監督:ジアード・クルスーム
見たところ:桜坂劇場
レバノン・ドイツ・シリア・カタール・アラブ首長国連邦、2017年
復興著しいレバノンの首都ベイルートで高層ビルの建築に携わるシリアからの亡命者たちを描いたドキュメンタリーっぽい映画でした。
ただ、製作国にシリアって入ってますけど、監督がシリアから亡命した元兵士で、最後にホワイト・ヘルメットに謝辞なんか捧げられちゃってるのを見ると
プロパガンダ臭い映画です。
なんで、シリアが入っててドイツもあるけど、サウジアラビアとかイギリス・アメリカ・フランスはないから大丈夫かなぁと思って見に行ったわしの判断基準の甘さを思い切り罵りたい気分です。
あと、監督の趣味なんか知りませんが、登場人物の誰ともわからない若者(シリアからの難民)の語りがぽつぽつ入っているほかはほとんど語りと音楽がなく、映像だけで済ませる展開はたぶんに芸術的でした。なのでドキュメンタリーっぽいと書きました。
シリアからの労働者たちは夜7時以降は外出を禁止され(そういう垂れ幕がかかってる)、建築中のビルの地下に住むというタコ部屋もさもありなんな暮らしをさせられ、テレビを見たり、スマホをいじったりはするものの、個々の会話は皆無で食事も作ったんだか提供されたんだか不明で、しかも24時間拘束されている。12時間は仕事。後は外出禁止で。
となると、この映画はそういうシリア難民か移民の労働者たちの苦難を描くのかと思いきや、個々のインタビューはなく、観念的な主人公っぽい若者の独り言が最初から最後まであるだけで、むしろフィクションのレベルに入っている。
また町を破壊し尽くすシリア内戦(そう言ってないけど映像の新しさと語りとの関連からシリアで間違いないでしょう)の様子も、日本も含めた西側諸国では完全にアサド政権が悪者にされていてホワイト・ヘルメットが正義の味方扱いで実際に気取っているわけですが、実質はその逆で、そもそも内戦ならば他国が首を突っ込む理由といったら利権以外にないわけで、そうなるとアメリカを初めとする西側諸国の言い分などロシア中国両国よりもさらに信頼性が低いのが昨今の常識なので、上でプロパガンダ臭いと書きましたが、むしろ
プロパガンダだと言っちゃってもいいと思いました。
ましてやネットで例によってスタッフを検索していたら、
映画「セメントの記憶」 世界が称賛する理由|けさのクローズアップ|NHK おはよう日本なんて記事まで見つけてしまい、完全に
プロパガンダですね、これ。NHKの有用性は嘘発見器にしかないのですよ。
桜坂劇場はわりとわし好みの映画もやってくれる単館系に偏った(そのくせ「ダーウィンが来た!」とか「コードギアス反逆のルルーシュ」みたいな大衆媚びもかかるけど)映画館なんですが、先日の「
バハールの涙」とか「
ヒューマン・フロー/大地漂流」とか、ましてや「
天皇と軍隊・国家主義の誘惑」みたいな駄作かけちゃったり、スタッフの紹介レビューがいまいちだったり、ましてや現在最悪のレイシズム国家イスラエルからのアーティストを絶賛してたり(この点のおかしさはイスラエルを大日本帝国なりナチス・ドイツなりに置き換えれば容易に理解できるはず)するんで、いまいち信用がおけません。まぁ、見るのはわしの勝手なんで、そういう眼を養うよう、気をつけよう。
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