岩波現代文庫。シオドーラ=クローバー著。
実は以前に手塚先生の短編で同じ話を読んだことがある。タイトルはたぶん「イシ」だったんじゃないかと思うんだけど、あれの原案があったとはなぁ。知らなかった。多少、少年漫画らしいアレンジがあるのと、イシのキャラクターがデフォルメされているのはあるが、ほぼ同じストーリー。
北米大陸からすべてのインディアンが駆逐されるか、居留地に詰め込まれた19世紀末期、一人のインディアンがカリフォルニアに現れ、保護された。とうに滅びたものと思われていたヤヒ族の最後の一人、後にイシと呼ばれる最後の野生インディアンであった。
第1部では冷静な筆致でヤヒ族が属していたヤナ族が滅ぼされ、イシとその家族だけになっていくインディアン蹂躙の歴史、第2部では文明社会に現れたイシの、わずか4年の暮らしを描く。
著者はアーシュラ=K=ル・グイン女史のお母さんで、文中に登場する人類学博士クローバー博士はお父さんである。「ゲド戦記」とか読むと、ゲドたちアースシーの人びとがいわゆる白人でないことに違和感を覚える人は多いのではなかろうか。その下地はこんなところにあるのね、と思ったりした。
人間とは同じ人間にここまで残酷なことができる。それは現代にも通じる物語である。
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