矢島正明さん主演って感じです。今川監督、趣味に走りすぎです。でも大好きな話ですvv
どこかの山に落ちた隕石からスタート。驚いた村人が見に行きますと、隕石に緑色の物体がついていてうごめいています。
一人の村人が近づき、棒の先でつつくと、スライムのようなそれはつついた村人を包み込み、あっという間に干からびさせてしまったのです。
この緑色に光る物体は、やがて事件を起こすことになるわけですが、タイトルロール。
物語は一人の男の日記から始まります。動物を薬殺した記録を、ひたすら矢島さんが読み上げるのですが、矢島さんの声があんまり淡々としてるもので、まぁ、何と言いますか、まるで何でもないような風に聞こえちゃいますが、硝酸ストリキーネで殺したの、青酸カリを餌に混ぜたの、絞殺、刺殺、餓死と何でもありで、内容は凄惨なものです。
それで、映し出された檻が、動物園だったと推測されるわけです。
やがて、空っぽになった動物園のベンチにたたずむ男が一人。どうやら、日記の主は、この人物のようです。
「かわいそうな象」とかを読めばわかりますが、戦争中、日本では動物園の動物たちを殺させていました。それは、空襲で万が一、檻が壊された時に動物、特に猛獣たちが逃げ出したら、人びとに害を及ぼすのではないかという発想からでした。
彼もまた、そんな作業をやらされた動物園の飼育員の一人だったものと思われます。
しかし彼は、今も罪の意識に苛まれながら、心の中で「もう終わったことじゃないか!」と言って、自分を許そうとしつつ、そうできないようでした。なぜなら、彼には殺してしまった動物たちが自分を見ているから、その罪を忘れることができなかったのです。動物たちの虚ろな目は、償えなえぬ罪を忘れさせまいと彼を見つめているのです。「まるで自分たちを殺したのは、おまえだとでも言うように。そして、それは間違いではない」とつぶやき続ける男。
しかし実際のところ、彼がいるのは動物がいなくなった動物園ではなく、警察の取調室だったのです。上からの命令で動物たちを殺したことを、まるで自分の罪ででもあるかのように罪の意識に囚われ続けた彼が、いったい何の罪に問われているというのでしょう?
その男の姿をガラス越しにのぞく関刑事。
男の名は八木勝裕、出身は青森で、動物園の飼育係です。歳は40歳。えええ〜?! 前科はないようですが、念のために調査中。
男を見ているのはほかに大塚署長と正太郎です。
あと「無関係だろう」と断りつつ、関刑事は八木が戦争に行っていない、つまり徴兵に取られていないと言います。
驚く正太郎。
大塚署長はこれを軽く受け止めますが、関刑事は「戦中は後ろ指を指された」と付け加えます。
八木は孤児のため、親戚もおらず、それで無口になったようですが、友だちもいません。念のため、同僚に来てもらったという関刑事。
思わず頭を下げちゃう正太郎。
また八木の独白に戻ります。
どうやら、無口な八木は他人から理解されづらい性格だったと見え、人から不審な眼差しを浴びせられることが多かったようです。まぁ、自己表現がうまくないというか…
それで今も正太郎たちに見られていることを内心で悪態ついているんですが、さすがに正太郎のことは知っているようです。すっかり有名人ですネ。
大塚署長は警察のお偉いさん、同僚は「おまえらか」と言ってますが、どうも取り調べにはだんまりを決め込んでいるくさいですよ、八木は。
戦中から動物園にいた八木にとり、若手の飼育係は鬱陶しいものなのかもしれません。戦争中の自分たちの苦労も知らないで、ぐらいは思ってそうな気配。
そして八木は、「あの時(戦中のことか?)、わたしはああするしかなかったんだ」と自己弁護してますが、きっとすぐに動物たちの目にさらされちゃうんだろうな…
ここで八木の同僚から話を聞く正太郎、大塚署長、関刑事。
無口ですが、同僚からの信頼は厚かったようで、「まさか、あの八木さんが」と口を揃える同僚たち。逆に一目置かれていたんで、余計に友だちはできにくかったのか…
しかし、プライベートの八木は知らないと関刑事に突っ込まれて、確かに飲み会に誘っても断られると同意する同僚たち。
でも、今晩は園長に誘われて、さすがの八木も同行したそうです。この動物園では、園長と八木だけが戦中からのスタッフなんでした。
そこは関刑事、裏をとっておりまして、八木が突然興奮したという店の証言を得ています。そもそも園長に誘われたのも、戦中の話をするためだったとか。そこで八木が口走ったのは、薬がどうとか、動物たちがこうとか、冒頭からの動物を殺した件に関わりがありそうなことです。
すると同僚たちは「あの虐殺のことか」「しかし、いまさら、その件を持ち出しても」と話し始めたもので、なぜか取り調べに立ち会っている少年探偵、「虐殺」について問います。うんうん、君のような子どもが知らなくても無理はないネ。
しかも同僚たちは、その件について言葉を濁してしまい、話してくれません。正太郎が子どもなんで遠慮したか、やはり動物園に携わる者としては、そんなことは忘れたいのか。
そこに東京生物大学の山岸さんが登場。おや、この方は「白昼の残月」で弁護士やってたじゃん! じゃあ、声は麦人さんか?! ラストのキャストを見たら合ってましたw
山岸さんは死体の検分を頼まれたようですが、それって、そもそも生物学者の領域なのか?
