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されど平穏な日々

日々のつぶやきと読んだ本と見た映像について気まぐれに語るブログ。Web拍手のメッセージへのレスもここ。「Gガンダム」と「ジャイアントロボ」への熱い語りはオタク度Maxにつき、取り扱い注意! 諸事情により、コメントは管理人が操作しないと反映されません。時々、サイトの更新情報など。

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第17回 黒龍丸事件

クライマックスの始まりです。

「ここにひとつの鉄の塊がある」から始まる重厚なオープニング。ここから話の雰囲気が重く、暗いものになっていきます。
「かつて鉄人と呼ばれたそれは、日本の高度成長を支えた礎のごとく姿を変え、平成と呼ばれる今もなお、この日本のどこかに誰にも知られず身を隠している。そしてその姿は時代の罪を一身に背負ったように赤く黒い」
という語りとともに映し出されるのは、よくわからない黒い塊ですが、見ているうちに3回目でやっと理解した! 鉄人だ、これ! ナレーションで言ってるように、ほんとに鉄の塊、鉄人が溶けた無惨な姿なんだ! やがてアップになる目で、やっとわかりました。

そしてタイトル。

「正太郎」(「」付きの正太郎は主人公の正太郎少年のことではなく、かつて「正太郎」と呼ばれた鉄人28号のことです)に繰り返し繰り返し謝罪する金田博士(CVが飯塚昭三さんなんですが、「はじめの一歩」で鴨川会長の声をあてられてた内海賢二さんが亡くなったので、その後を継いで声をあてられることになったそうです。見たいぞ、飯塚さんの鴨川会長vv)。
「正太郎」が包帯だらけですんで、誰かの回想ではなく、過去のワンシーンのようです。
自分が生み出したものの怖ろしさに気づいたという金田博士。それは、わしは初見では「正太郎」のことかと思ってましたが、最後まで見ると違うんですよね、実は。映画でも廃墟弾とか作ってるし、その心情とは裏腹に兵器開発の天才です。
「だが許すまじきはビッグファイア!」と叫ぶ金田博士。まぁ、これがあるので、この後に登場するビッグファイア博士が胡散臭く見えてしょうがないです。CVも中村正さん(「ジャイアントロボ The Animation〜地球が静止する日」で孔明やってたもんで)ですし…

続いて、沈んでいく船、第三黒龍丸にシーンが移ります。ボートで逃げ出した人びとが国民服を着ているところを見ると戦時中のことと思われます。
そのボートに乗っている、片眼鏡をかけた人物がビッグファイア博士、その人です。
その目の前で沈んでいく黒龍丸。今回のタイトルロールですな。

そして今までの事件、特に戦争と関わりが深い不乱拳博士と第弐鉄人計画、超人間ケリー、光る物体、ブラック博士、そして人工知能ロビーの映像を流しつつ、これらが敗戦に埋もれることを拒みつつも、高度経済成長という時代の波に乗ることもなく霧散していったことがナレーションによって語られます。つまり、今までの話で出てこないのは怪盗ブラックマスクだけ!
黒龍丸はその最後にやってきたものです。戦争が生み出したまま、この国が忘れ去ろうとした最後の遺物が、そこには隠されていたのです。って最後まで見ないとわからない謎のたたみかけも今川節全開w

そして日本にやってくるベラネード財団。この国はアメリカの財団かと思っていたんですが、原作だと別の国でした。まぁ、名前を変えただけで仮想アメリカな感じですが。
それを大歓迎する人びと。何を期待しとるんじゃ、おまえら? ベラネードさんが善意で日本を復興してくれるとでも思ってるのか? トモダチ作戦と称して金をふんだくっていった外国の軍隊がいることを知らんのか? げふんげふん…

閑話休題。

ベラネード財団はあらゆる分野の産業に力を持ち、かつ流通も支える、まさに世界経済の大黒柱です。ただ、裏では強引な手段、違法な取引も少なくなく、経済による世界征服者と言われたり敵も少なくないそうです。
そして一体のロボットが飛行機から落とされます。サターンです。
それは到着したばかりのベラネードと出迎えの大塚署長もろとも踏みつぶそうとしますが、そこに鉄人28号登場、サターンを殴り飛ばします。
サターンはとうとう鉄人を抱えて自爆作戦に出ましたが、鉄人のロケットが壊れただけで鉄人は無傷でした。よわッ!
その勇姿に「これが鉄人か」と呟くベラネード。
ベラネードに鉄人を化け物呼ばわりされて怒る正太郎。「正義の味方だ」と言ってのける正太郎に、かつて鉄人を化け物と呼んでいた影はありません。
しかし不敵に笑うベラネード。サターンを操縦していたのも誰かわからない状況ですが、最後まで見るとベラネードのやらせだったのかもと思えなくもないです。

一方、ベラネードに怪我をさせなかったことで官房長官に褒められる正太郎。そういや、この人、ずいぶん長いことを見ていなかったような気がする…
でも大塚署長は怒られてしまいました。ベラネードに何かあったら、それを口実に財団が乗り込んできて、日本をめちゃめちゃにしてしまうことを官房長官は心配しているのです。「日本の復興は日本人の手で成し遂げなければならん!」と言う官房長官に、大塚署長ははぁとかふぅとか情けない返事です。
しかし大塚署長、大事なことを伝えました。「例の男が巣鴨プリズンを出所します」と。
驚く官房長官。
その男とは果たして、黒龍丸から逃れてきたビッグファイアだったのです。

外の空気を味わったビッグファイアは見張っていた関刑事に「用があれば、いつでもどうぞ」と言って去っていきます。鉄人が戦った相手に、わりと同情の余地とか多くて、戦うのもやむなしという感じがあったんですが、ここから10話分の敵役、ベラネード財団、PX団、ビッグファイア博士はわりとはっきりした悪役として描かれます。
官房長官はビッグファイアのことは敷島博士に任せてあるから大丈夫と言いますが、何でや…

ともかく警察署に帰る大塚署長。
そこで謝る正太郎。自分が鉄人で活躍したことで大塚署長を邪魔しているんじゃないかと心配しちゃったのです。
でも、大塚署長はそんなことは気にしない太っ腹。警官として有能かはともかく、上司としてはわりといい人材だと思うんですよね。なんで、正太郎と鉄人をうまくおだてて(しかも本人にそういう意図がなくても)働かせてるんだから、案外策師なのかも… ナイナイ
その時、悲鳴が上がりました。
しかし、走ってきた男性は正太郎と大塚署長の目の前で、撃ち殺されてしまいます。
大塚署長は慌てて部下に追わせます。
被害者に駆け寄った正太郎は男性にまだ息があると言いますが、彼は「海底の墓場、バギューム、黒龍丸」と言って息絶えてしまいました。

官房長官は別の筋から警視庁の前で男性が殺されたことを知った模様。
しかも「これでは何のために鉄人を認知して世の中の注目を集めたのかわからないじゃないか」とか言ってますが、これは何を指してるんだ?

敷島重工にやってきた正太郎は鉄人のメンテを目撃します。
そこに笑いながら現われる敷島博士は「昨日、鉄人が苦戦したから見ておこうと思ってね」って言ってますが、ベラネードが来たの、昨日なの?
そこに現われるビッグファイア。
さすがに正太郎、ビッグファイアを見た覚えがあると言います。超人間ケリーの事件の時、金田博士、牧村博士、不乱拳博士、ドラグネット博士、敷島博士と一緒に写っていたからです。
でもビッグファイア博士が鉄人計画を手伝っていたことを知り、驚く正太郎。そしてビッグファイア博士は鉄人計画に加わるために日本に帰化までしたと言う敷島博士。
そう言えば、第1話で村雨健次が金田博士を「生きていれば戦犯」と言ってましたが、ビッグファイア博士も戦犯として巣鴨プリズンに収納されていたのです。そうなると、敷島博士が戦犯を免れているのは、運がいいとかのレベルではないのだろうなぁ…
また鉄人のロケットを作ったと言うビッグファイア博士は、昨日の戦いで鉄人がロケットを壊されたことを咎めます。この人、全般、こんな嫌みな感じです。正太郎相手に大人げないっていうか。
続いて工場を褒めているようで敷島博士にも嫌みを言うビッグファイア博士。どうも他人への妬みが強いようで、それがこの人の行動の原動力になってるんですかね。
そして、敷島博士は敷島重工の現場をこれからビッグファイア博士に任せると言い出します。自分は社長業優先だそうですが、どう考えても逆の方が合ってると思うんですが…
敷島博士は敷島重工をもっと人びとの役に立つ工場にしていきたいと言います。そういう展望をもって会社を経営すると、現場には目が届きづらくなるのかもしれません。まぁ、ここ、そうとうな大会社やしな… そして敷島博士にはそういう願いはあってもビッグファイア博士にないのだとしたら、ビッグファイア博士が現場の指揮を採るのも悪くはないのでしょう。ただ、金田博士が「許すまじきはビッグファイア」と言っていたのが引っかかるだけで…
と思っていた矢先から、2人の姿を見て、ビッグファイア博士が「夢ならいくらでも見るがいい。どうせ、この工場はわたしのために動くことになる」と独白。もう最初から悪人丸出しです。

さらにナレーションまで「黒龍丸、海底の墓場、バギュームという言葉とともに、この男(ビッグファイア博士)の登場は正太郎と鉄人を時代の坂道へと転げていくことになる」とか言い出しちゃって、初っぱなから何かあるぞ!な雰囲気満々です。

その日の夜、海底で調査をしていたところ、突然爆発が起こり、水の柱が上がります。

それは伊豆半島沖の出来事でした。
近くで操業していた漁船が巻き込まれ、乗組員が全員死亡という惨事となります。

そのニュースを見る大塚署長と関刑事。

おんぼろテレビで見るビッグファイア博士。すぐに写らなくなっちゃうからです。

昭和30年というのはテレビが出たばかりの時代(1953年に放送開始)でしたんで、三種の神器になるのはもうちょっと経ってからでしょう。

正太郎も同じニュースを見ていますが、これは正太郎んちか?

それから、敷島博士にかかる一本の電話。
どうやら同じニュースを見ていましたが、何か裏を知ってそうな会話です。
しかも調査のために鉄人、とでも言われたようですが、メンテ中ですんで、それは断る敷島博士。その代替案が出されて、「あれならば」と言うので、相手は官房長官でしょうか?

だったようです。
官房長官が「まさか彼を使うことになるとはな」と独白。「だが、あれは何としても隠しとおさねばならん」というあれは、一回最後まで見ないと何のことだかわかりまへん。出てきても、何がまずいのかさっばり…という物です。

「あれ」を使うことになって敷島博士に呼び出される正太郎。
正太郎は「僕にあれが使えるでしょうか?」と訊いてますが、敷島博士は自信たっぷりに「わたしが鉄人と同じに修正してあげた」と答えます。天才だ! やっぱり、この人、天才だ!
そして正太郎に第三黒龍丸の写真を渡し、調査を頼む敷島博士。
これが伊豆沖で沈んでおったんか。
確かにビッグファイア博士には重要なことでしょうな。
すると正太郎も昨日、殺された男性が呟いた言葉のなかにあったことを思い出し、敷島博士に打ち明けます。
驚く敷島博士。そりゃあ、そうだろう… バギュームの名を聞いてはな… と最後まで見ると頷きながら見られる敷島博士の行動。
敷島博士は珍しく膝をついて正太郎の手を取ります。基本、身長差もあるから上から目線なんですが、別に嫌みな人でもないので気にならないんですが、こういうポーズは珍しいです。
そして敷島博士は正太郎に「この船の中に何を見るのかはわからない。でも何を見ても落ち着いて判断してほしい」と言いますが… 無茶言うな!!! と言ってやりたいです、わしは。思えば、この物語の初めから、正太郎は自分と同じ名前を持つ者に出会い、悩まされてきたのです。それをやっと受け入れたばかりだというのに… 受け入れたというのに…
でも、それが何か予想もつかない正太郎は、ただ頷くばかりでした。

そして家に帰る正太郎を見送る敷島博士。2人は港での再会を約束して別れました。

ところが敷島博士はナレーションで別れを予言されちゃいます。

そうとは知らず、明日の支度をする敷島博士。そこに訪問者がありました。玄関で出迎えた敷島博士が会ったのは「京都編」で綾子さんに協力していた某国のスパイ、サングラスの男です。

翌朝、港で敷島博士を待つ正太郎と大塚署長。敷島博士が「朝早くて悪い」と言ってたんで、まだ霧が出ています。
しかし、大塚署長はベラネード財団の警護があるので東京を離れられないそうです。
でも問題は敷島博士が時間どおりに来ないことです。
それで正太郎は関刑事と一緒に出発することになり、大塚署長は敷島博士を「後からヘリで送り届ける」と請け負います。

