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されど平穏な日々

日々のつぶやきと読んだ本と見た映像について気まぐれに語るブログ。Web拍手のメッセージへのレスもここ。「Gガンダム」と「ジャイアントロボ」への熱い語りはオタク度Maxにつき、取り扱い注意! 諸事情により、コメントは管理人が操作しないと反映されません。時々、サイトの更新情報など。

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罪と罰の彼岸(新版)

ジャン=アメリー著。池内紀訳。みすず書房刊。

ホロコースト物続いてます。

サブタイトルは「打ち負かされた者の克服の試み」です。オーストリア出身で、最終的にベルゲン=ベルゼン強制収容所で解放された著者は、戦後はベルギーに住み、ドイツ語で発信し続けましたが1978年、ザルツブルグで自死しました。

この著作は1964年、フランクフルトで始まったアウシュヴィッツ裁判(映画「顔のないヒトラーたち」の扱ってる裁判)が始まった年から書かれたエッセイで、「はしがき」2つ(初版と新版)、「精神の限界」、「拷問」、「人はいくつ故里を必要とするのか」、「ルサンチマン」、「ユダヤ人であることの強制、ならびにその不可能性について」のパートに分かれています。

失礼ながら「はしがき(新版)」読んでて思ったのは、オーストリア系ユダヤ人である著者の意識が及ぶ範囲というのはせいぜいがベトナム止まりで、その先の中国や朝鮮半島、日本といった極東には届かないのだなということでした。なのでナチス・ドイツにも匹敵する日本がなした数々の戦争犯罪は比較のためにも言及されません。
あと、この前に読んだ「新版プリーモ・レーヴィへの旅」でプリーモ=レーヴィがなにげに示してしまった「野蛮なピグミー」という差別意識を著者が言及してましたが、わしがこの2つの文を読んで思うのは、欧米人は割と極東には無関心なんじゃないかなということです。なのでニッポンの犯罪には追求がナチスほど厳しくない。
もっとも、その欧米でもヒロヒトが日本最大の戦犯でありながら裁かれなかったというのは忘れられなかったらしく、ヒロヒトの訪問にはかなり反対デモとか巻き起こったはずでしたが、その後のアキヒトになるときれいに忘れられているのは、だいぶ関心が薄いんだろおらな感じです。

ただ、この分析はまったく的外れで、もしかしたら徐京植さんが言うように欧米人と日本人といういわゆる植民地の宗主国同士が持つ国民主義というやつのせいで、日本人に対しては共犯意識みたいのがあって日本がなした戦争犯罪への追求はナチスほど厳しくないだけかもしれませんが、朝鮮半島や台湾ならば元植民地とも言えるけど、中国はどうなんだよと思ったけど、中国は欧米列強がいいようにしてた時期があるんで、これも共犯者意識なのかもしれません。

あと、時代が1970年代と古いせいか、著者はイスラエルを全面的に庇っているのですが、プリーモ=レーヴィはイスラエルのなしたホロコーストに近い犯罪には批判的だったことを思うと、まだイスラエルという国は故郷を失った特に東欧系のユダヤ人にとっては今度こそ約束された故郷と思えていたのかもしれないので、まぁ、そこは突っ込まないでおきます。わしもイスラエルが現在のようながちがちのシオニズム至上主義になったのかは詳しくないので(たぶん今のネタニヤフから?)。

