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されど平穏な日々

日々のつぶやきと読んだ本と見た映像について気まぐれに語るブログ。Web拍手のメッセージへのレスもここ。「Gガンダム」と「ジャイアントロボ」への熱い語りはオタク度Maxにつき、取り扱い注意! 諸事情により、コメントは管理人が操作しないと反映されません。時々、サイトの更新情報など。

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落日の死影

船戸与一著。小学館。

船戸さんが外浦吾郎名義で原作をいくつか書いていた「ゴルゴ13」シリーズのノベライズというか原作というか小説です。Wikiで調べたら、あと2冊あるそうで小説化したのもこれだけだそうです。

死霊の泉と呼ばれる猛毒の抹消を巡り、CIAと元KGBの元諜報員と、それぞれの組織に雇われたゴルゴの活躍を描く。

なんですが、「ゴルゴ13」というのはどんなプロが出てもゴルゴを越えることはないわけでして、そこがおもしろくないんで、わしはたまにしか読んでないのですよ。まぁ、全巻読破するには多すぎて気力が萎えるという問題もあるわけですが、何をやってもゴルゴ最強なんで、どんな事件があってもゴルゴが解決しちゃうという展開なんで、どんな強敵もゴルゴの引き立て役に過ぎないというのが退屈でした。

CIAと元KGBの元破壊工作員とか、最強のハニー・トラップとか、ネタはそれなりにおもしろそうなんですが、船戸さんの著作に共通の世界の辺境での扮装からアメリカとか先進国の帝国主義を抉るような展開でもなかったんで、まぁ、こんなものでしょう。

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残夢の骸 満州国演義9

船戸与一著。新潮社刊。

いよいよ最終刊です。この本が発行されてから2ヶ月ほどで船戸さんも逝ってしまいました。完結するまではという思いと、完結してほっとしたのかなぁなんて思いました ( ´Д⊂ヽ

この巻では1944年〜1946年が語られます。そういう点では1巻で1年という今までのパターンから外れているのですが、ボリューム的に特に不足という感じはせず、最後まで書き切った感じです。

次郎は前巻のラストで生きながら蛆虫に食われるという悲惨なことになっていましたが、あのまま意識を失い、部下にとどめを刺され、遺髪を満洲まで持ってきてもらいました。お兄ちゃ〜〜〜ん 。・゚・(ノД`)・゚・。
そして、初めて揃った3人兄弟+αで、通化に石碑を作り、そこに遺髪を埋めることになりました。部下の人もインパール作戦で死にかかっていたので、とても次郎の遺骨というわけにはいかず、やむなく髪を切ってきたそうです ( ´Д⊂ヽ
こうして、1巻から欠かさず登場してきた敷島兄弟に、ついに欠員が出てしまいました。次郎の死は予想どおりなんですが、いちばん好きなキャラだったんで残念です。

硫黄島、東京大空襲、沖縄戦、2発の原爆、ソ連軍の参戦を経て、ようやく降伏する日本。ここら辺はソ連軍以外は登場人物が特に絡んでいないのでさらっと事実が語られます。

太郎は最後まで満洲国の官吏でしたが、その責任を問われてソ連軍に連行され、シベリアに送られてしまいます。意外な展開です。太郎は生き延びると思っていたのですが…。さらに1巻から欠かさず登場した間垣徳蔵が、実は敷島兄弟と従兄の関係にあることが判明、ついでに太郎の年齢が1945年の時点で47歳とわかりました。
ううむ、間垣徳蔵が従兄とは…。敷島兄弟は長州の出身ですが、その祖父が会津城の攻防に参戦、現地で陵辱した会津の女性が間垣徳蔵の祖母に当たるそうです。あらまぁ。さらに、4巻だったかで四郎に殺された特高の刑事も親戚筋と判明、意外と世界は狭いものですが、間垣徳蔵が敷島兄弟にしつこく絡んできたのもわかるような感じです。
ただ、シベリアに送られた太郎は、ここで間垣徳蔵と再会しますが、だんだん誇りを失っていってしまい、とうとうおやつほしさに同じ収容者を売ってしまいます。その罪を負った間垣徳蔵は殺され、太郎も自死するのでした。奥さんの生死も不明のままで、娘だけは三郎の嫁の実家で育てられているので、そのまま養女にされそうですが、太郎の死も日本には伝わらないのでしょう。最後の最後に誇りを取り戻したというか、自分が他の兄弟に比べて何の苦労もしていないという自省のもとで自殺を選んだ太郎は、船戸作品には珍しいタイプかと思いました。

