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されど平穏な日々

日々のつぶやきと読んだ本と見た映像について気まぐれに語るブログ。Web拍手のメッセージへのレスもここ。「Gガンダム」と「ジャイアントロボ」への熱い語りはオタク度Maxにつき、取り扱い注意! 諸事情により、コメントは管理人が操作しないと反映されません。時々、サイトの更新情報など。

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トレブリンカ叛乱 死の収容所で起こったこと 1942−43

サムエル=ヴィレンベルク著。近藤康子訳。みすず書房刊。

タイトルのとおりの内容です。絶滅収容所トレブリンカにいた著者が、そこに移送された経緯からトレブリンカでなぜ生き残ったのか、何をさせられていたのか、そしてトレブリンカで著者たちが起こした叛乱の成り行きと、その後、著者がワルシャワに向かい、両親と再会した後でワルシャワ蜂起に加わり、その敗北までです。

著者のサムエル=ヴィレンベルク氏がトレブリンカに移送されたのは1942年の10月、19歳の時でした。父親は画家でワルシャワ、母親は工場で働いており、著者の姉と妹と同じチェンストホヴァにいましたが、著者だけオパトゥフのゲットーで暮らしていたそうです。

トレブリンカに移送された著者は、そこで幼なじみのアルフレッドと再会し、彼の誘いで特別労務班員となり、7000人のなかで、たった一人、生き延びます。
それからトレブリンカで叛乱が起こった1943年8月までの10ヶ月間、著者は特別労務班員となって生き延びるのです。

著者がトレブリンカから逃走してから40年も経ってから書かれたためか、その記述は冷静なものです。また40年も経ったとは思えないほど詳細でアウシュビッツ・ビルケナウのゾンダーコマンドとはまた違った作業はいろいろな驚きと発見に満ちています。

SHOAH」に登場した人のなかでフランツ=ズーホメルの名前だけ再登場でした。ユダヤ人の金や宝石を扱うゴルトユーデンと呼ばれるユダヤ人たちをまとめていたのがズーホメルだそうです。トレブリンカの話はしてたけど、自分の仕事については話していなかったな、そういや。あと映画の中でトレブリンカで唄わせた歌を唄うシーンがありましたが、その歌詞の日本語訳も掲載。「トレブリンカ賛歌」というそうです。悪趣味なタイトルつけやがりますネ。

アブラハム=ボンバ氏は登場しませんでしたが、似たようなユダヤ人の女性たちの髪を刈る床屋の話はありました。

リヒァルト=グラツァール氏も登場しませんが野戦病院はしょっちゅう言及されてます。特別労務班員も別に命が保証されたわけではなくて、SSやウクライナ兵の気まぐれによって、しょっちゅう補充しなければならなくなったそうです。すなわち、それだけ殺される人が多かったそうです。殺されたユダヤ人たちの遺体は野戦病院に掘られた穴蔵に放り込まれたとか。ナチスが自分たちの罪を隠蔽するためにショベルカーで遺体を掘り出して、念入りに焼いていたとか。

トレブリンカは絶海の孤島ではなく、ポーランドの一寒村です。ワルシャワから北東に100kmぐらいのところにあります。アウシュビッツ・ビルケナウはワルシャワから200km以上離れています。いや、懐かしい。
つまり、トレブリンカにしてもアウシュビッツ・ビルケナウにしても周囲が無人ということはなかったのですよ。ポーランド人の村があった。でも、彼らはそこで何が起こっているかを知りながら、そのために戦ったり、ドイツ兵に抗議をすることはしなかった。ポーランド人はユダヤ人を憎んでいたから、と著者は言います。
そのために、ワルシャワ蜂起(1944年)に加わった著者は、ユダヤ人ということである組織にいられなくなり、別の組織(共産党系)に移らなければなりませんでした。ワルシャワをナチスから解放するための戦いでも行われた人種差別。わしらが想像している以上にユダヤ人を嫌ったり、憎んだりする気持ちはヨーロッパ、特に東ヨーロッパでは根強く、そこに楔のように反ユダヤ人主義を持ち込んだナチスの巧妙さは日本のそれとは全然別物として語られなければならないでしょう。

なかなか良い本だと思いましたが、訳者が敗戦の昭和20年を強調したいあまり、今年(2015年)を昭和90年と書いたのはどうかと思いました。

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