水柱の上がった水域ではまだ黒煙が立ち上っています。恐るべし、バギューム…
しかもたくさんの魚が死んで浮いているもので遭難した乗組員も全滅したことを思い出す関刑事。
これ以上近づくのは危険だということで、登場した「あれ」がぬこならぬブラックオックスです。ぬこ来た━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!
鉄人の援助用に敷島博士が整備したそうですよ。

海に落とされるブラックオックス。
やがて海底に降り立つと、両目のライトを輝かせて進みます。
その先に沈むのは第三黒龍丸です。
そして、ブラックオックスの目に仕込んだカメラによって、正太郎たちは海の上からオックスが見ているものを見られるという仕組みでした。それも敷島博士が仕込んだんか?
ちなみに鉄人と同じように改良したって敷島博士が言ってましたが、操縦器は不乱拳博士が使っていたまんまです。
そのうちにオックスは第三黒龍丸にたどり着きます。そこに何かを見つける正太郎。
しかし、モニターが黒っぽいもので、わしにはわかりません。
しかも、そのうちに何かがオックスの前を横切りました。
でもオックスの視界しか見られないので、正太郎にはよく状況が呑み込みませんが、ここでカメラが水中のオックスに移り、カニ型ロボットに襲われるオックスを写します。
ですがオックスが投げ飛ばされたことでカニは視界に入り、正太郎も関刑事も驚きの声をあげてしまうのでした。オックスはカニに左腕をもがれてしまいます。
でもオックスを壊そうとはせず、第三黒龍丸に向き直るカニ。
その挟みが急に赤く輝いたのは溶接できる機能を備えているからです。しかし、水中でそれは役に立つのか?
どうやら、カニの操縦者は正太郎たちと同じものが目的のようですが、こちらは致命的に何があるのか知りません。となるとカニの操縦者はビッグファイア博士! … はないなぁ… 巣鴨プリズンを出たばかりで、そんなロボットを作っていたような協力者はいないですからねぇ。不乱拳博士は病院に入れられていた時でもブラックオックスを開発するような協力者がいたんですが、ビッグファイア博士にそういう人物がおらんのは、人徳の差か… ではベラネード財団というかPX団? こっちのがありそうな線です。ベラネードの行動を見ていると鉄人を欲しているのも見え見えですし。金田博士のこともいろいろと知ってそうですし。
そうはさせじとカニに不意打ちを食らわすオックス。装甲は薄いらしく、真っ二つです。
それを見て関刑事、クレーンの準備をさせます。第三黒龍丸の中にあるものを引き上げるのが目的ですからね。
第三黒龍丸に侵入したオックスが見たのは無数の鎖でした。この光景、どこかで… それもそうだ、作ってる人、同じやし…
その時、鎖の向こうに正太郎は信じられない物を見ました。「正太郎」と書かれた巨大な物体です。
しかし、その調査をする間もなく、オックスのカメラがおかしくなってしまいます。
再び映し出されたのはカニでした! 真っ二つにしたつもりが縦じゃなくて横に真っ二つだったもんでまだ動けたらしく、オックスを挟んで自爆にかかってます。ていうか、サターンも最後は自爆だったんで、パターンが同じという辺りでカニもPX団関係ではないかな〜
正太郎は慌てて逃がそうとしますが、オックスはカニもろとも爆破してしまいました。

警察署に戻った正太郎と関刑事。
正太郎は「僕がオックスの操縦になれていれば」と謝りますが、関刑事は「しょうがないさ」で済ませました。いいのか? オックスの優秀さを考えれば、ここでオックスを失うのは痛いんだぞ? しょうがないなんて言うな〜!!! と思いましたが、オックスは後で復活するんだっけ…
そして関刑事、正太郎に第三黒龍丸の中に何があったのか訊ねます。
しかし、正太郎はまたしても見つけた「正太郎」の字に動揺してしまったらしく、何もなかったと誤魔化します。
関刑事は突っ込まず、大塚署長への報告を正太郎に任せて、どこかへ行ってしまいます。自分の部署へ帰ったかな?
大塚署長の部屋へ帰ろうとした正太郎は、そこで敷島博士に言われたことを思い出しました。やっぱり知ってたのか、敷島〜

ところがドアを開けると、いつも元気な高見沢さんが暗い顔。
しかも大塚署長の席には見慣れない人物が座っていたではありませんか!
正太郎が高見沢さんに事情を訊こうとすると、その人物(後ろ姿なんで髪の先しか見えない)が「署長ならここにいる」と言います。
そこでようやくこちらを向いたのはクロロホルムと名乗る人物でした。外国人が警察の署長ってありなんか!
正太郎が大塚署長の行方を尋ねますと、聞き覚えのある声が「もちろん、お払い箱に決まってるだろう」と言いました。そのピンクの帽子、ピンクのコートは、第8話以来、すっかりご無沙汰していた村雨健次のものではありませんか!
正太郎は「どうしてお前が!」と言いますが、村雨はもうギャングではないんだそうです。今は事件記者をやってるんだと言いますが、それってつまり、フリーのジャーナリストってことか、今風に言うと?
「そんなことはどうでもいい!」で返す正太郎。あくまで大塚署長の行方にこだわります。
すると村雨、大塚署長が更迭されたと言うのです。
それは銀座辺り(たぶん)で大塚署長がたぶんベラネードの警護についていた時、突然、ギャロップ(と「ジャイアントロボ The Animation〜地球が静止する日」では呼ばれていた。本名は知りません)に襲われて被害を出してしまったからのようですが、あんまり詳しくは語られません。
冷たい眼差しで正太郎を見るクロロホルム。
心配そうだけど何も言えない立場の高見沢さん。
相変わらず皮肉そうな村雨健次。

「嵐のような出来事が正太郎と鉄人を包み始める」という言葉とともに、敷島博士が実はあの朝(正太郎がブラックオックスで第三黒龍丸を調べに行った朝)以来、行方不明だったことがさらっと語られ、轢死体という自殺で発見されたと言うのです。

ありえね〜!!! けど、次回に続く。

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第16回 京都燃ゆ

「京都編」決着です。

まずは前回の粗筋が語られてタイトル。

京都の町を走る敷島博士。まだ京都中が停電していますが、行く先に鉄人がいるところを見ると事件現場に急いでいるようです。綾子さんとはいつ別れたのだ?

先に京都府警が現場に着いていて、正太郎と現場検証中。しかし、正太郎は壊れたロビーを前に「人工知能を持っているようには見えない」と言います。

そこに到着する敷島博士。
寺町刑事以下、京都府警の人たちは厳しい目を敷島博士に向けます。まぁ、さっき殺された大原か助川が「犯人は敷島」って言っちゃいましたからね。

敷島博士は小さいロボットがロビーと名乗ったことを正太郎に確認します。
頷く正太郎。

そこで寺町刑事に重要参考人として同行を求められる敷島博士。殺されたのは大原だったようです。

その翌日、大塚署長は平田屋の女将さんに博士を逮捕したことを思い切り咎められていました。京都府警には権限が働かないと言っても聞いてもらえず、とうとう平田屋を追い出されてしまいます。そんなに気に入られているのか、敷島博士…
荷物まで放り出されて、大塚署長は「何が何でも真犯人を見つけにゃあ」と言って、どこかへ。大塚署長も敷島博士が殺人、それも昔の仲間を殺すようなことをするはずがないと思っているんですが、何しろ大原が言っちゃったしなぁ…

一方、生き残った助川、各種の新聞を集めて、何か一人で納得顔。犯人の目星でもついたんかい? そこでにやりと笑って「確かに犯人は敷島だ」と言います。敷島博士じゃないと敷島というと…

同じ頃、京都府警は綾子さんの勤めるお寺に大挙して調べに入りました。本堂は真ん中に仏像があるだけで、あとはわりとがらんとしています。墓もなくて地蔵ばっかりだし、どうやって経営が成り立っているのだ、ここ…
寺町刑事は「人工知能のカケラも見逃すな!」と檄を飛ばして、屋根裏から軒下まで調べさせてますが、何も見つかりません。

一方、寺が調べられているのになぜか拘束されていない綾子さんは地蔵に線香を添える黒服の男と一緒です。
騒がしいことを綾子さんが謝ると「無駄なことを」と笑う男。
男は警察が人工知能を見つけられないと言いのけ、綾子さんに「準備ができたか」と訊きます。VL2号というのがロビーのコードネームなんかなんでしょうか?
男は「子どもは大きくなるものだが、そのたびに事件を起こされたては迷惑だ」と、ロビーが殺人事件を起こしていることを皮肉ったような物言い。
これに綾子さんが答えるのは「最終実験のお約束は果たします」ということなんですが、それが「京都なんか燃えてしまえばいい」につながるのでしょうか?
すると男は「京の町を燃やすのもお好きに」と言い、綾子さん「もちろんです」と答えます。
どうやら、あの子=坊やとは、このために綾子さんが黒服の男の国に協力してもらって育てたもののようで、綾子さんの昔語りです。

空襲を奇跡的に生き延びた綾子さんは、そのまま東京を離れました。
それは敷島博士も失ったと思った綾子さんにとって、たったひとつの希望だったのです。京都に帰ること、京都の町が自分を待っていてくれるという、それだけのことが。
歩き、トラックに乗り合い、満員電車にも乗り、他人の畑から芋を盗み、何でもして、ようやく京都に着いた綾子さん。
けれど、突然、おなかを抱えて倒れてしまった彼女は、「その時、自分のするべきことがわかった」と言います。途中で吐くようなシーンもあるんで、過酷な旅が彼女におなかの子を流産させたのではと考えるのも難しいことではないでしょう。
それは京都の町を燃やそうということでした。「この町こそ、許されざるもの、罪深きもの、憎んでも憎みきれない町、だから何もかも燃やしてしまおう」とは、なぜ綾子さんにそこまで京都を憎ませたのか、そのことが失った子どもとどう関係があったのか。

警察の去った寺に電話が鳴り響きます。
電話は助川からでしたが、脅して研究資金をせびりとろうというわけです。

一方、正太郎は高見沢さんと敷島博士に面会。そこに大荷物でやってきた高見沢さんは食事の差し入れです。鮒の煮こごりに炊き込みご飯、とどめが湯豆腐とは… みんな敷島博士の好物なんでしょうか?
ただ、湯豆腐は無理だという敷島博士に、正太郎は「だから無理だと言ったじゃないですか」って言ってますが、女将さんも湯豆腐持ってきてるんで(それも七輪持参で!)よほど敷島博士が好きなのか…
しかし敷島博士は「疑われてもいいんだよ」と言います。「これは当然の報いなんだ」と言う博士には綾子さんのことが頭にあったでしょう。
もちろん博士が犯人のはずはありません。敷島博士は「自分はもっと思い罪を犯したのかも」と言ってます。たぶん綾子さんのことでしょう。これが次の話までつながっちゃうんだから、よほど思い入れが強かったんでしょうなぁ… 未練たらたらちゅうか…
と思ったら、ロビーのことだそうです。
鉄人を開発して敵国に飛ばしても、鉄人には操縦者が必要です。
そこで考え出されたのが人工知能でした。だから、不乱拳博士の弟子たちは軍の監視下にあったわけです。
敷島博士が金田博士とともに南方に向かったのは、人工知能を開発する不乱拳博士の弟子たちとの橋渡しの意味もあったんだそうです。へぇ… 相変わらず万能っぷりですなぁ。
ところが人工知能の研究を続けるうちに、不乱拳博士の弟子たちは人工知能に「とんでもないもの」を発見したと言います。それは人格でした。本来ならば感情を持たないロボットが感情を持ったと?
それを知った不乱拳博士の弟子たちは、ロビーという名をつけて、人工知能を我が子のように可愛がり始めます。
しかし、ロビーの開発はもともとは鉄人の頭脳ですんで、戦争と結びついています。軍が未完成のロビーを南方へ運ぼうとした夜(たぶん、鉄人に出撃命令が出るのより、少し前か同じ頃でしょう)、軍の監視員が殺されたのです。
不乱拳博士の弟子たちは口裏を合わせ、事件については知らぬ存ぜぬを押し通しました。今に至るも犯人が捕まっていないので押し通せたようです。もっとも犯人をばらそうにも、彼らは誰が犯人か知りませんでした。
ところが、その翌日、ロビーの基盤と回路図が盗まれました。その犯人もわかっていません。
そして、敷島博士が案ずるのは、ロビーのことも綾子さんのことも忘れて戦後を過ごしてきたということです。人工知能とはいえ、10歳の子どもです。それはちょうど正太郎と同じ歳で、どんな風に育ったろうと敷島博士は言います。その飼育の一端に自分も責任があったのに、戦後の忙しさで綾子さんのこともろとも忘れてしまっていた、そのことに敷島博士は責任を感じているのでした。

警察を出た正太郎と高見沢さん。あれだけの荷物を持っていないところを見ると、七輪ごと置いてきた模様。
高見沢さんは「難しいことばかりね」とため息顔ですが、急に綾子さんが敷島博士の面会に来ないことを咎めます。というか、単に知らないだけでは?
そこで綾子さんを連れてこようという高見沢さんは正太郎を無理に引っ張っていってしまいました。
そこにやってきた平田屋の女将さん。こちらは七輪と湯豆腐の鍋しか持ってきてません。
大塚署長は「無理だ」と言いますが、とうとう敷島博士が重い腰を上げました。「誰も知らない真実を話す」と言い出したのです。話せ! さあ、話せ! あんたが話せば、この話はもっと速いんだ!!!
ところが正太郎たちを呼んでほしいと敷島博士が言いますと、女将さんが「うちの子が綾子さんのところへ」と言ったもので博士がく然。てことは、綾子さんが真犯人だと知ってたのか! まぁ、大原が「犯人は敷島」って言ったのを逆手にとれば、自分でなければ綾子さんだって気づきますかね〜

その頃、正太郎と高見沢さんは綾子さんの寺を目指していました。正太郎は高見沢さんを止めようとしますが、高見沢さんも頑固に聞き入れません。というか、高見沢さんは綾子さんを敷島博士の面会に連れてこようとしていますが、自称、記憶喪失の綾子さんには敷島博士はやけになれなれしい口調で話すおっさんなのでわ?いや、まぁ、いいんですけど…
その時、助川も綾子さんちを訪ねるところでした。でも正太郎たちには気づいていません。
後をつけて、こっそり寺に近づく2人。
ところが、助川は悲鳴をあげて出てきました。綾子さんを脅そうとしたのに返り討ちにあっちゃったみたいです。

正太郎たちを追ってパトカーが出動します。
その背後の町がまた停電してしまいます。
敷島博士が言うには人工知能を動かすには巨大な電力を必要とするそうです。ってことは、敷島博士は最初から犯人が誰か知ってたんかい!