三郎は満洲国の滅亡後も関東軍のままでいますが、部下とともに流れ流れて、最後に関東軍の司令部が置かれようとしていた通化に行き、そこで八路軍と国民党軍の対立を知り、蜂起する日本人に加勢して、戦死します。その前に三郎が助けた開拓民の少年が四郎に託されることになりますが、四郎はこれにて兄の死を知り、三郎の遺骨は次郎の石碑の隣りに埋められるそうです。
順風満帆な三郎でしたが、最後まで軍人を貫きました。ただ、妻子のことはちっとも描写がなくて、満洲の滅亡によって自分の立つ瀬も失ってしまったのか、日本に帰る気はさらさらなかったようなのが気になります。まぁ、兄弟の誰よりも真っ直ぐに軍人一筋に生きた人なんで、それ以外の生き方はたとえ妻子と一緒でも考えられなかったのかもしれません。

四郎は予想どおり生き延びました。しかも三郎から頼まれた、開拓民の少年を広島の祖父のもとまで連れていくという仕事まで果たしました。途中でソ連軍の女性に逆レイプされたり、かつて開拓民だった時に一晩だけ関係のあった女性と再会したりしてますが、最後まで変わらなかった感じです。まぁ、あんまりいい意味ではありませんが、三郎とは別の意味でぶれない人生だったのかなと。
ただ、日本に帰るには帰りましたが、その後のことはまったく思いつかないようで、そんな四郎で物語も終わっています。

1冊ずつ読んできたんで、「火山島」のように大作を読んだ〜という感じはちょっと薄いように思います。ただ、1930年代から1945年までの満洲を舞台に描ききったこの物語は、やはり大作の名にふさわしく、あの時代の日本の一面を切り取って見せているのは間違いありません。そういう意味でも、この物語は最後の船戸与一さんの小説であり、間違いなく代表作に数えていいのだと思いました。

山猫の夏」のような胸のすく小説ではありませんが、満州というでたらめの国を語る時、欠かせない小説になってもらいたいと思います。

改めて船戸さんのご冥福をお祈りします。素晴らしい小説の数々をありがとうございました!

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南冥の雫 満州国演義8

1942年の第8巻です。

太郎と次郎が急転直下な展開ですが、三郎は所属が変わったけど相変わらずで、四郎は軍属になったけど、それほど大変ではないです。

太郎はとうとう奥さんに浮気がばれてしまいました。その兆候は前からあったのですが、奥さんの桂子さんは浮気相手をぶっ殺し、精神が破綻、日本に帰されて精神病院に入院です。一人娘は里帰りした三郎の嫁の実家に預けられました。太郎はすっかり小物感がぷんぷんで、もともと小心なところはあるんですが、知り合いから「老けた」と言われて、モノローグに入れば、妻への自責の念でいっぱいですが、取り返しはつきません。

次郎は悪名高いインパール作戦に参加、6巻ぐらいから行動をともにしてきた戦友を失ったばかりか、自身もマラリアにかかり、とうとう生きながら蛆に食われる事態に陥ってしまいました。武闘派は死にやすい船戸小説とはいえ、1945年の満洲滅亡まで描かれるのは間違いないと思いますので、次郎にはそれまで生きていてほしいんですが、まさかの敷島兄弟、最初の脱落者になるんでしょうか? 次郎が意識を失ったところで8巻は終わっちゃったんで、次巻が待たれるところです。英軍の捕虜になるとか… その方が生き延びやすそうですが、何とか助かってほしいものです。

三郎は関東軍の憲兵隊からソ連との国境付近の部隊に配置換えです。その前に見え見えの死亡フラグ(帰ったら結婚するんですという…)を立てた部下を失い、これで失った部下は3人目な上、太郎の妻が殺した浮気相手を埋める手伝いまでしてまして、心がすさんできてます。兄弟のなかでは順風満帆な人でしたが、汚いところを見ることも多い立場なんで、間違いなく最後まで生きてはいないでしょうが、まだ、その精神力で踏ん張ってる感じもあります。まぁ、兄貴の件がなければ、それなりに順調だしな。

