住井すゑ著。新潮文庫刊。
「
にあんちゃん」という映画についてぐぐっていたところ、「綴り方兄弟」という映画について、この本が引っかかりまして、早速、密林で買い求めた次第。しかし、何だな、密林で買うと1円でも送料340円って詐欺みたいな値段だから、もう買うのやめよう! メール便で送ってきて340円もふんだくるってありえねぇ!
で「わたしの童話」なのですが、童話を収めたのは半分で、後半分が住井さんへのインタビューで構成されています。わしが気になった部分はインタビューに掲載されたもので、「綴り方兄弟」の映画を、教え子と部落の子どもたちと見に行った時の話でした。
「綴り方兄弟」のラストで、次男坊が風邪をこじらせて肺炎にかかります。その時、部落の子どもたちが泣き出したというのです。なぜかと聞いたら、人はいつか死ぬものだから、死ぬのはしょうがない。けれど、次男坊の死は貧乏のためだ。貧乏のために医者にかかれない差別に殺されるのだ。それが悲しいと言うのでした。
このインタビューには、古今東西の童話がぶった切りで住井さんに批評されています。「桃太郎」は財宝のために鬼退治に行くのはひどいとか、王様とか女王様が出ている童話は大したことないとか。住井さんというと過去の人かと思いきや「風の谷のナウシカ」まで出てきたのにはびっくり。王様とか女王様なんてのは本来、何もしない人間なんだから、そういう連中を美化するのはおかしいということでした。
前半の童話については、おもしろいのもあるし、つまらないのも。「農村イソップ」は全体的に説教臭くていまいちでした。おもしろかったのは以下。
「折れた弓」一見、平凡だけど、射るとすごい弓、満月が、金丸という金持ちに手に入れられて、見栄えを良くするために彫刻を入れられたら、かえって弓が折れてしまい、金丸も傷つけられた、という落ちがおもしろいです。
「空になったかがみ」ラストの3行がいい。でも、今の時代を眺めていると、その100年はまだ来ない100年だと思う。
「たなばたさま」わしも、七夕の伝説は仕事をさぼった織り姫と彦星だと聞いていましたが、奴隷のために7月7日にしか会えないという伝説の方がよほど美しく、天気になれと願い甲斐もあると思います。
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