博士の話をバックに別人のような形相の綾子さんと対峙する正太郎たち。
そこに雷が落ち、正太郎と高見沢さんは寺の中に追い込まれてしまいます。
次々に閉まる扉。正太郎は急いで扉を開けようとしますが、雷が落ちて、追い払われてしまいました。
それを止めようとする綾子さん。
どうやら、助川を殺したのもロビーの独断?
しかし、「ロビー」と言ったことで高見沢さんは綾子さんが記憶を失っていないことに気づきます。たぶん、戦争中に研究していることを少しは話したのでしょう。
「ごめんなさいね」と謝る綾子さん。高見沢さん母子には世話になっていることもあり、綾子さんも騙していることには気が咎めたのでしょう。それもあって、戦後、会わなかったのだろうしな…

そして、綾子さんは正太郎と高見沢さんをロープで柱に縛りつけます。綾子さん、京都を燃やすという目的に邁進中ですネ。
さらに綾子さんは言います。一連の不乱拳博士の弟子殺害は、ロビーが自分の意志でやったと言うのです。ところが綾子さんには、どうしてロビーが殺人を犯すのか、何度回路を見てもわからなかったと言います。
そこで綾子さんはまた坊やに呼びかけます。殺人の概念を今度こそ、「あなたのお父さん」に直してもらうと言うのです。お父さんって誰?! まさか!
そして2人が逃げないように見張っていて、と頼む綾子さんにロビーは「嘘だ!」と言い出します。
綾子さんが「あの男」と逃げると言うロビー。「僕が悪いことをしたから置いていくの? 捨てていくの?」と言って、もはや綾子さんの手にも負えない事態になっているっぽいですよ、これ?
「行かないで。僕を置いていかないで」と言って、綾子さんも寺に閉じ込めようとするロビー。第一次反抗期ってやつか? 10歳だし?
ロビーは雷で綾子さんを止めようとしますが、とうとう綾子さんも強硬手段に出ます。いきなりブレーカーを落としちゃったのです。大量の電気を必要とする人工知能に、これは決定的でした。
しかし、一連のやりとりを見ていた正太郎と高見沢さんには事情が呑み込めません。
でも、綾子さんは出ていってしまいました。

人工知能のブレーカーを落としたことで、京都の町に灯りが戻ります。
敷島博士の説明で、人工知能が停電の原因だったことを知る大塚署長。
それで現場に異常な電圧がかかって火事になったと説明する敷島博士に、大塚署長は戦時中は空襲警報だとサイレンを鳴らせば、皆、灯りを消すので、京都中の電気を利用してたのかと合点が行った様子です。
その時、敷島博士は綾子さんを見つけました。ていうか、綾子さんも敷島博士を捜してね? 彼女が言った「お父さん」って敷島博士以外ないだろう?
パトカーを止めさせた敷島博士は事情も話さずに降りてしまい、正太郎たちのことは大塚署長に任せると言って綾子さんを追いかけていきますが、大塚署長は綾子さんに気づいてない?

その頃、高見沢さんは緊張感なく笑い声。というのも、正太郎がロープを食いちぎろうと噛みついていたもので、ロープがぐりぐり動いたのがまずかったようです。
そこにパトカーのサイレンが聞こえてきて、助けが来たことを知る2人。
真っ先に入ってきたのは大塚署長と寺町刑事です。
ロープをほどこうとする大塚署長に「それより急いで博士を!」と言う正太郎ですが、敷島博士が釈放されたことは知らんのでした。
大塚署長は「わかっておる」と言って、綾子さんに逮捕状を出したと言います。それはそれで驚きの正太郎と高見沢さんですが、ここまで来たら、もうね…
しかし、なかなかロープがほどけません。業を煮やした大塚署長は灯りをつけるよう命じ、寺町刑事がブレーカーをあげてしまいます。
正太郎は「駄目だ」と声をあげましたが、間に合いませんでした。
再起動してしまうロビー。
その本体は寺に安置されていた仏像でした。
動き出したロビーから、間一髪逃れる正太郎たち。
仏像の外装がはげて、中からロボットが現われます。
大塚署長はこれに対抗すべく正太郎に鉄人の操縦器を渡し、ここに久々のロボット大戦開幕です。

綾子さんを追っていた敷島博士は鉄人が発射したことを知ります。

相対峙するロビーと鉄人。

敷島博士はロビーが相手では鉄人は勝てないと言います。
しかし彼はその時、先日、小さいロビーが自爆した五重の塔で、この戦いを見つめる綾子さんに気づきました。

敷島博士の言ったとおり、鉄人の攻撃はロビーに通用しません。

その間に綾子さんのもとにたどり着く敷島博士。
敷島博士はロビーを止めるよう言いますが、綾子さんに銃を向けられます。
自分の記憶のことを気づいていたのだろうと言う綾子さん。その声は、今までになく低く、冷たいものでした。
敷島博士は「最初からね」と答えます。むむむ… 狐と狸の化かし合いだな、これは。
すると綾子さんは「このまま見ていましょうよ、京の町が燃えてしまうのを」と言います。

ロビーに一方的に攻められる鉄人。
大塚署長は正太郎に何とかしろと言いますが、相手の方が速いことを正太郎は訴えます。

頷く敷島博士。今川節全開。
つまり、ロビーは人工知能で動いていますが、鉄人は正太郎が操縦します。そのタイムラグはロボット同士の実力にそれほどの差がない場合は大きなハンデとなってしまうのです。
とうとう鉄人は腕をもがれてしまいました。これで何度目だ腕!
ロビーの回路を盗んだことを認める綾子さん。
「私たちの子どもが戦争の道具に使われるなんて我慢できない」と言いますが、それが前提の研究ですよね? それともロビーという人格が生まれたことで愛情が募り、割り切れなくなった? まぁ、実際のところ、わしも割り切れるかというと難しいとは思いますが…
「なぜ京都を?」と言う敷島博士に綾子さんは逆に「あなたは何とも思わないの」と切り返します。何も変わらない町、京都、戦争の傷跡を受けなかった町、自分たちも、日本も、東京も、敗戦が全てを変えたというのにただひとつだけ変わらない町、京都に対する憎しみを語る綾子さん。戦争で全てを失った綾子さんにとり、京都の町が変わらなかったことは、まるで「自分の幸せだけを守って満足げ」に思われたのでしょう。それは京都の町が無事だったことに安堵する気持ちよりずっと強いものだったのです。だから、少しでも自分たちの不幸を京都にも味わわせたいと。
「でも」と敷島博士は反撃しようとしますが、綾子さんはロビーが自分たちの子だと言い出します。京都に着いた時に、それまでの無理な旅がたたって、敷島博士との子どもを失ってしまったのでしょう。そんな綾子さんにとり、ロビーは失った子どもの生まれ変わりだったのです。
綾子さんは二度と敷島博士に会おうとはしませんでした。新聞に敷島重工のことや、敷島博士の結婚が華々しく書かれても、敷島博士が戦死したと思って東京を離れた綾子さんは二度と会わないと決めたのか、帰りを待っていなかった自分には会う権利がないと思ったのか…
「なのに、なぜ、あなたは京都に来たの?」と責める綾子さん。
そこで敷島博士はロビーが今度の事件を起こした理由に合点が行きました。それは母親である綾子さんを守るためだったのだと。綾子さんは10年前の殺人事件の犯人だったのです。でも、綾子さん自身はそのことを本当に忘れてしまっていると言う敷島博士。大原が言おうとした「敷島」とは敷島博士ではなく、敷島博士の妻である綾子さんのことだったのです。
それを見ていたロビーは綾子さんを守るため、当時の目撃者と思しき不乱拳博士の弟子たちを殺していたのでした。
驚きのあまり銃を落とした綾子さんは、犯人が敷島博士だと思っていたことを告げます。いや、時間的にそれは難しいのでは…
敷島博士の出兵の時に綾子さんと交わした「あの夜のことは2人だけの秘密」と言ったのは、どうやらこの殺人事件を指していたようですが、敷島博士は違うような気がする…

鉄人をたたきのめしてロビーは母を呼びながら、綾子さんに近づいていきます。
もはや立ち上がることもできなくなった鉄人はロビーの足を取るのが精一杯。でも、そんな鉄人を引きずって綾子さんに近づくロビー。

ことの次第に驚いた綾子さんに敷島博士は「ロビーを止める方法を」と迫ります。
でも、それは敷島博士が持っているそうです。
まさか!と千人針を取り出す敷島博士。
京都の町をほぐすと、現われたのはロビーの回路図でした。
綾子さんは「あの子はわたしたちの子も同然だった。だから持っていてほしかった」と言います。しかし、まさか、戦後10年も敷島博士が大事に持っているとは思わなかったろうなぁ…
敷島博士は、微笑んだ綾子さんに何も言うことができませんでした。
急いで正太郎たちのもとに戻る敷島博士は、ロビーの殺人が、実は10年前の事件を隠しておきたかった自分の責任だと思います。でも、それは10年前、敷島博士が綾子さんを死んだと思って探しもしなかったように、綾子さんも二度と敷島博士の前に現われようとしなかったように、とっくに取り返しのつかないことになっていたのでした。

綾子さんに近づくロビー。それを微笑んで待つ綾子さん。その姿はもう、自分とロビーの罪を自覚して、すべてを呑み込んでロビーともども裁きを待っているかのようでした。

正太郎の操縦器を借りて、猛スピードで回路を直す敷島博士。

その間にも刻々と近づくロビー。

敷島博士が操縦器を動かすと、それはロビーに衝撃を与え、地蔵を次々に爆破させていきました。
ロビーはそんなことにも気づいていないように母を呼びながら、綾子さんの方に倒れていきます。
綾子さんはそんなロビーを両手を広げて出迎えます。まるで、本当の子どもが手の中に飛び込んでくるのを待つかのように微笑みを浮かべて。
とうとうロビーは綾子さんに向かって倒れ、五重の塔をも破壊してしまいました。

全てが終わった後で、綾子さんや黒服の男が拝んできた地蔵の下から、小さな骨壺が出てきました。それが綾子さんが失った敷島博士との子どもだったのでしょう。
そのことを平田屋の女将に話す敷島博士。もう、この人、女将さんには何でも相談してそうな気がする! ほとんど母親代わりじゃないかってぐらい!
綾子さんの時が敗戦後、子どもを失った時に止まったのだろうと言う敷島博士に、女将は「この店もずっとこのままかも」と同意しつつ、顔を上げます。
「見とくれやす」と言った先には、見事な紅梅が咲き始めていました。
今も昔も季節だけは巡っていく。
そう言った女将に敷島博士はやっと笑うことができたのでした。

次から10話続きで正太郎と鉄人の物語にクライマックスが。

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第15回 不乱拳の弟子たち

わしの好きな「京都編」です。梅小路綾子さんのキャラが好きなんじゃよね〜

物語は戦時中の京都からスタート。雰囲気がこの後に来る「最終章」に似た感じです。

竹林の中を走ってくる眼鏡の男性。その背後で光を発する京都の町。
しかし彼が目指す家からは女性の悲鳴が聞こえ、軍服姿の男が殺されています。
それを驚いて見つめる白衣の男たちに、さっきの眼鏡の男性に口をふさがれた女性が一人。