どうやら殺されたのは園長らしく、それで口論していた八木が疑われたようです。しかもからからにミイラ化した様子。
驚きもせずに検死に立ち会う正太郎。なんで前回、あんなにおびえていたんじゃ? あんた、死体には慣れっこかと思ってたのに。
しかし、関刑事はさすがに八木が園長をミイラにしたとは思っておらず、参考人だそうです。
そこで山岸教授にお願いした、と大塚署長。
ところが山岸教授の返事は「本当ならえらいことになる」と、却って惨劇を予想させます。「町に警報を」と山岸教授に言われて、関刑事は同僚に八木を見張ること、町に警報を鳴らすことを頼みます。いや、「おまえたち」って言ってるんで、部下かも… そんなに偉かったっけ、関くん?
そこで映し出される園長のものと思しき干からびた手。それは、あの隕石でミイラ化した村人にそっくりでした。
そこに白い布をかける大塚署長。
その後ろで山岸教授は「まさか彼が」とつぶやき、大塚署長も「彼」に心当たりがあるような様子です。
山岸教授は「彼だとしたら、東京では手のつけられんことに」と言いますが、そこに正太郎が割って入ります。まぁ、昭和20年生まれの正太郎には聞いたこともない事件ばかりでしょうからね。
ただ、山岸教授も大塚署長も答えてくれません。
まだ取り調べ中の八木。
その時、外ではサイレンが鳴り響きました。
八木は「無駄だ。そんな警報を鳴らしても彼は捕まらない」と独白。どうやら、大塚署長らの言う「彼」と、八木の言う「彼」は同一人物(?)を指しているようですが?
八木は「まさか彼が生きていたとは」と言い、初めて「彼」に会った日を思い返します。
その日も、こんな風にサイレンが鳴っていたのです。
それは東京が未曾有の空襲を受けた晩のことでした。東京大空襲だから3月?
夜勤だった八木は地下倉庫に逃げ込みましたが、空襲の時に逃げる場所としてはどうなのだ? 火事にまかれたら、酸素不足で死んじゃわないのか?
とりあえず火事の心配はないようですが、送電線も断たれ、地下室は真っ暗闇でした。
でもそれは八木にとって恐怖ではなかったのです。なぜなら、八木にとっては人生が闇そのものでした。孤児であり、徴兵検査にも落ちた八木は、自分のことを「いつ死んでも誰も悲しまない」と卑下していました。だったら、この闇の中でひそかに死んでいくことも、自分の人生に相応しく思えたのでしょう。
しかし、八木はそれを許してくれない者がいると思っていました。自分が来る日も来る日も殺し続けた動物たちです。
恐ろしくなって八木は地下室の扉をたたきましたが、誰も助けには来ません。この地下室、都会の真ん中じゃなくて山の中腹にあるなぁ… 空襲も問題なさげ。ただ孤独な八木は、どこの防空壕でも受け入れられずにこんな山まで来たのかもしれないです。
八木は、ついさっきまで死んでもいいと思っていたのに動物たちに復讐されるかもしれないと恐ろしくなった自分を「笑わないでほしい」と言います。どうやら、そこは剥製が保管してある地下室なんで、動物園の関係なんでしょう。じゃあ、八木は最初からここに来たんでしょうな、わかってて。でも剥製にされた動物たちの眼差しが自分を責めているのだと八木は感じてしまったのです。
八木が「彼」と出会ったのは、その時でした。それはどう見ても冒頭の隕石について落ちてきた緑色の光る物体なのですが、八木にとっては生涯唯一の友との出会いでもあったのです。
ここでようやく話が正太郎たちに戻りまして、物語も冒頭の隕石落下にリンクします。
山岸教授は隕石落下時に死者を出した緑色の光る物体について正太郎に語っていたようです。
と思ったら、光る物体は村を壊滅させていたことが判明… 凶悪犯やないかぁ…
山岸教授の話をバックに、八木に近づく光る物体。それは隕石についてきた時のようなスライムではなく、ライオンに姿を変えていました。
そう、光る物体には世にも稀な擬態という能力があったのだと説明する山岸教授。
でも、そんな事件も知らない八木はライオンの姿で現れた光る物体を受け入れます。この人、ほんとに暗い表情が多いもんで、微笑んでいるのを見ると、なんか和む…
擬態、という言葉を知らない正太郎が鸚鵡返しに訊ねますと、山岸教授は「あらゆる物体に姿を変えられる」と説明。
もっとも、八木の手にその身を委ねた光る物体は、ライオンの姿を維持できなくなったのか、元のスライムに戻ってるんで、長時間は使えないと思っていいのか、ちょっとわかりません。
