竹中労著。かわぐちかいじ画。皓星社刊。
やっと読み終わった下巻です。
下巻ではクライマックスとして、関東大震災と震災後の混乱の中で起きた大杉栄、伊藤野枝、橘宗一の虐殺と、難波大助によるヒロヒト暗殺、アナキストたちの末路が描かれます。
大杉栄の虐殺犯人については、一応、甘粕正彦(元満映社長。震災時は東京憲兵隊)という説がまかり通っていますが、作者はここに疑問を投げかけます。
またさらに、関東大震災という、戦争に勝るとも劣らない未曾有の混乱期に、多数の朝鮮人や主義者が虐殺された事件についても、単なる無辜の人びとであったとするのは逆に革命を志した人びとには不当な判断であろうと断じます。
そうした信念のもとに描かれるテロリストたちの末路は、悲壮なまでにはかなく、崇高ささえ感じます。信念に殉じた人びとの格好良さは、万人に受け入れられないものだと思うんですが、なんちゅうの、今は見られないから、愛しく、切ない。大杉栄しかり、和田久太郎しかり、村木源次郎しかり、その格好良さにわしはほれぼれしてしまうのでした。
この後、日本は治安維持法という稀代の悪法の成立をもって、戦争と自滅への時代に突入していくのですが、是非、そこまで描ききってほしかったなぁと思うのであります。
帯の宮崎学さんの言葉がまたいかす。
「竹中労にとっての転向とは、闘うことを放棄したかどうかであって、群れから離れるかどうかではない。見事なまでの歴史に対する自覚である」肝に銘じて、また何度も読み直したい名著でありますよ。
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