それらの男たちを見つめる機械の目。「僕の… 僕の名前は…」と言葉を発しますが、あまりうまく言えません。

そして、さらにもう一人、殺されます。その死体は警察官に見つけられますが、悲鳴とともに燃え上がる寺院らしい建物。
炎にまかれる無数の仏像。その中に小さい生き物がおり、明らかにさっきと同じ声で「僕の名前は」と言ったところでタイトルです。

「人工知能?」と言って振り返る敷島博士に大塚署長が頷きます。
昨晩の国宝焼失事件、というのはタイトル直前の火事のことでしょう。その犯人が小さなロボットだったと大塚署長は言って、捜査の協力を物知りの敷島博士に頼みに来たようです。まぁ、その手の研究なら、何らかのつながりがあるでしょうからねぇ。
そこで正太郎が「小さなって?」と訊きますと、正太郎くらいの大きさのロボットが、焼失した寺院の屋根にいて、自由に動いていたと言うのです。

ところが敷島博士はこれを笑い飛ばします。人工知能の研究は進んでいるけれど、とても大きいので、そんな小さなロボットでは無理だということらしいです。
そこで正太郎は身元不明の焼死体があって、その人物が操縦していたのかと言います。
大塚署長も敷島博士の知り合いに人工知能に詳しい科学者はいないかと訊きます。
そこで考え込む敷島博士。
しかし、「知らないな」と言ってお茶を濁してしまいます。何か知ってるのが見え見えですよ、博士。
そこに電話がかかり、敷島博士の知り合いの川原崎という人物からでした。どうやら京都の知り合いらしいのですが、しばらく音沙汰がなかったらしく、世間話から入ろうとする敷島博士を「そんな話をしている場合じゃないぞ」と咎めます。
舞台が変わり、その川原崎の自宅らしいのですが、大会社の社長で前途有望な敷島博士と違い、貧しい家に住んでいます。
それで敷島博士が「おまえも人工知能か?」と訊きますと、「それもある。だが新聞を見て気づかなかったのか」と返されてしまいました。
写真、それも小さい方の左端を見ろと言う川原崎。
ところが、電話に夢中になっている川原崎は、侵入者に気づきません。

一方、言われたとおりに写真を見た敷島博士は「ただの野次馬」から、息を呑みます。
「まさか」と呟いた敷島博士に、川原崎は「そうだ。綾子さんだよ」と言います。
そうしてアップになったのは尼僧姿の女性でした。
ところが敷島博士は彼女、綾子さんが死んだものだと思っていたのです。

「驚くのも無理はない」と答える川原崎。
足音は背後の階段を昇っていますが、まったく気がついた様子はありません。
その時、階段に機械じみた手が現われ、さすがの川原崎も不審に思って振り返りました。たぶん、安普請の家なんだよ、きっと…
ところが、次の瞬間には家の外に稲妻が走り、川原崎は電話の向こうで悲鳴をあげました。

そのまま電話は切れてしまい、敷島博士がいくら呼びかけても二度とつながることはありませんでした。

川原崎の家からは火の手があがっており、この事件を解明すべく、正太郎と敷島博士、大塚署長は夜行で京都に赴きます。

寝台列車もない時代なもので、「999」ばりに堅そうな箱席で京都に向かいます。
大塚署長は京都府警から捜査への協力を依頼されたそうです。まぁ、ロボットのことなら敷島博士、というのが鉄則なんでしょう。
正太郎はコートをかぶってお休み。さすがの少年探偵も眠気にはかなわないものと見えます。
それを横目で見ながら、酒を飲むおっさん二人。
そして、一瞬の回想に初登場、敷島博士の妻子です。博士が50代とすると子どもはずいぶん小さいですな。
大塚署長も綾子さんのことは知っていました。でも、やっぱり死んだものと思っていたようです。大塚署長は出征してないはずなんですが…
すると敷島博士は「まだそうと決まったわけじゃ」と言って、古くさい縫い物を取り出します。それは綾子さんの千人針だそうで、そんなものを持っているということは、敷島博士と綾子さんは憎からぬ間柄ということですなw しかし、この千人針、ただの千人針じゃないんだぜ… すげぇ高性能というか、すごい秘密なんだぜ…
ただ、奥さんをもらっても大事にしていたということは、敷島博士の中には今も綾子さんがいるわけなんですな… それで結婚が遅れたのか、ただ、10年前の敗戦時、敷島博士は40歳ぐらいなんで、むしろこの時代にしては超のつく晩婚ではないかと思うのだが…
で、その千人針は綾子さん曰く「京の町に見立てた」んだそうですよ。千人針って、千人が一差しずつなのに、一人で千針でもいいんでしょうかね? 「この世界の片隅に(こうの史代著)」(リンク先はレビュー)という漫画で「寅年だけ年齢の数だけ刺してよかった」というシーンがありまして、主人公のすずは丑年なんだけど、「丑でもいいじゃろう(舞台は広島)」と寅年のために千人針の依頼がわんさか来る妹に代わって針を刺してやるというシーンがあったので、綾子さん一人で刺したら、敷島博士は嬉しいかもしれないけど、そもそも反則じゃないかと思ったり、どうせ一種のまじないなんで、誰が刺そうがどうでもいいかとも思ったり。
大塚署長は「綾子さんらしいなぁ」と言ってますんで、そういう知的な細工が得意な女性だったようです。

ところが、その千人針をかわす敷島博士と綾子さんが写りますと、冒頭の眼鏡の男性が敷島博士、彼が口を塞いでいた、パーマっけのある髪型をした女性が綾子さんだったとわかります。
二人は敷島博士の出征前に結婚したのでした。
でも、敷島博士が金田博士の遺骨を抱いて復員した時、その家は空襲で焼けてしまっており、彼の帰りを待っていてくれるはずの女性もいなかったのです。それは死んだと思っても不思議はないな… 綾子さんには綾子さんの思惑があったんだけどさ…

そして回想シーンは終わりまして、電車の中で一人、物思いにふける敷島博士に、仲良くお休みの正太郎と大塚署長。
ちなみに鉄人も一緒の機関車にひかれて同行です。飛んでったりはしないんですな。

こうして舞台は京都に移ります。未見ですが、今川監督の「七人のナナ」というラブコメも舞台が京都っぽい町らしいですよ。と思ってGyao!ストアで検索したら、見られるって! おお、見たい。

閑話休題。

京都が空襲を受けなかったことなどがさらっと語られますが、「この古都さえ、戦争のもたらした傷痕と無縁ではなかったことを敷島は思い知らされることになる」とナレーション。そうなんですよ、「京都編」の主人公は正太郎ではなくて敷島博士な気がしますな。

京都に着いて、正太郎は感嘆します。「冬の京都こそ、本物の京都」とか言っちゃって… おませですな。大塚署長にもからかわれて、「ちょっと調べてきた」と言い訳。
でも、高見沢さんも一緒に来なかったのを「怒るだろうなぁ」と案じる正太郎。彼女はちょうど休暇中で、置いていかれてしまったのでした。
すると大塚署長も敷島博士も笑い飛ばしました。
3人がお世話になる平田屋という料理屋は、実は高見沢さんの実家だったからです! そのわりには全然京なまりがないようなんですが…
平田屋はいかにも京都らしい老舗で、築400年の民家を使い続けているそうです。それも調べてきたのか、正太郎。そんな民家を「きれいだなぁ」って、渋い趣味やなぁ…
すると、「またおこしやす」と言ってお客を見送った和服姿の女性は、何と! 高見沢さんだったのです! まぁ、実家だから当然なんだけど。驚く正太郎。
それで敷島博士から、元々は平田屋の女将(CVはナレーションの鈴木弘子さん)に世話になった縁で、娘の高見沢さん(そう言えば、フルネームは不明のままですな。モデルは原作の大塚署長の奥さんだそうだけど)を大塚署長の秘書に世話したのだそうです。
で、ちょうど休暇で帰省していたところ、事件で京都に来ることになった敷島博士らに「来たら」と誘ったわけだったのです。
まだ驚きを隠せない正太郎に、「あたしの着物姿に見とれちゃったとか?」と言って、ずっこけちゃう高見沢さんに、敷島博士も大塚署長もため息です。どっちも娘みたいなものなんでしょうな。
そこに平田屋の女将が登場、敷島博士たちの早い到着に驚いています。大作といい、正太郎といい、フォーグラー兄妹といい、母親の影はわりと薄めな今川作品ですが、「真マジンガー 衝撃Z編」でくろがねやの女将が大活躍だったように、女将というポジションは好きなのか、今川監督?
博士が「ご無沙汰しています」と言えば、「そんな堅苦しいこと言わなくても」と言っちゃう女将、けっこう気さくな性格なんでしょうか。
大塚署長の髭に「偉くなって」とか言ってるし。けっこう若い頃から知られてそうです。
そして正太郎は敷島博士の息子、鉄男と勘違いされます。敷島博士はすぐに訂正しますが、まぁ、有名人なんで「誰それ?」にはならないと思いますが。
しかし、女将さん、鉄人を「仏像」呼ばわり。京都の人にはあれが仏像に見えるのか…

店の名物の「しんこ」というものをご馳走になった正太郎たちは、京都府警に挨拶がてら京都の町を見学してから、川原崎の葬式へ行くことになります。というか、大塚署長はともかく、正太郎まで葬式に行かなくても良さそうなものですが…
高見沢さんは「町を案内してあげる」と言いますが、女将さんに「あんたは店の手伝いや」と言われてしまいました。
出かける3人を見送った高見沢母子でしたが、敷島博士のことが心配そうです。

3人は現場検証。しかし、川原崎の家は丸焼けで証拠も何も残っていません。
敷島博士が「「ここだけ異常に電圧のかかった焼け方だ」と言って見上げているのは電線から電気を引き込むところでしょうか?
しかも電話の最中は京都中が停電していたそうです。川原崎の家に全ての電流が一気に流れ込んだようだ、と思う敷島博士。
その時、敷島博士は現場に手向けられた花束と線香に気づきます。
すると検証中の刑事曰く「朝方通りかかった尼さんがあげてくれた」ものだそうです。
そう言えば、綾子さんと思しき女性も尼さんの格好をしていました。

そして川原崎の葬式。正太郎も参列しています。

お焼香が終わって、正太郎に外で待つように言う敷島博士。何か用でもあるのか?
正太郎は京都が寺や神社ばかりであることに感心しています。「まるで時間が止まっているみたいだ」と言う正太郎に、話しかけてきた女性がありました。
新聞の写真を出したところを見ると綾子さんと思しき女性かと思いきや、それは敷島博士の方の用事でした。
二人の男と会った敷島博士は新聞の写真を見せて確認してもらっています。二人も「確かに似ている」と同意します。10年も経っていますが、美人は忘れないものですな!
しかし、綾子さんの生存が川原崎の死にかかわっているかどうかはまだ不明です。
ところが二人から高嶺という人物まで行方不明なことを知らされる敷島博士。仲間内の行方不明などの異常事態は川原崎も入れて3人目だそうです。仲間の一人、春日という人物も停電の晩に事故死したんだそうですよ。
敷島博士の脳裏に戦争中のことが蘇ります。

ここで話が冒頭の事件につながりまして、若き(と言っても10年前なんで40代)日の敷島博士は殺された軍服姿の男を見て「いったい誰が」と呟いています。

その時、正太郎が呼びかけました。彼は川原崎家の焼け跡に添えられたのと似たような白い花束と線香を持っていました。
いつの間にか二人の仲間はいなくなっています。
正太郎は、それをとてもきれいな尼さんに頼まれたと言います。
驚く敷島博士。
頷いた正太郎は振り返り、下を歩いていく女性だと言います。
それは新聞に載っていた尼でした。急いで追いかける敷島博士。
振り返った尼さんは「敷島くん?」と口走ります。
やはり彼女は綾子さんだったのです。

綾子さんと再会した敷島博士は、平田屋に行きます。
どうやら平田家の女将と高見沢さんは綾子さんと知り合いらしく(年齢を考えたら、高見沢さんは戦中生まれなんで、綾子さんと面識があっても不思議はないわけです)、「綾ちゃんだぁ」と言って喜んでいますが、女将さんには「その呼び方やめい」とたしなめられています。
正太郎は綾子さんの素性を訊ねます。昭和20年生まれの正太郎は戦争中の敷島博士を知らないのでした。
綾子さんは敷島博士の昔の奥さんだそうです。正太郎はショックを受けますが、今の奥さんがそんなに好きなんでしょうか? 影も形もありませんが…
それで女将さんが説明してくれるには、出征が決まった敷島博士(この時代は博士じゃないんですが)でしたが、「家系を絶やさない」というのが第一の風潮だった時代です。どう見てもとっくに行き遅れな感じですけど、婚礼だけでもということで奥さんをもらいました。それが綾子さんだったというわけです。でもさ、京都の町を模したという千人針を送ってくれるんだから、それなりにらぶらぶだったんじゃないですかね。

ところが綾子さんは何も覚えていないのだそうです。

でも好きだったレコードを一緒に聞きながら、思い出を話す敷島博士。
敷島博士は東京在住で京都には通っていたらしく、東京から来るたびに女将さんにこの座敷を使わせてもらっていたそうです。
綾子さんは「この店のことはうっすらと」と言いますが「敷島くん?」って言ったのは何でだったのだ?

