白石一郎著。文藝春秋刊。
金達寿さんの同タイトルと間違えられて借りてきてしまったのですが、本は何でも最後まで読む主義なんで読みましたけど、おもしろくなかったです。
いずれも時代小説で短編集です。収録作品は「妖女譚」「鎖ざされた海」「魔笛」「玄界灘」「霧の中」「さいごの奉行」「シャムから来た男」「航海者」でした。
このうち、「玄界灘」だけ鎌倉時代(北条氏)が舞台で、「鎖ざされた海」「魔笛」「霧の中」「シャムから来た男」は江戸時代だけどどこら辺かわからず、「妖女譚」「さいごの奉行」は江戸時代末期、「航海者」は江戸時代初期でした。
ちゅうか、それを言ったら、何か時代小説としては半端な感じで、そこがまずおもしろくなかったです。
「妖女譚」は妻を失って無気力になった男が、幕府が派遣した海外に渡航する船に乗ることになり、到着した上海で妻の生まれ変わりと信ずる女性に会い、そのまま下船してしまった話でしたが、やたらにだらだら長い(と言ってもたかが40ページですが)上、「妖女」なんてほどの妖女でもなく、高杉晋作とかも乗船してたらしいけど、あんまり名前出す必要性なかったよね?
「鎖ざされた海」は行方不明になった廻船の乗組員が帰ってきたけど、前にも帰ってきた者がいて、その証言に矛盾が見つかり、実は彼らは皆、呂宋(ルソン)に流れついていて、現地に残った者たちもいたけど、何しろ日本人の海外への渡航を禁じていた鎖国時代のことなんで、帰った者たちも一生、閉じ込められて、彼らの出身地だった廻船業者の港町もさびれてしまったという話。これも真相が明かされるまでがだらだらって感じで、戻らなかった船乗りたちに感情移入する黒田藩の役人が一応、狂言回しになっているものの、誰が主人公とも言えない、だらだらした話でした。
「魔笛」は、都から落ちてきた公家の娘が猟師に嫁ぐことになり、その笛の力で獲物を呼び寄せたために猟師はいい腕前を誇るようになったけど、妻が亡くなった途端に鳴かず飛ばずになっちゃって、娘が笛の練習をして、さてと山に出かけたら、山の主と呼ばれる狼に襲われて、猟師は殺されちゃいました、な話。
で目当て違いだった「玄界灘」は、いわゆる元寇の時代の話で、乱暴者の男が蒙古軍と戦って撃退したけど、故郷は無惨に破壊され、惚れた女をさらわれたってんで蒙古軍を追いかける話。
「霧の中」は鎖国中の日本でただ1つ開港していた長崎に特有のお役目、遠見番(異国船の出入りを見はる)の名人と言われた男が抜け荷船が見えるとか見えないとか、心の眼で見るとか言う話。
「さいごの奉行」は長崎の最後の奉行となった河津伊豆守祐邦が長崎に赴任してから去るまでの話。一緒に洋行(パリまで行った)したという部下の大二郎という男がいちいち日本と西欧を比べて日本の貧弱さを嘆くのが卑しい。
「シャムから来た男」は清国の船に乗ってアユタヤから来た日本人の子孫が墓参りと、母の生まれ育った町を見たいといって、同席した遊女があれこれと手を回して願いをかなえさせてやろうとする話。
「航海者」は日本に初めて来たイギリス人、ウィリアム=アダムスこと三浦按針の話なんだけど、小説書いてんだか資料引用してんだか、内容がすごい中途半端でいちばんおもしろくなかったです。
お口直しに一緒に借りてきた「暴力の経験史」を読み始めたんですが、これ、何で読もうと思ったんだっけ?(爆
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