、真相を聞いた宗久は、五右衛門に命じて善住坊の行方を捜させる一方、兼久を繋ぎ止めるべく、美緒との挙式を来春に決める。北の庄のしまに匿われた善住坊を、助左は琉球丸に密航させて、琉球に逃そうと試みる。そのために、美緒の密航の頼みを聞き入れることができなかった。だが、宗久の命を受けた五右衛門も琉球丸に乗り込んでき、善住坊の暗殺を試みる。その時、琉球丸は嵐に遭い、難破する。船長の才蔵は助左に「お前の親父もこうやって死んでいった」と言い、船と運命をともにするのだった。
兼久のやけっぱちが辺りを雪崩のように巻き込んで最悪の展開になろうとしてます。近江源氏の末裔だったかの誇りも何も、憎い親父と一緒に滅ぶならばって感じです。たぶん、別の理由で人気は高かったような気もします、兼久。一方で、梢ちゃんの正体も知らんと呑気にいちゃいちゃしてます。とても彼女が九の一だとしっていたとは思えませんが、そこまで馬鹿でもなさそうですが、どうでしょう。
で、宗久は最初は激昂しますが(個人的にはここで兼久を撃ち殺してしまった方が後々良かった気もするんですが)美緒に諫められて止めまして、非情な性格を出してきます。善住坊に全ての罪をひっかぶせて、織田勢よりも先に見つけ、殺してしまうことです。
でも、その善住坊は助左に助けられ、北の庄に匿われて、次は琉球丸へ乗り込みます。ここに来て、自分が兼久に利用されたことを知った善住坊、己の罪の大きさにおののく様がなんとも子犬みたいです。ぶるぶる震えるチワワっちゅうか。たぶん、善住坊はずっとこんな調子で生きていくのだろうなぁと思いました。助左が商人としての才覚を見せて、堺でのし上がっていき、五右衛門が大泥棒として天下を騒がすほどになるような才能は善住坊にはありません。それだけにいちばん庶民っぽいちゅうか、ぱんぴーっちゅうか、なところが何とも哀れで、わしらに近くて、同族嫌悪されそうなキャラではなかったのかと思いました。川谷拓三さんが演じたのも、そういう役が多いんじゃないかと思いますし。
そんな善住坊が迎える壮絶な最期。時代が時代だけに、そうならざるを得なかったのか、もしも現代に生きていれば、もっと平々凡々な生活ができたのじゃないか、ふと死刑というのはわしらにもっと身近なものではないか、と思ってしまったりするのでした。それだけに、まるで他人事のように「吊せ」と言う輩はわしは信じられんのです。声を大にして死刑反対ともまだ確信が持てないのですが。
閑話休題。
で、兼久を兄とは思えても、結婚相手とは思えない美緒が、助左に懇願します。でも助左は善住坊も逃がさないとなりませんし、美緒は憧れの女性で、頼みならば何でも聞きたいところなんでしょうが、「これで良かったんだ」とつぶやいているところを見るに、自分なんかが出しゃばって、おおもと=宗久の機嫌を損ねるわけにはいかない、とも思ったかもしれません。でもなぁ。いくら宗久の意志だからといって、兼久と結婚しても美緒が幸せになれるかどうかはほとんど無理じゃないかと思うんですが。助左はそんなことは考えなかったんでしょうか? そこら辺が、時代の制限なのかもしれませんが。ここで助左と美緒が愛の逃避行なんかやっちゃった日にはいくらファンタジーとはいえ、時代劇が成り立ちませんしな。
ところで、一応突っ込んでおきますが、この時の助左と美緒の回想シーンの海岸は、往年の某国営放送らしく、見るからにちゃちいセットでした。セットってのがありありとわかっちゃうようなちゃちさでした。「黄金の日日」にはわりとそういうちゃちいセットのシーンがよく出てきてたんですが(総集編で見た時には)、見ているうちに役者さんの演技がどーでもよくしてくれるのです。そう、セットなんかちゃちかろうと、演技に引き込まれる時には引き込まれてしまうのです。ドラマというものはやはり役者あってのものだと思います。
さて、ついに出航した琉球丸。でも、善住坊を殺せとの命令を受けた五右衛門まで乗り込んできちゃって、助左は知らんようですが、善住坊は気が気じゃありません。しかし五右衛門、いくら善住坊を殺すタイミングを狙ってたとしても、嵐の真っ最中ってのはあんまり名案とは思えません。五右衛門にしてみれば、自分が善住坊を殺したってことを助左に知られたくなかったのだろうか、とも思うんです。でもそんななまっちょろい友情なんか示さないようなキャラな気もするんです。結局、嵐は船を難破させ、五右衛門の策は崩れます。
で、一方で、助左は船長の覚悟を知ります。自分の父親も同じような死に方をしたと言われますんで、それなりの身分ではあったのね。
しかし、船から逃れるためにたぶん、ボートを降ろしたと思うんですが、琉球丸サイズの船でも難破するのに小さい船なら逃れられるんだろうか? よくボート降ろすけど。
そっちの人たちがどうなったかは神のみぞ知るってことで、助左たちは南海の小島に漂着することに。そういう理屈としては、逆に、3人が最後まで船に残っていたというのは一緒に助かるには説得力があるな、とか変なところで感心したり。
で、今井ががたがたしているあいだに、津田と能登屋というのが暗躍、三好に取り入ろうとします。能登屋をやってるのは志村喬さんだ! 「七人の侍」の勘兵衛であり、「生きる」の課長であり、たらこ唇がらぶりーで、黒澤映画に欠かせないおっさんだ! プライドばっかり妙に高くて、でも小心者って能登屋がなんともはまってるのさ! それもこれも、義昭が諸国に信長討ってなんて言い出したから。実はけっこう信長がピンチだったりします。でも、凌いでしまったのは史実のとおり、能登屋も津田も先を見る目がないなぁと思います。その分、宗久の目の確かさが売りになるわけです。
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