男と女がおおっぴらにつき合うことを許されなかった時代でしたが、敷島博士と綾子さんは何回もデートしました。でも知的な女性だった綾子さんには、そういう考え方はナンセンスだったので、外でも堂々と腕を組んで歩いたそうです。知的な上に強気だよ、この人!
でも一度だけ憲兵に見つかって、誤魔化すために学術書を片手に論破し合ってる振りまでした上、憲兵にまで議論をふっかけるとは、やりますなぁ…
敷島博士も青春してますよ! どう考えても40代なんですが… 勉強が長すぎて遅すぎた春か?

京都の町を何度も散策した2人。綾子さんは「永遠に変わらない町が何よりも好きだ」と言っていました。「絶対に京都を離れたくない」と。
それなのに綾子さんは出兵寸前の敷島博士に嫁ぎます。それは敷島博士にとって、驚きであり、喜びでもあったでしょう。
そして贈られた千人針。敷島博士は戦争を生き延びられたのはこれのおかげだと力説しますが、綾子さんはやっぱり何も思い出せないようです。
「ゆっくりでいいんです」と答える敷島博士。しかし、奥さんと子どもはどうするのだ?

敷島博士と綾子さんのことを知って感激する高見沢さん。
そこに正太郎が「博士には奥さんも鉄男くんもいるんですよ」と突っ込みます。当然ですな。

今度は多数の地蔵が立ち並ぶところを散歩する2人。
敷島博士は戦後、綾子さんを探さなかったことを謝罪します。すっかり焼け果てた東京に彼女が生きていたとは思えなかったのです。
でも綾子さんは京都に帰っていました。そのことに思い至らなかったことを詫びる敷島博士。
お地蔵さんのある寺は、綾子さんが預かっているのだそうです。その人物には京都に戻った時に世話になって、その縁で寺を預かることになったとか。
で、核心を訊く敷島博士。
すると綾子さんは「子どもと2人で」と答えます。それが誰の子かは訊かない敷島博士。まぁ、10年も会ってなかったんですからねぇ〜 しかも自分も妻子のある身です。でも未練たらたらな感じです。

そして博士と別れて、綾子さんは家に帰ります。
「遅くなってごめんね」と言ってるあたり、うちでは子どもが帰りを待っていたようですが、その姿は映されません。

平田屋に戻る敷島博士にかぶる綾子さんの話ですが、やがて彼女が仏像と向き合っていることがわかります。子どもはどこ?
「お母さん、わからない」と打ち明ける綾子さん。記憶を失っているという話は、どうなっているのでしょうか?

そして鳴り響く電話。
応答する子どもの声は、冒頭で聞こえた「僕の名前は」と言っていた声に似通っていますが、たどたどしさはなく、伝言を母親に伝えることを請け負います。この場合は、綾子さんなんだろうな…

そして京都府警。
大塚署長は敷島博士が何かを隠しているようだと心配しています。今に始まったことじゃないから! 敷島博士はしょっちゅう何か隠していて、大事なことを言わないから!
それで大塚署長は過去の事件を遡って調べてもらいました。幸い、空襲を受けていない京都府警には戦前の事件の記録もそっくり残っています。
そうしたら、敷島博士がかかわった事件がかつてあったというのです。
大塚署長は敷島博士が戦前、京都にいたことは知っていましたが、軍事機密とやらで何のためかは教えてもらえなかったそうです。
でも記録を調べたら出てきました。「人工知能開発計画」、冒頭で敷島博士が大塚署長に訊かれたことです。
敷島博士は「無理だ」とは言いましたが、それは小さなロボットには搭載できず、広い部屋がいるからって言ってなかったかな?
でも正太郎と大塚署長は「できない」と受け止めたらしく、それを可能にしたのが不乱拳博士の弟子たちだったのです。
集合写真を見ると、若き日の綾子さんっぽい女性のほかに、敷島博士が川原崎の葬式で会ったメンツが何人もいますよ。
そこで正太郎も思い出します。敷島博士は一時期、不乱拳博士に傾倒していたことがあったのです。金田博士と南方に行かされる前のことだったようです。
不乱拳博士は怪物さんを作る前に人工知能の研究をしていました。
ところが不乱拳博士は人工知能の研究から離れてしまいます。それが冒頭で起こった殺人事件です。
不乱拳博士の弟子たちは博士が鉄人第弐計画のために京都を離れてからも人工知能の研究を続けていました。人工知能にはロビーという名前がつけられ、第一段階が成功した直後に事件は起きました。
その時、敷島博士は不乱拳博士の使いで京都を訪れて、事件に遭ったのですが、冒頭のシーンから鑑みるに、彼が弟子たちの研究室を訪れた時にはもう事件は起こった後だったようです。
殺されたのは軍の監視官で、容疑者は不乱拳博士の弟子たちだったのですが、事件は迷宮入りした模様。
完成した基盤と回路図も行方不明になってしまったといいます。
さらに大塚署長は事件の時、京都中が停電だったことを付け加えます。戦時中のことですんで、空襲とかもあったし、みんな、いつものことと気にしなかったのですが、10年以上も経って、似たような状況で事件が起きていることを指摘する正太郎に大塚署長は頷きます。
そして、焼死体の身元も判明しました。って、どの事件やと思ったら、国宝焼失事件の時の話でした。その被害者も不乱拳博士の弟子の一人だったと言うのです。
すると京都府警に敷島博士を初めとする不乱拳博士の弟子たちが呼び集められていました。大塚署長は関与していない模様ですが、敷島博士は大塚署長に呼ばれたものだと思ってます。
すると京都府警の人、エンディングで寺町刑事と判明、が自分が呼んだと言います。これまでの犠牲者が不乱拳博士の弟子なので、1ヶ所に集めておけば守りやすいと踏んだのでしょう。
ところが弟子の一人が「警察は自分たちを疑っている。10年前のあの事件だってね」と言い出したもので、敷島博士のお気に召さなかった模様。「あれを調べたのか、大塚」とえらいご立腹です。いや、だから、そう何でも隠したがるあなたの性格に問題があるのだと…
大塚署長は慌てますが、寺町刑事は慌てず騒がず、「重要参考人」と言い出します。
そこに綾子さんが登場、どうやら電話の主は警察だったようです。
敷島博士が驚いたのはもちろんですが残る2人も綾子さんが死んでいたと思っていたらしく、生きていたことに驚いています。
ところが、これで怒り狂っちゃった敷島博士、綾子さんの手をとって、帰っちゃいます。「重要参考人」が勝手に帰っていいのだろうか…

正太郎は「あんなに怒ったところは初めて」と言っているように敷島博士といったら、基本、いつも温厚で声を荒げることもないのですが(言ってることはマッドだったりしますが)、やはり10年前に生き別れた妻がからむと感情的になっちゃうんですかね。まぁ、この後も爆弾発言してますもんね。
でも大塚署長は事件の鍵を握っているのが不乱拳博士の弟子たちだと言うのでした。

手に手を取って逃避行の敷島博士は夜の京都を綾子さんとデートです。ちゃっかりしてはる…
その時、京都中が光ります。
五重の塔から2人はそれを見下ろしていましたが、綾子さん「あの時の夜みたい」と口走ります。ていうか、露骨に怪しいんですけど、それ…
「まるで空襲の夜みたい」と誤魔化す綾子さんに、敷島博士は何となく安心した様子。
そして、いきなり「東京へ帰ろう」と言い出します。奥さんや子どもはどうするのだ、博士?
敷島博士は「これ以上、京都にいることが耐えられない」と言いますが、そんなに嫌な思い出ありましたっけ? さっき、京都府警に重要参考人呼ばわりされたから? プライドの問題か?
すると綾子さん、まじ声で「私も京都が嫌いです」と言います。驚く敷島博士。
「こんな町、燃えてしまえばいい。何もかも燃えてしまえば」と冷たい表情で口走る綾子さんに、敷島博士は思わず「綾子!」と言いますが、その時、京都の町全体が停電に陥りました。

もちろん、京都府警の建物も停電です。
大塚署長は急いで蝋燭を持ってくるように命じますが、ガラスを破って侵入者がありました。その姿格好は国宝焼失事件の時に現われた小さいロボットによく似ています。

そして、不乱拳博士の弟子は、また一人、殺されてしまいました。早ッ! エンディングの声の出演を見ると、大原か助川らしいんですが… 大原なんか白昼の残月(「ジャイアントロボ The Animation〜地球が静止する日」登場の十傑集の一人)と同じCVですよッ!
殺したのは例の小さな侵入者です。大塚署長、いくら犯人とはいえ、いきなり府警で発砲していいのか…
しかし、大塚署長が追いかけようとすると、まだ息があったそうで… 窓の外に飛び出した犯人を追ったのは正太郎だけとなりました。

不乱拳博士の弟子は「犯人がわかった。敷島」と言い残して息絶えてしまいます。

一方、犯人を追いかける正太郎、鉄人を召喚します。
あっさりと捕まっちゃう小さいロボット。
正太郎は操縦者を捜しますが、「鉄人」と呼んだ言葉に反応して、小さいロボットは「違う。僕は鉄人じゃない」と言い出しました。「僕はロビー。鉄人になれなかったロビー」と言って、自爆してしまうロボット。

その頃、綾子さんはお地蔵さんの間を必死に走っていました。敷島博士とはいつ別れたのだ? というか、あんな不審なことを言っておいて、敷島博士が綾子さんをそう簡単に解放するとは思えないのだが…
綾子さんは「坊や坊や!」と子どものことが心配のようです。
「そんな」と嘆く綾子さんに、サングラスの男が声をかけます。これって… 不乱拳博士の事件の時に現われたグラサン男か? 声は同じ関さんですが… 似たような顔の別人とか… 名前がついているわけじゃなし… 男は「新しい入れ物なら用意できていますよ」と言いました。たぶん、さっき自爆したロボットのことでしょう。
立ち上がる綾子さん。
男は「いい子に育ってくれたじゃないですか」と褒め、「記憶喪失とは良い手を思いつきましたね」と言ってますが、ばればれではないのか、敷島博士には…
男は「梅小路綾子博士」と呼びかけて、「京の町を燃やす準備は整いました」と言います。
表情を引き締める綾子さん。

こうして事件は次回へ続きます。

「京都編」だけエンディングがチェリッシュの「なのにあなたは京都へゆくの」になってます。

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第14回 怪盗ブラックマスク

一話完結の「怪盗ブラックマスク」です。帝銀事件をモデルにした事件があったり、シリアスな面もありますが、怪盗ブラックマスクのキャラとか、ラストもあって、コミカルな印象が強いです。

最初は戦後の復興が語られます。久しぶりです、こういう展開。でも輝かしい復興の影で起きる不気味な事件。そのひとつに日國銀行事件があげられます(帝銀事件がモデルです)。

残務整理に追われる豊島区の日國銀行・椎名支店にやってきた保健所の職員を名乗る人物は、赤痢の予防薬と称して行員たちに劇薬を呑ませ、現金や有価証券などを奪って、煙のように姿を消したのです。それは鉄人が初めて日本に来た年の年末のことでした。

ここでタイトル。

どこかの美術館が舞台です。そこには数多の宝石で飾られた宝冠がガラスケースに収められ、展示されていました。
それを盗みに来た者がいます。
しかし、ガラスケースを破るとたちまち警報が鳴り響きました。
逃げ出す犯人。
追いかける大塚署長。
この犯人は最近、世間を騒がせている怪盗ブラックマスクでした。
ところが完全に包囲されたはずのブラックマスクは大塚署長の目前でまんまと逃げ失せてしまいました。居合わせた警官もただ驚くばかりです。

その翌日、大塚署長の執務室に遊びに来たらしい正太郎。高見沢さんにお茶を入れてもらい、「高見沢さんの入れてくれたお茶がいちばん美味しい」とかお世辞を言ってますが、どうやら、目の前で怪盗ブラックマスクを取り逃がしてむっつり顔の大塚署長を笑わせるための策か?