ただ山岸教授が言うには「ある時は川の中の岩、ある時は山の中の木」と多羅尾坂内も真っ青な変身、もとい擬態っぷりです。
ライオンからスライムに戻った光る物体は、八木の身体を包み込み始めました。ちょうど、最初の犠牲者がそうだったように。
ところがある日、町の近くで動けずに弱っていたところを発見されます。動けない時は例の干からびさせる能力は発揮できんのかな。ただし原因は不明のまま、近くの動物園の収容されって… それは入れるところが間違っていると思うのだが… 何で大学の研究室とかじゃないのだ…
危険な生き物だというので誰も実験や研究をする者もないまま… って、どうしたの? 空襲にでも遭って死んだと思われていたの? ねぇ、山岸さん、ちゃんと話して!
で、語りが八木に戻ります。「だが彼は生きていた」と。どうやら、山岸さんのみならず、関係者皆さんに死んだものと思われたようです。でもさぁ、隕石に乗ってやってきた光る物体が空襲くんだりで死ぬとも思えないわけですが…
八木は「彼」が仮死状態になっていたのだと推測します。地下倉庫でネズミなどを餌に生き長らえていたのだというわけです。その証拠に、と八木は光る物体に包まれても一気に干からびなかったことを理由にあげます。やっぱり包まれると捕食されちゃうんだ。
そして八木は「彼」が生き餌を必要とすることを知ります。
けれども八木は「彼」を恐れませんでした。たぶん事件のことは知らなかったのでしょう。でも、そんな生き物がほかにいるわけもなく、「彼」は八木と同じくらいに孤独で、その地下室には彼ら以外に誰もいなかったからです。
あれ、「互いに虐殺という罪を背負った生きていてはいけない者の居場所」と言ってるんで、事件のことは知っている模様ですよ。つまり、自分と同類と見なしたようです。
ここで話はまた正太郎たちに戻ります。大塚署長の部屋で前々回まではわりと夜遅くまで働いていた高見沢さんもさすがに帰ってまして、大塚署長が山岸教授にお茶を入れてます。
そこで正太郎、またしても虐殺の話を持ち出します。
ところがややこしいことに、今度は戦争中の動物園での虐殺の話です。八木の関連から出てきた話か、これ?
ここで背景が暗がりにたたずむ鉄人で、なるべく予算節約の事情が垣間見えて涙ぐましいですよネ。
大塚署長の「仕方なかったんだよ」が戦争中の園長の言葉につながります。こういう今川節全開でいいなぁ、このアニメ…
話す相手は八木です。しかも「我々にはあの子たちにあげられる餌もない」とは、園長なりの苦悩というか、せめてもの良心を感じます。
しかし、物語はここで機械的に動物をどんな手段で殺したかを淡々と綴る冒頭の八木の日記に戻りまして、凄惨な記録が繰り返されます。
とうとう動物園には何もいなくなってしまいました。そう言えば、戦後、インドのネール首相がインディラという象を「日本の子どもたちに」と言ってプレゼントしてくれていたけれど、日本のこういう事情をネール首相は知っていたのだろうか? と思ってぐぐってみたら、もともとは日本の方で「象がほしい」と言い出したのをネール首相が応えてくれたようです。「戦争中だったからしょうがない」と、ネール首相は思っていたんだろうかいな… だとしたら、悲しいことだけどな…
閑話休題。
そのことが八木のトラウマになっていました。もうね、その心情を思うと気の毒すぎて…
そのため、八木は「彼」、大勢の人を殺した光る物体だけは庇おうと誓うのです。たとえ「彼」のしたことが許されざる罪であったのだとしても、八木はただ、自分にできたたった一人の友だちだけは守りたかった、それだけのエゴで動いていたのです。
そんな二人を見つめる、無数の剥製の死んだ眼差し。
話を聞かされた正太郎の前には鉄人がありました。正太郎にとっては同じ名前を持つもう一人の自分ですが、彼もまた一度は葬られた身であったから、正太郎には戦争中に大人たちが犯した許されざる罪を子どもらしい純粋な反発を持たずに受け入れられるのかもしれませんネ。それらを頭ごなしに否定することは、すなわち鉄人の否定でもあるのでしょうから。
ここで八木の思考がようやく鉄人に結びつきます。戦争の名のもとで作られた「鉄の化け物」として、同じ穴のムジナだと思うからのようです。
と、ここで八木を尋問していた刑事が怒鳴りつけました。「はっきりしゃべれ! さっきからぶつぶつと」と言っているところを見るに、八木の今までの話は心の中の独白ではなく、独り言だったのか!
