船戸与一著。集英社刊。
日本人、ビルマの少数民族カチン族、華僑、刑務所の副所長、ロンドンに留学し、イエメン出身の妻を持つビルマ人の5人の視点で描かれるビルマ現代史の1ページ。けっこうめまぐるしく視点が変わり、またこの5人が複雑に絡み合っていきますが、さくさく読めました。ただ、最初は全然接点がなかったような5人なのに、華僑のかっぱらった200万ドルを巡って欲が絡み出すと、あとは船戸節の真骨頂で、血で血を洗うような凄惨な図が展開され、最後に残るのはわずか…というバイオレンスな話です。
登場人物の誰もが目の色を変えて200万ドルを追い掛けていくのに、それが手に入らないとわかった時のカチン族の大尉の諦めっぷりが、この国の少数民族の置かれた複雑な状況を示しているようでもありました。
今も軟禁状態に置かれているスー・チーさんと、独裁軍事国家というぐらいしか知らないビルマという国は、とても遠い国で、こんな機会でもないと関心も持たないのだなぁと思ったり。
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