高見沢さんが「署長、暗いですよ。犯人に逃げられたの初めてじゃないんですから」って言ってるの、問題発言では? 大塚署長は有能なのか? 無能なのか?
でも、それで怒っちゃった署長は机をたたき、せっかくのお茶がこぼれてしまいます。
そこで正太郎、怪盗ブラックマスクについて訊ねます。
大塚署長曰く怪盗ブラックマスクとは「予告状を送りつけて堂々と盗んでいく」んだそうです。まぁ、包囲されても逃げられるからな。
すると高見沢さんが「姿を現したなら、簡単に捕まえられるだろう」と言うと、目前で取り逃がしたもので大塚署長。否定します。そう、それができれば苦労はないわけで…
大塚署長も「消えるんだ」と言います。確かに… あれは、それ以外に説明のしようがない…
しかもブラックマスクは大胆にも再会を予告していきます。
それでも高見沢さんも正太郎も否定しますが、大塚署長も同意。「この目で見るまでは」です。
とにかく警官になって初めて、こんな不可解な事件に出くわしたと言う大塚署長。おや、そうすると20歳で警官になったとして、それから30年だから… 50歳ぐらいか、署長は! そうすると敷島博士も同じくらいと考えた方が良さそうなんで、金田博士の年齢がぐっと上がりますなぁ… 個人的には60歳くらいか、金田博士? あ、亡くなったのが10年前だから、50歳ぐらいでいいのか… じゃあ、正太郎は歳を取ってからの子どもなので、それは失ったら慟哭もんだろう…
すると高見沢さん、今度は「こっちには少年探偵、金田正太郎がついている」と慰めてるんだか、本職の警官がいくら優れた少年とはいえ、正太郎にそんなに頼り切りなんかと思ってますと大塚署長は「いつも正太郎くんに頼ってるから、この事件は自分で解決する!」と認めちゃってますよ、高見沢さんの言うことを… いいのか、警官?!
ところが正太郎も憎いことを言う奴で、「大塚署長の手腕を学びたいから見学させてくれ」と来たものです! こいつ、天性のたらしや! 親父ほいほいや!
もちろん正太郎を可愛がる大塚署長がこれを断るはずがありません。恐るべし、少年探偵…
元気になった大塚署長は現場検証に行こうと言いますが、高見沢さんと正太郎の内緒話は聞いてない様子。「いざとなったら助けてあげてね」(高見沢さん)「わかってますよ」(正太郎)。ひいぃぃぃぃ (((((((( ;゚Д゚)))))))ガクガクブルブルガタガタブルガタガクガクガクガクガク

正太郎と大塚署長がやってきたのは日國銀行の現場です。ありゃ、これもブラックマスクの仕業かいな。泥棒やってるならまだしも人を殺してはいかんだろう。しかもだまし討ちなんて屑のやることだ。
大塚署長は一生懸命調べましたが、結局、何も見つけられませんでした。

次は美術館です。雪が降っており、季節は真冬です。
大塚署長は怪盗ブラックマスクを塀際まで追い詰めたけれど、すんでのところで逃げられたと正太郎に話します。調べたけれど種も仕掛けもありません。
その時、2人の後ろから「知りたいかい」という声がして、怪盗ブラックマスクが現れました。大胆不敵な…
大塚署長は銃を向けますが、無駄だと言われてしまいます。
そして、ブラックマスクは正太郎に「お近づきの記念に」と言われて、封筒を渡されました。「君はわたしを捕まえることができるかな。次に会う時を楽しみにしているよ」と言って消えてしまいます。
正太郎が封筒を開けると、そこには「明日の午前0時、銀座銀行の金をいただく」という予告状が入っていました。

翌日、早速、警備が厳重に敷かれ、鉄人まで出動しました。

店長らしい男が心配していますが、大塚署長は自信たっぷりに「警備は万全」と請け負います。でも、目の前で2回も消えてるのに、その自信はどこから来るのだ?

ところが12時の鐘が鳴ってもブラックマスクは現れません。
大塚署長、「奴もこの警備に恐れをなしたか」は、あまりに脳天気な考え方だと思いますが…
もちろん、少年探偵はそれぐらいでブラックマスクが諦めたとは考えません。一度は頷きかけて、金庫を開けさせます。
果たして、中にいたのは怪盗ブラックマスクでした。
「気がついてくれなければ、このまま金だけ持って帰ろうかと思っていたところだ」とは、舐めきった台詞です。
「どうやって金庫の中へ」と驚愕する大塚署長に、「それは教えられない」とブラックマスク。というか、逃げられるんだから、逆もできると、大塚署長が何で考えないのか、そっちのが不思議ですよ、わしは。
「僕が来たからには逃がさないぞ」と自信満々な正太郎に「並みの泥棒と一緒にしてもらっては困る」とこちらも自信たっぷりなブラックマスク。
廊下へ飛び出したところは普通ですが、もちろん正太郎、操縦器を持って追いかけます。
廊下に立っていたのに、薄らぼんやりと見ている警官のが問題です。

飛び出したブラックマスクは出口ではなく、屋上を目指しました。そうと気づいて、不審に思う正太郎。
とうとうブラックマスクは屋上に出ました。
正太郎が自信満々なわけはもちろん鉄人の存在があってのことですが、鉄人にあっさり囚われちゃうブラックマスク。
でも、それは「鉄人でも、わたしを捕まえられない」を印象づけるためのパフォーマンスだったようにも見えます。
「また会おう」と言って消えてしまいました。
さすがの正太郎も2回も消えられてはブラックマスクの秘密を考えざるを得ません。

そして、さすがに何度もブラックマスクを逃がしているというので、マスコミにたかられる大塚署長。しかし、そこら辺の扱いは慣れたもので、「何も発表できることはない」「手がかりがつかめたら発表」と白を切りとおしてしまいます。
大塚署長が這々の体で執務室に戻ると、正太郎に敷島博士まで来ていて、高見沢さんにもねぎらってもらいますが、署長の言うとおり、警察の面目は丸つぶれです。
謝る正太郎にその責任を否定する大塚署長。まぁ、要は大塚署長がブラックマスクを捕まえられれば済むことですもんネ。
しかしさすがの正太郎にもブラックマスクの消え方はお手上げです。
大塚署長は「何かトリックがあるに違いない」と自信たっぷりですが、高見沢さんに「どんな?」と訊かれても答えられるわけがありません。
しかし、こういう時の敷島博士です。「昔、これと同じ現象を聞いたことがある」と言い出します。
それはとある科学者の論文にあった瞬間移動装置というもので、物体や人を別の場所に移動させられるというのです。

その頃、辺鄙な田舎町にブラックマスクの住まいはありました。まぁ、都会だと「急にあの人、羽振りが良くなって、何してるのかしら?」と疑われてしまいますもんね。
ブラックマスクは金銀財宝、宝石を手に入れてご満悦ですが、奴と言って新聞を引き寄せ、大塚署長と並んで写る正太郎を見ます。どうやらブラックマスクの度肝を抜いたのは正太郎ではなく、一度なりとも自分を捕まえた鉄人だったようです。
しかし「相手が誰であろうと僕にかなうはずがない」と自信たっぷりに円筒型の装置を見上げるブラックマスク。どうやら、それが彼の仕掛け、敷島博士の言うところの瞬間移動装置のようです。
「なぁ、父さん」と言っているのが、敷島博士の言った「とある科学者」か?

それと呼応するかのように、正太郎、大塚署長、敷島博士、それに高見沢さんは有本時計店という古ぼけた時計屋の前にいました。
中に入ると時計がたくさん置いてありますが、瞬間移動装置などという稀代の機械が作られた場所には見えません。
しかし敷島博士曰く「有本博士の論文は突飛な内容のために学会でも異端視され、誰も完成品を見ていないのだ」とか。ていうか、店の中でそういう話は失礼だろう、君たち。
しかも大塚署長は三度も目の前でブラックマスクを取り逃がしたくせに、まだ「本当だとは思えん」と、どこまでも石頭です。
ところがその時、店の奥から「できる!」と断言する声がありました。
「わしの研究は絵空事ではない。少なくとも理論上はな」と断言する老いた時計技師こそ、有本博士のようです。しかも、机の上には怪盗ブラックマスクの写真まで置いてあります。
ここで初めて挨拶する敷島博士と大塚署長。礼儀って知ってるか?
すると有本博士はずばり「ブラックマスクのことで来たんだろう」と断言します。
驚く正太郎たち。
しかし「もっと早く来ると思っていた」と言って、4人を屋上に誘う有本博士。
高見沢さんは正太郎に「怖そうなおじいさん」と言ってますが、大塚署長が礼儀知らずなんでわ?
もっとも頷いた正太郎は机の上にある写真に目を止めます。しかし、ブラックマスクは目しか出していなかったので正太郎にはわかりませんが。

有本時計店のあるビルは、両隣をより高いビルに挟まれてとても狭い屋上が日当たりも悪くなっていました。
しかし、その一角に置かれていたのが有本博士の研究、瞬間移動装置の試作品だったのです。
失敗作かと訊ねる正太郎に「理論上は完成している」と答える有本博士。ただ、理論を実証するための金も尽き、スポンサーもなく、有本博士の話に耳を傾ける者はいなくなってしまったとか。うーん… 確かに高見沢さんの言うとおり、偏屈かもしれないけど、敷島博士が「異端視された」と言ったシーンは異端視というより嘲笑されたって感じだったんで、ドラグネット博士みたいに偏屈になっちゃったのかも…
で、ここまできても、まだ信じない大塚署長。「そんな夢のような話」と言って、有本博士に睨まれてしまいます。
敷島博士が「この装置が完成していないとなると、ブラックマスクは別のトリックを」と訊きますと、それを否定する有本博士。
そう、有本博士には協力者がいたのです。一緒になって瞬間移動装置を完成させようとした者が。
そこで正太郎は、さっきの机上の写真の人物こそ、その協力者だと気づきます。ほんとに勘のいい子!

そして始まる過去話。

有本博士と写真の中の若者、つまりブラックマスクは瞬間移動装置の実験を成功させるところまでこぎ着けました。ブラックマスクは有本博士の息子だったのです。
ところが、成功したと思ったのもつかの間、林檎は崩れ落ちてしまい、成功したとはとても言えない状況です。
さらなる実験を重ねる親子。息子の名は影郎と言うのでした。
ところが、ある日、事故が起きてしまいます。瞬間移動装置の終着点を南極にしてしまったのです。それが、どのような結果をもたらしたのか語らないまま、左手に手袋をするようになった有本博士は、実験に終止符を打ち、時計屋になったのでした。
しかし、これに影郎が猛反発します。彼は父親の研究を高く買っていて、研究を止めたことを咎めます。
ですが有本博士は金がなくては研究を続けられないと言い訳をし、影郎はこれにも「装置のすごさを世間に発表してもっと金を得ればいい」と言いますが、博士は同意しません。博士にとって大事なのは自分の研究を続けることで、金儲けではなかったのです。
しかし影郎は「名誉だって金だっていくらでも手に入る」と言いまして、逆に父親に咎められてしまいます。

有本博士は影郎が設計図を持って出ていったと言います。
影郎は一人で瞬間移動装置を完成させ、人間の移動にも成功したのです。
こうして、怪盗ブラックマスクの正体は有本影郎だとわかりました。
ところが影郎の居場所を博士は知らないと言うのです。
それでは捜査は進んだことにはなりませんネ。

これだけ話を聞いても、まだ疑わしそうな大塚署長。どこまで石頭なんだ、おっさん!
しかし、敷島博士はもっと現実的にブラックマスクが消えていることを理由に「そう考えざるを得ない」と言います。ホームズ先生も言うてはった。
ここで高見沢さんが例によってKYな発言。よほど通勤が嫌らしく、ブラックマスクをうらやましがります。まぁ、考え方としては間違ってないか…
ところが、これにヒントを得た正太郎。次こそブラックマスクを捕まえようと意気盛んです。どんな手を思いついたのだ、少年探偵?

