ホセ=リサール著。岩崎玄訳。井村文化事業社発行。フィリピン双書3。
「
ノリ・メ・タンヘレ」の続編です。
前作はシーサやエリアスを書くことにより、階層的な広がりを見せていましたが、今作は話の中心は学生たちとアメリカ帰りの富裕な宝石商シモウンに移り、そのうちの1人は哀れな母シーサの息子バシリョでしたけど、世界はずいぶんと狭くなってしまいました。
ただ、その分、著者が己を託したとも思えるイバルラが意外な姿で再登場し、それでも革命家にはならずテロリストに留まって、その意図するところも失敗に終わってしまうのはもともと裕福な家に生まれて、生涯、実際の運動をすることなく、理論家として処刑されたリサールらしい終わり方ではないか、というのが訳者の感想でした。
巻末にリサールの書いた論文「フィリピンの今から百年間」と「フィリピン人の怠惰について」がついていますが、ちょっと大英帝国(当時は)を美化しすぎてて(隣の芝生は青い論理か)、フィリピンより文明の進んでいない(と思われていた)アフリカを貶めたような見方をしているのがリサールの限界かとも思いました。
あとカバーの裏に登場人物の紹介があるんですけど、いきなりのネタバレはやめようよ…
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