船戸与一著。新潮社刊。
満州の建国から始まる第3巻です。敷島4兄弟の環境もいろいろと変わりつつあり、特に末っ子の四郎の変貌ぶりが凄まじいです。第3巻の冒頭ではまだ上海にいたのに、最後には日本の第二次満州移民村に通訳として住み込んでいます。うーむ、第5巻では新聞記者となって南京大虐殺に立ち会うことになるそうですから、いろいろな才能はあるんでしょうが、相変わらずの流され&利用されの人生。一回、東京に帰ったものの、義母が自分を吊るし上げようとした特高の刑事と乳繰り合う仲になっちゃったのを目撃して、その刑事を射殺、逃げるようにまた中国へ戻ってます。上海では最初の慰安所なんかも作らされちゃって、これから先が心配。
武闘派の次郎も、中国北東部をあっちに行ったり、こっちに来たり。金のために、たまに特務機関に雇われたりしていますが、一ヶ所に落ち着けないたちなので、流浪の人生が性に合うようです。でも、かつては一緒に復讐もした辛雨広(部下の息子)に去られ、上海事変に関わったり、日本のために汚い仕事なんかも請け負ったことも知られて、辛雨広に命を狙われていたり。武闘派なんで、最後まで生き延びそうにありませんが、4兄弟のなかでは好きな人物なんで、ひょうひょうと生き延びてほしいもんでありますが。
長男の太郎と三男の三郎は身辺の変化は特にありませんが、仕事に忙しい毎日。あ、三郎は結婚したのか。太郎の息子が第3巻の最後で亡くなっているんですが、これはどういう伏線なんだろうか?
あと、第3巻では日本軍による中国での虐殺事件として悪名高い平頂山事件を、次郎が目撃、太郎が現場検証などを行っており、うやむやにしたり、なかったことにしたりしていないのが、さすが船戸さん。
引き続き、4巻へと読み進めたいのですが、第6巻でも完結してなそうで、著者の最長小説になりそうな感じです。
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