一人、有本時計店の奥でたたずむ有本博士。その目は自然と息子の写真に向けられます。
「このうつけ者めが」と呟く有本博士。「おまえも、あの南極テストの失敗は見ていたはずなのに」と言うのは、よほどひどいことになったのか…
「己を過信した愚か者が受けた報いをな」と言うのは、おそらく自分が受けた失敗の代償を言っているのでしょうが…
その時、博士の左手、手袋をしている方の手が痙攣し、写真を落としてしまいます。「おまえは何を失えば、それがわかるのだ」と呟いた有本博士は、何かを南極で失ったようです。

一方、警察に戻った正太郎のもとにブラックマスクの予告状が届きます。しかも今度は鉄人の操縦器を狙うというのです。確かに… スリルサスペンスではありませんが、鉄人を手に入れれば、瞬間移動装置と合わせてブラックマスクは怖い者なしです。

早速、敷島重工の周辺に敷かれる厳重な警備。それが無駄だといつになったら気づくのだ、大塚署長?
「警備は万全だ」と言う大塚署長に、敷島博士はブラックマスクは来ると言います。そんなことは何回も失敗してわかってるはずなんですが… どこにでも現れられるんだから…
「そこで僕の考えた作戦を」と言い出す正太郎に大塚署長は「正太郎くんにそんな危険なことはさせられない」と反対します。
ところが、そこにもうブラックマスクが現れました。
とっとと盗まれる鉄人の操縦器。ブラックマスクもとっとと消えていきます。
それを追おうとした正太郎を止めて、大塚署長がブラックマスクに突っ込み、ブラックマスクと一緒に消えてしまいます。
作戦では正太郎が消える予定でしたが、敷島博士は「彼に任せよう」と正太郎を慰めます。
そして、作戦どおり動き出す鉄人。
こうすることでブラックマスクの家を突き止めようとしたのでした。

一方、目論見どおりにブラックマスクの家に現れた大塚署長。慌てて転がった操縦器を拾います。
銃の撃ち合いになりますが、影郎も自宅ですんで無茶はしません。でも「こんな野蛮な手で来るとは思わなかった」って、どういう手なら野蛮ではないのだ?
そして大塚署長に名前を呼ばれて、父親の裏切りを知る影郎。
そこでたたみかける大塚署長。「父親の研究を悪事に使う親不孝」とまで言っちゃいます。
ところが影郎は「装置を完成させたのは自分だ」と言って、悪びれた様子もありません。父親が手に入れようとしなかった名誉と金を手に入れて、影郎はまだまだ貪欲です。
その時、家の外に鉄人の足音が響きました。
正太郎たちが鉄人を追ってきたのです。
さらに操縦器の誘導電波が鉄人にここまで追わせ、ブラックマスクの自宅を突き止めたのです。
到着するパトカー。
とうとう影郎は自らの敗北を認めました。ですが、影郎はまたしても瞬間移動装置に入って逃げ出そうとします。ここの装置は失われても、逃げた先で新しく作り直せばいい、くらいに思ってそうです。一度は完成させた装置ですしネ。
逃げ出す影郎。そこに鉄人のパンチが降ってきました。
怪しげな光を発する瞬間移動装置。
敷島博士は正太郎や大塚署長に逃げるように促し、鉄人もそこから離れます。
爆発音とともに全ては消え去ってしまいました。後にはブラックマスクの家も残っていません。

影郎と瞬間移動装置の行方を案じる正太郎たち。ですが、敷島博士の言ったとおり、家も影郎も無事とは思われません。
大塚署長は「みんな夢みたいに消えてしまった」と呟きます。

その頃、影郎の家の近くにある海岸を、歩く者がいました。有本博士です。
彼は息子の愚かさを嘆きます。もしかしたら、その家の場所も知っていて、息子を説得しに来たのかもしれません。でも時遅く、影郎は家ごと消えてしまいました。
博士の左手は機械仕掛けでした。これが南極テストで彼が失い、自らの実験を辞めさせた理由だったのでしょう。
それでも有本博士は嘆きます。影郎、たった一人の息子を失ったことを。

有本博士の上に雪が降ってきたころ、影郎の上にも雪が降ってきました。空は灰色にどんよりと曇っています。
目覚めた影郎は「こんな場所に移動するはずが」と呟きますが、最後の最後に鉄人が装置をぶっ壊しちゃったから、事故ったんだろうかな。
そして周囲を見回して、影郎は気づくのです。氷に埋もれた人の手に。
それこそ南極テストで有本博士が失った手でした。
そう、影郎が飛ばされたのは、有本博士がかつて飛ばされた南極だったのです。
しかも、今度は何もありません。家は鉄人28号に壊され、装置も残っていません。影郎はたった一人で南極に放り出されてしまったのです。しかも、極寒の地に、身軽な服装のままで。
その悲鳴を聞いた者は誰もいなかったでしょう。

次回は2回完結の「京都編」です。

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第13回 光る物体

矢島正明さん主演って感じです。今川監督、趣味に走りすぎです。でも大好きな話ですvv

どこかの山に落ちた隕石からスタート。驚いた村人が見に行きますと、隕石に緑色の物体がついていてうごめいています。
一人の村人が近づき、棒の先でつつくと、スライムのようなそれはつついた村人を包み込み、あっという間に干からびさせてしまったのです。

この緑色に光る物体は、やがて事件を起こすことになるわけですが、タイトルロール。

物語は一人の男の日記から始まります。動物を薬殺した記録を、ひたすら矢島さんが読み上げるのですが、矢島さんの声があんまり淡々としてるもので、まぁ、何と言いますか、まるで何でもないような風に聞こえちゃいますが、硝酸ストリキーネで殺したの、青酸カリを餌に混ぜたの、絞殺、刺殺、餓死と何でもありで、内容は凄惨なものです。
それで、映し出された檻が、動物園だったと推測されるわけです。

やがて、空っぽになった動物園のベンチにたたずむ男が一人。どうやら、日記の主は、この人物のようです。
「かわいそうな象」とかを読めばわかりますが、戦争中、日本では動物園の動物たちを殺させていました。それは、空襲で万が一、檻が壊された時に動物、特に猛獣たちが逃げ出したら、人びとに害を及ぼすのではないかという発想からでした。
彼もまた、そんな作業をやらされた動物園の飼育員の一人だったものと思われます。
しかし彼は、今も罪の意識に苛まれながら、心の中で「もう終わったことじゃないか!」と言って、自分を許そうとしつつ、そうできないようでした。なぜなら、彼には殺してしまった動物たちが自分を見ているから、その罪を忘れることができなかったのです。動物たちの虚ろな目は、償えなえぬ罪を忘れさせまいと彼を見つめているのです。「まるで自分たちを殺したのは、おまえだとでも言うように。そして、それは間違いではない」とつぶやき続ける男。

しかし実際のところ、彼がいるのは動物がいなくなった動物園ではなく、警察の取調室だったのです。上からの命令で動物たちを殺したことを、まるで自分の罪ででもあるかのように罪の意識に囚われ続けた彼が、いったい何の罪に問われているというのでしょう?

その男の姿をガラス越しにのぞく関刑事。
男の名は八木勝裕、出身は青森で、動物園の飼育係です。歳は40歳。えええ〜?! 前科はないようですが、念のために調査中。
男を見ているのはほかに大塚署長と正太郎です。
あと「無関係だろう」と断りつつ、関刑事は八木が戦争に行っていない、つまり徴兵に取られていないと言います。
驚く正太郎。
大塚署長はこれを軽く受け止めますが、関刑事は「戦中は後ろ指を指された」と付け加えます。
八木は孤児のため、親戚もおらず、それで無口になったようですが、友だちもいません。念のため、同僚に来てもらったという関刑事。
思わず頭を下げちゃう正太郎。

また八木の独白に戻ります。
どうやら、無口な八木は他人から理解されづらい性格だったと見え、人から不審な眼差しを浴びせられることが多かったようです。まぁ、自己表現がうまくないというか…
それで今も正太郎たちに見られていることを内心で悪態ついているんですが、さすがに正太郎のことは知っているようです。すっかり有名人ですネ。
大塚署長は警察のお偉いさん、同僚は「おまえらか」と言ってますが、どうも取り調べにはだんまりを決め込んでいるくさいですよ、八木は。
戦中から動物園にいた八木にとり、若手の飼育係は鬱陶しいものなのかもしれません。戦争中の自分たちの苦労も知らないで、ぐらいは思ってそうな気配。
そして八木は、「あの時(戦中のことか?)、わたしはああするしかなかったんだ」と自己弁護してますが、きっとすぐに動物たちの目にさらされちゃうんだろうな…

ここで八木の同僚から話を聞く正太郎、大塚署長、関刑事。
無口ですが、同僚からの信頼は厚かったようで、「まさか、あの八木さんが」と口を揃える同僚たち。逆に一目置かれていたんで、余計に友だちはできにくかったのか…
しかし、プライベートの八木は知らないと関刑事に突っ込まれて、確かに飲み会に誘っても断られると同意する同僚たち。
でも、今晩は園長に誘われて、さすがの八木も同行したそうです。この動物園では、園長と八木だけが戦中からのスタッフなんでした。
そこは関刑事、裏をとっておりまして、八木が突然興奮したという店の証言を得ています。そもそも園長に誘われたのも、戦中の話をするためだったとか。そこで八木が口走ったのは、薬がどうとか、動物たちがこうとか、冒頭からの動物を殺した件に関わりがありそうなことです。
すると同僚たちは「あの虐殺のことか」「しかし、いまさら、その件を持ち出しても」と話し始めたもので、なぜか取り調べに立ち会っている少年探偵、「虐殺」について問います。うんうん、君のような子どもが知らなくても無理はないネ。
しかも同僚たちは、その件について言葉を濁してしまい、話してくれません。正太郎が子どもなんで遠慮したか、やはり動物園に携わる者としては、そんなことは忘れたいのか。
そこに東京生物大学の山岸さんが登場。おや、この方は「白昼の残月」で弁護士やってたじゃん! じゃあ、声は麦人さんか?! ラストのキャストを見たら合ってましたw
山岸さんは死体の検分を頼まれたようですが、それって、そもそも生物学者の領域なのか?
どうやら殺されたのは園長らしく、それで口論していた八木が疑われたようです。しかもからからにミイラ化した様子。
驚きもせずに検死に立ち会う正太郎。なんで前回、あんなにおびえていたんじゃ? あんた、死体には慣れっこかと思ってたのに。
しかし、関刑事はさすがに八木が園長をミイラにしたとは思っておらず、参考人だそうです。
そこで山岸教授にお願いした、と大塚署長。
ところが山岸教授の返事は「本当ならえらいことになる」と、却って惨劇を予想させます。「町に警報を」と山岸教授に言われて、関刑事は同僚に八木を見張ること、町に警報を鳴らすことを頼みます。いや、「おまえたち」って言ってるんで、部下かも… そんなに偉かったっけ、関くん?

そこで映し出される園長のものと思しき干からびた手。それは、あの隕石でミイラ化した村人にそっくりでした。
そこに白い布をかける大塚署長。
その後ろで山岸教授は「まさか彼が」とつぶやき、大塚署長も「彼」に心当たりがあるような様子です。
山岸教授は「彼だとしたら、東京では手のつけられんことに」と言いますが、そこに正太郎が割って入ります。まぁ、昭和20年生まれの正太郎には聞いたこともない事件ばかりでしょうからね。
ただ、山岸教授も大塚署長も答えてくれません。

まだ取り調べ中の八木。
その時、外ではサイレンが鳴り響きました。
八木は「無駄だ。そんな警報を鳴らしても彼は捕まらない」と独白。どうやら、大塚署長らの言う「彼」と、八木の言う「彼」は同一人物(?)を指しているようですが?
八木は「まさか彼が生きていたとは」と言い、初めて「彼」に会った日を思い返します。
その日も、こんな風にサイレンが鳴っていたのです。
それは東京が未曾有の空襲を受けた晩のことでした。東京大空襲だから3月?
夜勤だった八木は地下倉庫に逃げ込みましたが、空襲の時に逃げる場所としてはどうなのだ? 火事にまかれたら、酸素不足で死んじゃわないのか?
とりあえず火事の心配はないようですが、送電線も断たれ、地下室は真っ暗闇でした。
でもそれは八木にとって恐怖ではなかったのです。なぜなら、八木にとっては人生が闇そのものでした。孤児であり、徴兵検査にも落ちた八木は、自分のことを「いつ死んでも誰も悲しまない」と卑下していました。だったら、この闇の中でひそかに死んでいくことも、自分の人生に相応しく思えたのでしょう。
しかし、八木はそれを許してくれない者がいると思っていました。自分が来る日も来る日も殺し続けた動物たちです。
恐ろしくなって八木は地下室の扉をたたきましたが、誰も助けには来ません。この地下室、都会の真ん中じゃなくて山の中腹にあるなぁ… 空襲も問題なさげ。ただ孤独な八木は、どこの防空壕でも受け入れられずにこんな山まで来たのかもしれないです。
八木は、ついさっきまで死んでもいいと思っていたのに動物たちに復讐されるかもしれないと恐ろしくなった自分を「笑わないでほしい」と言います。どうやら、そこは剥製が保管してある地下室なんで、動物園の関係なんでしょう。じゃあ、八木は最初からここに来たんでしょうな、わかってて。でも剥製にされた動物たちの眼差しが自分を責めているのだと八木は感じてしまったのです。
八木が「彼」と出会ったのは、その時でした。それはどう見ても冒頭の隕石について落ちてきた緑色の光る物体なのですが、八木にとっては生涯唯一の友との出会いでもあったのです。

ここでようやく話が正太郎たちに戻りまして、物語も冒頭の隕石落下にリンクします。
山岸教授は隕石落下時に死者を出した緑色の光る物体について正太郎に語っていたようです。
と思ったら、光る物体は村を壊滅させていたことが判明… 凶悪犯やないかぁ…
山岸教授の話をバックに、八木に近づく光る物体。それは隕石についてきた時のようなスライムではなく、ライオンに姿を変えていました。
そう、光る物体には世にも稀な擬態という能力があったのだと説明する山岸教授。
でも、そんな事件も知らない八木はライオンの姿で現れた光る物体を受け入れます。この人、ほんとに暗い表情が多いもんで、微笑んでいるのを見ると、なんか和む…
擬態、という言葉を知らない正太郎が鸚鵡返しに訊ねますと、山岸教授は「あらゆる物体に姿を変えられる」と説明。
もっとも、八木の手にその身を委ねた光る物体は、ライオンの姿を維持できなくなったのか、元のスライムに戻ってるんで、長時間は使えないと思っていいのか、ちょっとわかりません。
ただ山岸教授が言うには「ある時は川の中の岩、ある時は山の中の木」と多羅尾坂内も真っ青な変身、もとい擬態っぷりです。
ライオンからスライムに戻った光る物体は、八木の身体を包み込み始めました。ちょうど、最初の犠牲者がそうだったように。

ところがある日、町の近くで動けずに弱っていたところを発見されます。動けない時は例の干からびさせる能力は発揮できんのかな。ただし原因は不明のまま、近くの動物園の収容されって… それは入れるところが間違っていると思うのだが… 何で大学の研究室とかじゃないのだ…
危険な生き物だというので誰も実験や研究をする者もないまま… って、どうしたの? 空襲にでも遭って死んだと思われていたの? ねぇ、山岸さん、ちゃんと話して!