ところが刑事のことなんか端から頭にない八木は、「彼」が自分のつぶやきに反応したことを思い出します。
スライムかと思っていたら、光る物体には知性がありました。それも言葉を理解するのです。その知性はみるみるうちに八木の言葉を吸収し、理解していくという驚くべき高さで、そういう事情もまた、八木に「彼」を親友と言わしめたのでしょう。
八木は語りました。自分のことを。長い間、誰にも聞いてもらえなかった胸の内を。自分の生まれた場所、少年時代、今の仕事について、全てを語ったのです。
その言葉を受けて、刑事が「本当のことを言え!」と怒鳴りますが、そもそも人間にできる殺し方ではないわけですから、八木が黙秘しちゃったら、何もわからんわけか…
ところが、ここに来て、八木は園長への殺意を認めます。
そして時間軸を遡り、園長と飲んだ飲み屋へ。
園長が謝っているのは過去の件ではなく、近いうちに動物園を閉鎖するという件についてでした。それでベテランの八木に相談したかったのかな?
でも園長が「今いる動物たちを」と言ったところで八木が怒り出してしまったのは、過去の虐殺のことを思い出して、また殺すのかと怒りにかられたためだと思われます。
ところが山岸教授曰く「八木は勘違いしたのだろう」と。園長が言いたかったのは動物園を閉鎖するから、別の動物園に移送するということだったのだと言う大塚署長。
その時、警察署の建物にサイレンが鳴り響きました。
八木は刑事たちをどうにかして逃げ出してしまったのです。
慌てて出動するパトカーに正太郎と山岸教授も同行してます。
大塚署長は運転しながら無線で関刑事に連絡。「八木がそっちに向かったかも」というそっちとは、いったいどこのことでしょう?
と思ったら、一緒の刑事ととっとと突入、開けたドアの中には例の大量の剥製が… ってことは、ここは八木と「彼」が出会った地下倉庫か?
人が住んでいるようには見えない、と言う関刑事。ということは、ここが八木の住み処だと思われている? あるいは住所ここ?
その時、足下に転がる鴉の死骸に気づく関刑事。若いけどけっこう優秀な人だったりします。その死骸も干からびていました。
すると一緒に突入した後輩(関刑事を「先輩」と呼んでいるので)が日記を見つけました。例の八木の日記か?
ところが暗くて日記が読めません。
後輩くんが灯りをつけようとすると、天井裏にいた光る物体が下りてきました。上! 上!
その姿はたちまち光る物体に包まれてしまい、関刑事が振り返った時には部屋いっぱいに光る物体が広がっていました。
そこに駆けつける大塚署長たち。
関刑事は表に逃げ出しました。
それを追って巨大化する光る物体。
正太郎が鉄人を出します。
ところが鉄人の姿を認めて光る物体は対抗すべく象を擬態しますが、それは鉄人を遙かに超える大きさとなったのです。
しかも大元がスライムのくせに、鉄人を踏みつぶしにかかった足には十分な強度があり、光る物体の高性能さというか、擬態の優秀さを裏づけている感じがします。
光る物体は鉄人を軽く投げ飛ばし、せっかく前回、ギルバートから受けた損傷を敷島博士が直してくれたというのに、また腕をちぎられてしまう鉄人。腕ってもろい?
さらに残った腕もひねり潰すと、今度は流れるように広がって、鉄人を包囲にかかります。その触手は伸縮自在かッ!
