新里堅進著。ゲン・クリエイティブ刊。全2巻。
サブタイトルが「ひめゆり学徒隊戦記」となっているように、ひめゆり学徒隊を描いた新里堅進さんの漫画です。タイトルの水筒は沖縄県平和祈念資料館に飾られている生徒さんの遺品で、当時の水がまだ入ったまま展示されている、というシチュエーションになっていますが、そう言えば、誰の水筒だったか描いてなかったですね。
ひめゆり学徒隊のことを、主に教師の一人の視点で描いてますが、「シュガーローフの戦い」に比べて絵が若い感じがしました。
卒業を前にして学徒隊として戦場に放り込まれ、南風原陸軍病院壕での奮闘、摩文仁への敗走、無責任な解散命令を出され、各個撃破という最悪の形で迎える死ときて、最後まで生き延びた学徒隊を描きますが、わしはラスト、死を選ぶよりも生きて皆のことを伝えねばという使命感で生き延びた学徒隊の目の前で、泣きじゃくる幼児を「Don't cry」と言いながら泣いて抱き上げた米兵の姿に妙に感動してしまいました。それまでは彼女たちにとっても沖縄の人びとにとっても日本軍の主張する「鬼畜米英」が、自分たちと同じ人間だったのだと理解するのにこれほどわかりやすい構図もないと思いまして。
だから思うのですよ。軍隊なんかいなければ沖縄は戦場にならなかったのだと。ならば、軍も基地もこの世界からなくさなければならないのだと。
新里さんの漫画は、わりとそういうメッセージ性は薄いところがあるんですが、はっきりと書いてもいいんじゃないかなぁと思います。事実を積み上げて、そこから何を読み取るかは読者次第というには、わしは日本人はあまりに幼いと思うのです。
[0回]
PR