山本おさむ著。戸部良也原作。双葉社アクションコミックス刊。全10巻。
この巻のメインは前巻から続く熊本ろう学校戦です。熊ろうのキャプテンらしい野田くんが「僕たち、ムツゴロウになろう」と言って試合を承諾したように、両チームの選手が泥まみれになって奮戦します。
途中でピッチャーの正が投げられなくなるというピンチに陥りますが、武明が投手をやったことがあるというので試合は続行されます。
しかし、これが2話もかけてストライクを取るという非常事態でして、言うのとやるのとでは全然違うのを描きます。
ここで健が武明にはっぱをかけるシーンがとても良い。個人でやるスポーツではない野球ならではですが、孤軍奮闘する武明の後ろに7人の仲間がいる。そのことが彼らにとってどれだけ心強いものであったか、言葉には出さなくてもよく現れているシーンです。
さらに熊ろうとの試合が長引いたため、5回で終了しなければならなくなりますが、最後のバッターはやはり武明です。
同点のホームを踏むべく激走する武明。それがアウトかセーフか審判が言う前に、そこに松葉杖をついた安永が登場、さらに沖縄高野連の理事長まで現れます。名前は次巻で登場、中山さんです。
さて、福里と熊ろうの試合を見学した理事長は、改めて福里加盟の申請を高野連に届けると約束します。
泣き出した安永を改めて野球部に誘う武明。野球部のメンバーも安永を受け入れる気になってまして、ここがこの巻の号泣必須ポイントその1。野田くんたち、熊ろうのメンバーも温かい言葉をかけ、武明たちの輪が広がっていくのでした。
さて、京都の本社に戻った小田記者は、今度は東京へ出張します。福里が高野連に加盟できないのは彼らが聴覚障害者であるためで、それを拒絶する野球憲章のせいですが、実は難聴の野球部員がいるというのです。つまり、福里の加盟を拒否する野球憲章に根拠がないということを取材に行くわけです。しかも彼はすでに甲子園に行ったこともあると言います。
やがて小田記者の記事を読んで沖縄のメディアが動き出します。
この巻のもう1つのメインが光一の手術です。光一は亡くなった祖母の夢を見ていました。おばあちゃん子の光一は、おばあちゃんから言葉を習いました。その光一がおばあちゃんに手話を教えてあげると言ったところでこの巻は閉じますが、ここのおばあちゃんとのやりとり、おばあちゃんの死を知る光一といったところが第二の号泣ポイント。
ここは「わが指のオーケストラ」で、主要人物の一作が父の死がわからないままでいたところと対比して、泣けてきちゃうのでした。
その一方で光一くんにガールフレンドができます。病気で入院している加奈ちゃんです。彼女は強豪校の南星高校のマネージャーで、七夕の竹飾りがきっかけで光一と親しくなったのです。
後に福里が高野連に加盟するための試験試合の相手を南星が引き受けるのも、加奈ちゃんも一役買っていたのかなと思うのも楽しいところです。
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