正太郎は鉄人に逃げるよう指示します。
鉄人のロケット噴射もものともせず、鉄人を押さえ込んだ光る物体でしたが、ふとしたことでその身が電線に触れると力無く鉄人から離れてしまいました。たちまち縮小化する光る物体。
そこで山岸教授は光る物体が電気に弱いことに気づきます。
しかし「彼」はマンホールへ逃げ込んだようですよ? 後に八木の日記を残して。
正太郎は日記を拾い、パラ見します。ところが、そこには驚くべきことが書かれていたのです。
山岸教授も大塚署長も驚きを隠せません。
「とにかく確かめてみよう」と言う正太郎。
それを影から見ているのは八木です。
その場を離れた八木は、「彼」を守ろうとどこかへ向かいます。「今度こそ彼を見捨てたりしない」と誓っているのは、逆にかつて見捨てたことがあるから?
八木は「彼」に詫びなければ、と言います。
それは「彼」と出会った地下倉庫で食料がなくなった時、力尽きた八木を「彼」が見守っていてくれたからです。「それなのに、わたしは! わたしは〜!」と言う八木。んん?
どうやら、さっきの場所は例の地下倉庫とは違ったようで、今度こそ、正太郎たちは地下倉庫にやってきました。そこの扉をぶん殴って壊そうとする鉄人。
やがて破れて地下に下りた正太郎たち。
しかし、そこには何もなく、とっくに使われなくなっているようですよ?
そこに日記に書いてあるものを見つけた正太郎たち。「それ」を外に運びだそうとすると、それを阻止すべく八木が現れます。
後輩を襲った光る物体のせいで、すでにダメージを受けていた(その証拠に大塚署長に肩を貸されている)関刑事から銃を奪う八木。
「下がれ」と言って、八木は「彼」を守ろうとしますが、さっき、正太郎たちが見つけた「それ」は、本当に「彼」なのか?
大塚署長も山岸教授も話を聞くよう説得しようとしますが、八木は「二度と彼を見捨てない」と言って聞きません。「あの時、わたしは彼を裏切った」と言う彼とは、「彼」のことか? 何か、逆転してないか?
そして、あの瞬間に戻ります。光る物体に包まれた八木。
ですが、彼の目の前で地下倉庫の扉が開きます。自由を取り戻した八木。でも食料もなくて動けなかったのに?
でも八木は言います。「上の世界に出てこられない彼を見捨てて」と。
後ろにまわした手でこっそり鉄人の操縦器をいじる正太郎。
「今度こそ彼を裏切らない。わたしが守ってみせる」と言う八木。しかし、その上に無情に下りてきたのは鉄人の手で、八木は囚われてしまいます。
八木に強烈な電気ショックを与える鉄人。
正太郎たちの見ている前で八木はその光る物体の本質を明らかにします。そう、いつの間にか2人は入れ替わっていたのです!
弱点の電気攻撃を受けて、八木の形を保てなくなっていく光る物体。
つまり、八木の日記には自らの死が記されていたのです。
それで正太郎たちが地下倉庫跡で見つけたのは、八木の白骨でした。戦争中ということもあって、八木の名札が服に縫いつけてあったろから、断定するのも簡単だったでしょう。八木の死は食料の不足もあったかもしれません。でも、彼に擬態した光る物体が「裏切った」と繰り返し言っていることを鑑みるに、空腹のために八木を喰ってしまった可能性も高いでしょう。
そして、光る物体は地下倉庫を出て、八木として生き始めました。彼から聞いた話もあって、それはそう難しいことではなかったのです。彼に不審な点があったとしても、もともと人付き合いの薄い八木です。そうそう疑われるようなことにもならなかったのでしょう。
ただひとつの誤算があるとすれば、光る物体自身が己を八木だと思い込んでしまったことです。その結果が、今回の事件をややこしくさせたとも言えます。
崩れ、鉄人の手から逃れた光る物体でしたが、もはや再起できるような力も残っていませんでした。「彼」は最後の意識の下、まだ八木になりきったままで気づきます。檻の中から見ていたのは自分だったこと、だから動物たちは剥製となっても友のように「彼」を見つめていたこと、動物たちは「彼」の罪を責めていたのではなく、「彼」の身を案じていたこと、でも、それらがすでに八木ではなく、「彼」であることに気づいているでしょうか? 檻に入れられていたのは弱ったところを捕まった「彼」でした。自分たちを殺した八木の罪を責めこそすれ、生きるために人間を殺した「彼」を動物たちが責める謂われもありません。弱った身で檻に閉じ込められた「彼」の身を案じたりもしたかもしれません。
けれども、最後まで八木のつもりで「彼」は今度こそ、檻の中で友と生きていこうと思います。鉄人に何を見ているのかと訊ねながら。
次回は唯一と言ってもいいコミカルな展開の「怪盗ブラックマスク」です。
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