曽根富美子著。全2巻。エメラルドコミックス刊。宙出版。主婦と生活社。
1991年に「月刊ボニータ・イブ」に連載され、当時もそれなりに話題になった(なので買った)漫画ですが、2010年代に入ってネットでも注目された、北海道・室蘭にあった幕西遊郭で生きた女郎と、その娘を描いたレディコミ史上に燦然と輝く傑作です。
たきがはは御茶ノ水駅前の小さな本屋の地下でこの本を買い、以後、20年以上も大事に持ち、たまに読み返し、そのたびに涙をしぼられた漫画だったりします。
第1部は女郎となった梅(夕湖)、芸妓となった武子(九条)を中心に物語は進みますが、辛い展開です。どうしても目は梅の方に行きがちなんですが、武子も心中騒ぎを起こしたり、子どもを殺されたりしており、それでも毅然としているところがまた美しかったり。
第2部は主役が梅の娘、道生(みちお)に移りますが、時代がすっかり戦争に入っています。ただ、道生のばっちゃん(父方の祖母)の存在が第1部にはなかった笑いも生み出しているのが、ばっちゃんの最期と相まってまたいい感じです。
「あの女は幸せよ…
おまえがいるから あの女は生きていける
決して母を不幸だとは思うな
おまえを産んだんだ……
世界一幸せな母親よ」
っていうばっちゃんの最期の台詞が号泣ポイント。
道生のために大河内家を去った梅と、その梅の代わりに全身全霊で道生を守ったばっちゃんという2人の母親が交錯するシーンです。
その一方で梅を愛する道生のお父さん、鉄の職人、大河内茂世さんも、梅の初恋の相手で、今は特高に追われる中島聡一も格好良かったりします。またすっかり道生とは縁がない九条(武子)ですが、意外な形で道生に会っており、ここら辺もうまいとうならされます。
今ではネットで手軽に読めるそうなので、是非、読んでもらいたい傑作です。
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