船戸与一著。小学館刊。上下巻。
アフガニスタン帰りのロシア兵、通称アフガンツィが、ウラル山脈の麓の町エカテリンブルクで起こす血で血を洗う闘争。
「黒旗水滸伝」を半端に読み始めたのだが、図書館に返さなくちゃいけないし、ほかにも読みたいの溜まってるので上下巻を一気読み。あ〜、疲れた。
ソ連邦崩壊後のロシアの状況が、あまりに凄惨で救いがないのだけど、これは船戸さんのことだから、かなり事実なのだろうなぁ。いちばん救いがないと思うのは、アフガニスタンで同志となった4人が敵味方に分かれて戦うことではなく、彼らが戦って命を落としても、その上の組織が全て、美味しい汁を吸ってしまって、彼らの死が無駄死にに過ぎないってことだ。
船戸さんの小説は、「山猫の夏」みたいに読み終わってすかっとするのもあるんだけど、デビュー作の「非合法員」みたいに読み終わっても登場人物皆殺し状態で、血なまぐささとやりきれなさしか残らないのも多い。この話は明らかに後者だ。
でも、もっとやるせないのは、こうして性格が壊れてしまったアフガンツィたちの悲劇よりも、さらに内部分裂し、アメリカ軍に今も蹂躙されているアフガニスタンという国なのだ。
だから、わしは「
カブールの燕たち」を読んだ時に、そのあまりに一方的な西洋諸国からの見方を嫌悪し、今もアフガニスタンを苦しめる米軍を唾棄すべきものだと思うのだ。ちゅうか、オバマ大統領になって、少しはましになるかと思ったのに、ブッシュの時よりも増兵ってどうなのよって思うんだけど、それはまるで対岸の火事よろしく、日本という国にいて、平和を満喫しているわしが言うことではないのかもしれない。
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