金石範著。文藝春秋社刊。全7巻。
Ⅰ、Ⅱ巻に比べるといきなり厚くてびっくりしていたら、書き下ろしの第10章〜12章が入ったからのようです。しかも「
メニー・メニー・シープ」どころじゃない、
この後どうなるんじゃ〜!!! なところで終わっているので続編が書かれたのも宜なるかな。
この巻ではいよいよ南朝鮮労働者党を中心としたゲリラが蜂起、全島の警察署を襲います。ただし、当事者である南承之(ナム=スンジ)はほとんど登場せず、もっぱら第三者的な見方を貫き続ける李芳根(イ=バングン)の視点で物語は進みますので実際の戦闘シーンは書かれません。しかも全島で一斉に蜂起するはずだったのに不手際があり、李芳根の住む城内(現在の済州市)では蜂起が起きず、平穏な日常が続いている上、李芳根は妹のことでソウルに行ったりしているので、蜂起はどこか遠い世界でのことのようです。これは、著者自身が済州島に帰れない歳月が長く続き、当事者ではいられなかったことと無縁ではないのかもしれません。
ゲリラ対警察という対立が鮮明になっていくなか、鎮圧のために訪れた軍はゲリラとの和平を目指し、交渉に乗り出しますが警察の流したデマにより、一度はまとまりかけた和平案も頓挫してしまいます。再び始まるゲリラの襲撃、アメリカの主導による鎮圧、登場人物たちの暗澹たる運命を予感させて、後半、第Ⅳ巻以降に続きます。
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