四郎は満映から陸軍の情報部に配属、言語が得意なもんで、翻訳とかやらされてます。彼女には振られちゃいましたが、わりとさばさばした感じで、間違いなく最後まで生き残りそうな感じです。

この巻ではミッドウェーでの敗戦もあり、日本の旗色が悪くなりますし、ドイツもソ連攻めを諦めるところです。それでも戦争を止めようとしない東条英機や、インパール作戦の指揮を執った牟田口廉也に批判的な描写が目立つのは、敗色が濃厚になったところで戦争を止めておけば、日本列島の焦土も、原爆も、沖縄もなかったのに、という船戸さんの静かな怒りを感じないでいられません。

敗戦まであと3年、敷島兄弟と真の主人公である満洲の行く末を見守りたいと思います。

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新宿・夏の死

船戸与一著。文春文庫刊。

新宿を舞台にした連作短編集。

主人公が引退した狩猟愛好家、おかま、高利貸し、右翼の鉄砲玉、棋士崩れ、ホームレス、調理師、元婦人警官とばらばらで、それぞれの展開もバラエティに富んでいて飽きさせません。

わし的には船戸与一初のおかま主人公「夏の渦」がいちばんおもしろかったです。終わり方もいちばんすっきりしてたし。

主人公やそれ以外の登場人物の死で終わる「夏の黄昏」「夏の流れ」「夏の残光」「夏の曙」、死んではいないけれどもっと悪い終わり方の「夏の星屑」は後味が悪かったです。特に「夏の星屑」はわかりやすいフラグを立てちゃったのが興ざめでした。女性が主人公というの船戸小説ではなかったと思うのですが、ちょっと無理があったかも…。

「夏の雷鳴」「夏の夜雨」は主人公も罪を犯しているのですが、よりあくどい連中を訴えるという終わり方は、この中ではすっきりしてました。

いや〜 まさか、船戸さんでおかまが主人公の小説読めると思いませんでしたよ (・∀・)

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雷の波濤 満州国演義7

船戸与一著。新潮社刊。

2年チェックを怠っていたら、2冊も出てました。いよいよ、この巻にて日本はアメリカと開戦します。各登場人物が辛辣に語る政権への批判は船戸さん自身の意見も混じっているのでしょうか。

太郎は相変わらず妾宅に溺れる日々。そこが弱みですので、愛人と運転手につけ込まれ、金をせびられていますが、それ以上に問題なのが嫁の精神に異常を来していること。満州国の崩壊を待たずに破滅に陥るんでしょうか。まぁ、狂言回しなんで、最終巻まで生き延びると思いますが、無事に日本に帰れるのか怪しくなってきました。
次郎は無頼の徒なのは相変わらずですが、特務機関にこき使われるのが嫌になったのか上海を離れ、香港へ向かい、さらにマレー半島に向かいます。そうは言っても眼帯の日本人という目立つ容貌はマークされており、同時に金でどんなに荒っぽいことも引き受けるという姿勢が好まれているようでインド人の娘たちを鍛えたり、陸軍中野学校(実在のスパイ養成学校)出身の工作員と組んで、やってることは変わりません。
三郎がいちばん順調な感じで憲兵隊の花形として山下泰文のマレー侵攻並びにシンガポール攻略に従い、しばらく満州を離れてます。次郎と同じ地域にいるのですが、なかなか兄弟の邂逅はないですね。義兄(嫁の兄)が持病の悪化で日本に帰るという話はあるものの、家庭も安泰で出世街道を順調に走ってます。
四郎は引き続き満映に勤務ですが、理事長の甘粕が別の仕事を兼務してしまったために暇です。もともと文学青年ではありますが、脚本にさしたる才能があるわけでもないので、特務機関にちょっと利用されつつ、日米の開戦に胸の高鳴りを覚える日々。

で、前巻の感想を書いた時に「太郎=40代後半、次郎=40代前半、三郎=30代、四郎=20代後半ぐらい」と思っていたんですが、四郎が7巻の時点で33歳であることが判明。三郎が30代後半と修正しなければならないようです。うーん… 四郎、そんなに歳取ってたのか… 1巻でだいたい1年経つんで、1巻当時は26、7歳ぐらいだったのかもしれません。それにしては青臭かったけど…

8巻も借りようと思ったら貸し出し中だったので、船戸小説で未読の「新宿・夏の死」を借りてきました。

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