ただ「ルサンチマン」のパートに入りますと、わしもいちいちナチス・ドイツを日本に読み替えちゃって、もう、著者の言い分には全面的に同意します。全然否定するつもりはありません。
特に「ドイツ人は自分たちこそ犠牲者だと考えていた(128ページ)」以降の段落は、まるっと「食糧の欠乏を耐えたわけだし、いたるところの町々に爆撃を受けたし、2つの原爆まで落とされた。戦勝国による東京裁判はもとより、ソ連による「満州」からの避難民襲撃まで甘受した」とか読んじゃった日には、まぁ、しょうがないのです。
というか、わしは別に「ただ涙を流すのではなく “分断する世界”とアウシュビッツ」以来じゃなく、その前からナチス・ドイツの行ったホロコーストと日本が行った南京大虐殺や「従軍慰安婦」はまるっと地続きのものだと考えているので、逆にホロコーストをまるで対岸の火事のように「ユダヤ人可哀想」とか「ナチスって酷い」とかぬかすような日本人はいっさい信用しません。あと「ナチス・ドイツのような」とか言って例える奴とか。ニッポン人にはニッポンという世界最低のお手本があるだろぉぉぉぉ!!!な気持ちです。ここで大日本帝国と日本を区別してないのは地続きで、別に生まれ変わったわけじゃないよねという意識の発露なんで指摘は無用のことよ。むしろ、肩書きが偉そうであればあるほど、そんなことぬかすような奴は歴史修正主義のレッテルを貼りつけます。
なんで、わしがホロコースト物を読むのは、大昔は単純に過去にあった酷いこと、悲惨なことへの興味でしたが、現在はそれと同じくらい、あるいはもっと強力に日本のなした犯罪を追求すべきであると思っているので、何かと日本が頭を過ぎっちゃうのも、ナチスの犯罪が日本の犯罪に置き換わるのも当然ちゃ当然の成り行きなのです。それはどっちも人類に犯した犯罪であることに変わりはないわけなので。
だから著者が「まわりでこぞって合唱される平和の叫びに同意できない。その声は意気揚々とこう言うのだ。うしろを振り返るな。前を見つめよう。愛にみちたすばらしい未来を!」と言うのは、差別される朝鮮の人たちに仲良くしようぜとどっかの馬鹿が言ったのと同じことです。
また著者が「最良の場合、同じことを二度と起こさないためにだろうが、私にはごめんである。私のルサンチマンは承知しない。犯罪者にみずからの犯罪に対するモラルの現実性を気づかせること、いや応なく自分の行為の真実に対面させること」と言うのにも全面的に同意します。なぜって、それこそ、今の日本では未だに行われていないことですから。
著者はさらに続けます。「社会のなかで自分の個性をすて、ただ機能とのみ化したい人々、すなわち鈍感な人であり無関心な人であるが、彼らはことごとに宥(ゆる)したがる。起こったことは起こったことであって、やむを得ないという」と。今の日本はこれより狭小です。なかったことにして水に流そうとさえしていない。そんなことは許されないのです。
そして極めつけ、「もし1943年に国民選挙があったとしたら、人々はこぞってヒトラーに投票したはずである。千に1つのまちがいもない」。ヒトラーを天皇に置き換えたら? 日本の愚かしさが見えてきませんか?
著者の告発は次の世代にも向けられます。戦後生まれの若者たちや、戦中は未成年だった若者たちです。日本の敗戦から74年目の今年、ますます当時を知る世代は亡くなり、もはや日本だろうがドイツだろうが、どこの国だろうが、9割を越しているでしょう。そんな「戦争を知らない子どもたち」にまで責任を問うのかと言う声は日本でもドイツでも絶えることはありません。けれども著者は言います。「高飛車に罪のなさを主張してもらいたくないということだ。ドイツ人が若者も幼児もこぞって一切の歴史と縁切りにならないかぎり、そのかぎりはあの十二年に対する、そして今なお終わっていない歳月に対する責任がある」と。
またドイツも日本もそうですが、むしろヒトラーは自殺しましたが、のうのうと天寿を全うしたヒロヒトを抱えた日本のがずっと悪いと思いますが、「ドイツ人はおそらく次の世代にも及んで、自分たちみずからが卑劣な支配権力を打ち倒したわけではないことを忘れたりしないだろう」という著者の主張を読むと、その卑劣な支配権力の子孫をありがたがる日本人の愚かさは、もはやどんな自浄作用もこの国には働かないだろうと思わざるを得ません。そんな期待、するだけ無駄ってもんです。
そしてトーマス=マン(アメリカに亡命していたドイツ人作家)の言葉を引用しつつ、「(1933年から1945年にかけてドイツで出された本はすべて、なんらの価値ももたず、手にとるべきではないように思えるのです。血と汚辱の臭いがしみついています。すべて破棄されてしかるべきではないでしょうか)本にかぎらずこの12年間に生み出したすべて、それをドイツ国民が精神的に破棄するとき、否定の否定にひとしい。高度に建設的な、大いなる行為にあたる。このときようやく主観的にはルサンチマンがハタされ、客観的にはそれがもはや無用のものとなったわけだ」と述べますが、次の段落では「とてつもない夢想」と片づけてもいます。

その後の「ユダヤ人であることの強制〜」のパートは、ユダヤ人の歴史的な特殊性から日本での例には置き換えづらいのでそのまま読みましたが、気になったところが1ヶ所だけあったので引用しますと「歴史的な、また社会に根ざした精神現象としての反ユダヤ主義とユダヤ人問題は、私に関係することではないではないか。それはまったくもって反ユダヤ主義者の問題であり、彼らの恥辱、彼らの病いにほかならない。反ユダヤ主義者がみずから克服すべきことであり、私ではないのである」。これ、まるっきり日本人のことと読めますよね。

そんな感じで、ホロコースト物はもういいかなと思ってましたが、やはり得るものはなかなか多かったです。帰還者の言葉は重いです。

いつものように飯を食いながらでなく、洗濯とお茶しながら一気に読んだので感想も一気に書きました。引き続き、プリーモ=レーヴィの著者を読む予定です。

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