1942年の第8巻です。
太郎と次郎が急転直下な展開ですが、三郎は所属が変わったけど相変わらずで、四郎は軍属になったけど、それほど大変ではないです。
太郎はとうとう奥さんに浮気がばれてしまいました。その兆候は前からあったのですが、奥さんの桂子さんは浮気相手をぶっ殺し、精神が破綻、日本に帰されて精神病院に入院です。一人娘は里帰りした三郎の嫁の実家に預けられました。太郎はすっかり小物感がぷんぷんで、もともと小心なところはあるんですが、知り合いから「老けた」と言われて、モノローグに入れば、妻への自責の念でいっぱいですが、取り返しはつきません。
次郎は悪名高いインパール作戦に参加、6巻ぐらいから行動をともにしてきた戦友を失ったばかりか、自身もマラリアにかかり、とうとう生きながら蛆に食われる事態に陥ってしまいました。武闘派は死にやすい船戸小説とはいえ、1945年の満洲滅亡まで描かれるのは間違いないと思いますので、次郎にはそれまで生きていてほしいんですが、まさかの敷島兄弟、最初の脱落者になるんでしょうか? 次郎が意識を失ったところで8巻は終わっちゃったんで、次巻が待たれるところです。英軍の捕虜になるとか… その方が生き延びやすそうですが、何とか助かってほしいものです。
三郎は関東軍の憲兵隊からソ連との国境付近の部隊に配置換えです。その前に見え見えの死亡フラグ(帰ったら結婚するんですという…)を立てた部下を失い、これで失った部下は3人目な上、太郎の妻が殺した浮気相手を埋める手伝いまでしてまして、心がすさんできてます。兄弟のなかでは順風満帆な人でしたが、汚いところを見ることも多い立場なんで、間違いなく最後まで生きてはいないでしょうが、まだ、その精神力で踏ん張ってる感じもあります。まぁ、兄貴の件がなければ、それなりに順調だしな。
四郎は満映から陸軍の情報部に配属、言語が得意なもんで、翻訳とかやらされてます。彼女には振られちゃいましたが、わりとさばさばした感じで、間違いなく最後まで生き残りそうな感じです。
この巻ではミッドウェーでの敗戦もあり、日本の旗色が悪くなりますし、ドイツもソ連攻めを諦めるところです。それでも戦争を止めようとしない東条英機や、インパール作戦の指揮を執った牟田口廉也に批判的な描写が目立つのは、敗色が濃厚になったところで戦争を止めておけば、日本列島の焦土も、原爆も、沖縄もなかったのに、という船戸さんの静かな怒りを感じないでいられません。
敗戦まであと3年、敷島兄弟と真の主人公である満洲の行く末を見守りたいと思います。
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