で、語りが八木に戻ります。「だが彼は生きていた」と。どうやら、山岸さんのみならず、関係者皆さんに死んだものと思われたようです。でもさぁ、隕石に乗ってやってきた光る物体が空襲くんだりで死ぬとも思えないわけですが…
八木は「彼」が仮死状態になっていたのだと推測します。地下倉庫でネズミなどを餌に生き長らえていたのだというわけです。その証拠に、と八木は光る物体に包まれても一気に干からびなかったことを理由にあげます。やっぱり包まれると捕食されちゃうんだ。
そして八木は「彼」が生き餌を必要とすることを知ります。
けれども八木は「彼」を恐れませんでした。たぶん事件のことは知らなかったのでしょう。でも、そんな生き物がほかにいるわけもなく、「彼」は八木と同じくらいに孤独で、その地下室には彼ら以外に誰もいなかったからです。
あれ、「互いに虐殺という罪を背負った生きていてはいけない者の居場所」と言ってるんで、事件のことは知っている模様ですよ。つまり、自分と同類と見なしたようです。

ここで話はまた正太郎たちに戻ります。大塚署長の部屋で前々回まではわりと夜遅くまで働いていた高見沢さんもさすがに帰ってまして、大塚署長が山岸教授にお茶を入れてます。
そこで正太郎、またしても虐殺の話を持ち出します。
ところがややこしいことに、今度は戦争中の動物園での虐殺の話です。八木の関連から出てきた話か、これ?
ここで背景が暗がりにたたずむ鉄人で、なるべく予算節約の事情が垣間見えて涙ぐましいですよネ。
大塚署長の「仕方なかったんだよ」が戦争中の園長の言葉につながります。こういう今川節全開でいいなぁ、このアニメ…
話す相手は八木です。しかも「我々にはあの子たちにあげられる餌もない」とは、園長なりの苦悩というか、せめてもの良心を感じます。

しかし、物語はここで機械的に動物をどんな手段で殺したかを淡々と綴る冒頭の八木の日記に戻りまして、凄惨な記録が繰り返されます。
とうとう動物園には何もいなくなってしまいました。そう言えば、戦後、インドのネール首相がインディラという象を「日本の子どもたちに」と言ってプレゼントしてくれていたけれど、日本のこういう事情をネール首相は知っていたのだろうか? と思ってぐぐってみたら、もともとは日本の方で「象がほしい」と言い出したのをネール首相が応えてくれたようです。「戦争中だったからしょうがない」と、ネール首相は思っていたんだろうかいな… だとしたら、悲しいことだけどな…

閑話休題。

そのことが八木のトラウマになっていました。もうね、その心情を思うと気の毒すぎて…
そのため、八木は「彼」、大勢の人を殺した光る物体だけは庇おうと誓うのです。たとえ「彼」のしたことが許されざる罪であったのだとしても、八木はただ、自分にできたたった一人の友だちだけは守りたかった、それだけのエゴで動いていたのです。
そんな二人を見つめる、無数の剥製の死んだ眼差し。

話を聞かされた正太郎の前には鉄人がありました。正太郎にとっては同じ名前を持つもう一人の自分ですが、彼もまた一度は葬られた身であったから、正太郎には戦争中に大人たちが犯した許されざる罪を子どもらしい純粋な反発を持たずに受け入れられるのかもしれませんネ。それらを頭ごなしに否定することは、すなわち鉄人の否定でもあるのでしょうから。

ここで八木の思考がようやく鉄人に結びつきます。戦争の名のもとで作られた「鉄の化け物」として、同じ穴のムジナだと思うからのようです。
と、ここで八木を尋問していた刑事が怒鳴りつけました。「はっきりしゃべれ! さっきからぶつぶつと」と言っているところを見るに、八木の今までの話は心の中の独白ではなく、独り言だったのか!
ところが刑事のことなんか端から頭にない八木は、「彼」が自分のつぶやきに反応したことを思い出します。
スライムかと思っていたら、光る物体には知性がありました。それも言葉を理解するのです。その知性はみるみるうちに八木の言葉を吸収し、理解していくという驚くべき高さで、そういう事情もまた、八木に「彼」を親友と言わしめたのでしょう。
八木は語りました。自分のことを。長い間、誰にも聞いてもらえなかった胸の内を。自分の生まれた場所、少年時代、今の仕事について、全てを語ったのです。
その言葉を受けて、刑事が「本当のことを言え!」と怒鳴りますが、そもそも人間にできる殺し方ではないわけですから、八木が黙秘しちゃったら、何もわからんわけか…
ところが、ここに来て、八木は園長への殺意を認めます。
そして時間軸を遡り、園長と飲んだ飲み屋へ。

園長が謝っているのは過去の件ではなく、近いうちに動物園を閉鎖するという件についてでした。それでベテランの八木に相談したかったのかな?
でも園長が「今いる動物たちを」と言ったところで八木が怒り出してしまったのは、過去の虐殺のことを思い出して、また殺すのかと怒りにかられたためだと思われます。
ところが山岸教授曰く「八木は勘違いしたのだろう」と。園長が言いたかったのは動物園を閉鎖するから、別の動物園に移送するということだったのだと言う大塚署長。

その時、警察署の建物にサイレンが鳴り響きました。
八木は刑事たちをどうにかして逃げ出してしまったのです。

慌てて出動するパトカーに正太郎と山岸教授も同行してます。
大塚署長は運転しながら無線で関刑事に連絡。「八木がそっちに向かったかも」というそっちとは、いったいどこのことでしょう?
と思ったら、一緒の刑事ととっとと突入、開けたドアの中には例の大量の剥製が… ってことは、ここは八木と「彼」が出会った地下倉庫か?
人が住んでいるようには見えない、と言う関刑事。ということは、ここが八木の住み処だと思われている? あるいは住所ここ?
その時、足下に転がる鴉の死骸に気づく関刑事。若いけどけっこう優秀な人だったりします。その死骸も干からびていました。
すると一緒に突入した後輩(関刑事を「先輩」と呼んでいるので)が日記を見つけました。例の八木の日記か?
ところが暗くて日記が読めません。
後輩くんが灯りをつけようとすると、天井裏にいた光る物体が下りてきました。上! 上!
その姿はたちまち光る物体に包まれてしまい、関刑事が振り返った時には部屋いっぱいに光る物体が広がっていました。

そこに駆けつける大塚署長たち。
関刑事は表に逃げ出しました。
それを追って巨大化する光る物体。
正太郎が鉄人を出します。
ところが鉄人の姿を認めて光る物体は対抗すべく象を擬態しますが、それは鉄人を遙かに超える大きさとなったのです。
しかも大元がスライムのくせに、鉄人を踏みつぶしにかかった足には十分な強度があり、光る物体の高性能さというか、擬態の優秀さを裏づけている感じがします。
光る物体は鉄人を軽く投げ飛ばし、せっかく前回、ギルバートから受けた損傷を敷島博士が直してくれたというのに、また腕をちぎられてしまう鉄人。腕ってもろい?
さらに残った腕もひねり潰すと、今度は流れるように広がって、鉄人を包囲にかかります。その触手は伸縮自在かッ!
正太郎は鉄人に逃げるよう指示します。
鉄人のロケット噴射もものともせず、鉄人を押さえ込んだ光る物体でしたが、ふとしたことでその身が電線に触れると力無く鉄人から離れてしまいました。たちまち縮小化する光る物体。
そこで山岸教授は光る物体が電気に弱いことに気づきます。
しかし「彼」はマンホールへ逃げ込んだようですよ? 後に八木の日記を残して。
正太郎は日記を拾い、パラ見します。ところが、そこには驚くべきことが書かれていたのです。
山岸教授も大塚署長も驚きを隠せません。
「とにかく確かめてみよう」と言う正太郎。
それを影から見ているのは八木です。

その場を離れた八木は、「彼」を守ろうとどこかへ向かいます。「今度こそ彼を見捨てたりしない」と誓っているのは、逆にかつて見捨てたことがあるから?
八木は「彼」に詫びなければ、と言います。
それは「彼」と出会った地下倉庫で食料がなくなった時、力尽きた八木を「彼」が見守っていてくれたからです。「それなのに、わたしは! わたしは〜!」と言う八木。んん?

どうやら、さっきの場所は例の地下倉庫とは違ったようで、今度こそ、正太郎たちは地下倉庫にやってきました。そこの扉をぶん殴って壊そうとする鉄人。
やがて破れて地下に下りた正太郎たち。
しかし、そこには何もなく、とっくに使われなくなっているようですよ?
そこに日記に書いてあるものを見つけた正太郎たち。「それ」を外に運びだそうとすると、それを阻止すべく八木が現れます。
後輩を襲った光る物体のせいで、すでにダメージを受けていた(その証拠に大塚署長に肩を貸されている)関刑事から銃を奪う八木。
「下がれ」と言って、八木は「彼」を守ろうとしますが、さっき、正太郎たちが見つけた「それ」は、本当に「彼」なのか?
大塚署長も山岸教授も話を聞くよう説得しようとしますが、八木は「二度と彼を見捨てない」と言って聞きません。「あの時、わたしは彼を裏切った」と言う彼とは、「彼」のことか? 何か、逆転してないか?

そして、あの瞬間に戻ります。光る物体に包まれた八木。
ですが、彼の目の前で地下倉庫の扉が開きます。自由を取り戻した八木。でも食料もなくて動けなかったのに?
でも八木は言います。「上の世界に出てこられない彼を見捨てて」と。
後ろにまわした手でこっそり鉄人の操縦器をいじる正太郎。
「今度こそ彼を裏切らない。わたしが守ってみせる」と言う八木。しかし、その上に無情に下りてきたのは鉄人の手で、八木は囚われてしまいます。
八木に強烈な電気ショックを与える鉄人。
正太郎たちの見ている前で八木はその光る物体の本質を明らかにします。そう、いつの間にか2人は入れ替わっていたのです!
弱点の電気攻撃を受けて、八木の形を保てなくなっていく光る物体。
つまり、八木の日記には自らの死が記されていたのです。
それで正太郎たちが地下倉庫跡で見つけたのは、八木の白骨でした。戦争中ということもあって、八木の名札が服に縫いつけてあったろから、断定するのも簡単だったでしょう。八木の死は食料の不足もあったかもしれません。でも、彼に擬態した光る物体が「裏切った」と繰り返し言っていることを鑑みるに、空腹のために八木を喰ってしまった可能性も高いでしょう。
そして、光る物体は地下倉庫を出て、八木として生き始めました。彼から聞いた話もあって、それはそう難しいことではなかったのです。彼に不審な点があったとしても、もともと人付き合いの薄い八木です。そうそう疑われるようなことにもならなかったのでしょう。
ただひとつの誤算があるとすれば、光る物体自身が己を八木だと思い込んでしまったことです。その結果が、今回の事件をややこしくさせたとも言えます。
崩れ、鉄人の手から逃れた光る物体でしたが、もはや再起できるような力も残っていませんでした。「彼」は最後の意識の下、まだ八木になりきったままで気づきます。檻の中から見ていたのは自分だったこと、だから動物たちは剥製となっても友のように「彼」を見つめていたこと、動物たちは「彼」の罪を責めていたのではなく、「彼」の身を案じていたこと、でも、それらがすでに八木ではなく、「彼」であることに気づいているでしょうか? 檻に入れられていたのは弱ったところを捕まった「彼」でした。自分たちを殺した八木の罪を責めこそすれ、生きるために人間を殺した「彼」を動物たちが責める謂われもありません。弱った身で檻に閉じ込められた「彼」の身を案じたりもしたかもしれません。
けれども、最後まで八木のつもりで「彼」は今度こそ、檻の中で友と生きていこうと思います。鉄人に何を見ているのかと訊ねながら。

次回は唯一と言ってもいいコミカルな展開の「怪盗ブラックマスク」です。

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