竹宮惠子著。中公文庫コミック版。全4巻。
古代エジプトを舞台に亡国エステーリアの美貌の王子サリオキスが、砂漠の鷹と呼ばれる英雄となり、宿敵ウルジナの王スネフェルと戦う冒険活劇ロマン。
「風と木の詩」で人気を不動のものにする以前の作なんですが、少年漫画顔負けのきつい展開に、文庫で全4巻と短いとはいえ、「天馬の血族」や「地球(テラ)へ…」にも見られた活劇の萌芽がすでに見られるのがすごいところです。
登場人物も主人公サリオキスを中心に、宿敵スネフェル、大男イザイ、忠臣ベヌ=ティト、妹ナイルキア、ヒロイン・アウラ=メサ姫、もう一人のヒロイン・アンケスエン、悪役ケス宰相、裏切り者サライなどなど、軟派から硬派、美女に美少女と色とりどりを揃えたのも著者のサービス精神の賜物かと思っちゃうぐらいに多彩です。
わしの好みとしては顔に傷があり、ごついながら、イザイのポジションなんか好きだったりするんですが、読んでいる時にいちばんドキドキしたのは、悲恋に終わってしまうスネフェルとナイルキアの展開で、作者がお気に入りだというスネフェルは、暴君から王、また狂王といったドラマチックな展開を見せまして、絶対に崩れない路線を貫いた薄幸の主人公に比べるとおもしろかったです。
あとスネフェルの婚約者でありながら、誰とも結ばれないアンケスエンが、作者お得意の知的な美少女という感じも良かったですな。
連載当初は「エステーリア戦記」なるものが公立の図書館からも問い合わせられたという今では考えられないブームも、読者の熱狂ぶりと作者の筋立てのうまさ、リアルさもうかがえて愉快なエピソード。
アニメ化とかされてませんが、舞台化ぐらいはされたのかもしれませんが、やはり、竹宮惠子おそるべしの傑作ロマンです。
[0回]
PR