船戸与一著。新潮文庫刊。
話が大きく動き始める第2巻です。
各巻の話がいつもポーランド救国貴族団のマホウスキから始まるのがスケールの大きさを表している感じです。時代はフランス革命前夜、ロシアはエカチェリーナ2世の時代といったら、あの時代か〜と思わずにいられない時に、極東の島国でも大きな動きがあったのだという世界的な視界が気持ちいいのです。
もっとも、ツキノエに約束した銃は、そのフランス革命のために怪しくなっていきます。
そして、アイヌの味方のような行動をしてきた葛西政信が、ここにきて、いきなりその正体をつまびらかにし始めます。彼はアイヌたちを戦いに煽り、そのために同じ和人まで殺すのです。しかし、そうとは知らぬハルナフリの幼なじみキララは、この巻にて政信の妻となってしまいます。後の悲劇が予想されます。政信本人は「自分は地獄に堕ちてもいい」とか覚悟してるわけですから。
洗元は相変わらずのところもありますが、養生所を開きます。アイヌの集落の中に。でも、ハスマイラとの噂を立てられたために彼女の夫ゲンノカリが自殺してしまい、ハスマイラとイコトイの集落へ移らされました。
そして、ついにアイヌたちは蜂起します。国後を手始めに、忠類(網走から北辺り)のアイヌたちが和人を殺します。
ところが、そのためにはツキノエはだまして、少年たちを大人にするラッコ狩りの儀式に追いやられ、根室や厚岸のアイヌたちは蜂起しません。
こうした動きに対抗して、松前藩も動き出します。蝦夷地に権利を持つ松前藩は、それを幕府に取られたくないからです。
後の悲劇を内包して、登場人物たちの思惑が交錯していき、欲と希望と願いとが複雑に絡み合って、ますます盛り上がる中巻でした。
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