たきがは家では文句を言いつつ、朝のニュースは某国営放送と決まっている。で本日もニュースを見ながら朝ご飯を食べておったところ、気になるニュースがあったので思ったことを書いておこうと思う。
それはいわゆる経済学や哲学の古典が、よりわかりやすい現代語訳になって売れているという話だった。たとえば、ニーチェの言葉を抜粋した本が24万部出ているとか、出版不況と言われている時代に大した売れ行きではないかと思う。
でも気になったのは、そのニーチェをわかりやすくしてしまった本についてなのだった。ちなみにたきがは、一応、ニーチェを読んだことはあるが、1冊限りで挫折し、何が言いたいのか半分もわからないで投げ出したので、とんと偉そうなことは言えぬ。だいたい、たきがはさんは読解力があんまり高くない人なので、小難しい隠喩とか言い回しを使われた日には全然わからないと思うことは珍しくないのである。しかし、そんな奴が何でニーチェを読もうなどと思ったかと言われると、これが若気の至りというやつか、ちっともきっかけを覚えていないので、基本、本はジャンルにこだわらずに乱読する人間なもので、たまたまニーチェが目にとまって、たまたま読んでみようかと思ったけど、案の定、わしのおつむでは理解できなかったというのが正解ではないかと思う。たぶん。それ以上、特にこれといった理由は思いつかない。まぁ、別に今まで本を読んできて、
わからねぇよッ!と投げ出したこと、投げ出しそうになったことは多々あるので、別に珍しくはない。
だから、そんな挫折した経験を持つニーチェをわかりやすく、というのは、たきがは的には興味ある本といえなくもないのだが、そこでふと思ったのだ。具体的な本の中身は読んでないのでコメントはできないが、ニュースで紹介されていたのを見た限りでは、ニーチェの言葉を抜粋して並べたか、さらにわかりやすく書き直したようだ。
そして、その本を読んで、インテリアだったかのデザイナーの読者が登場して、組織になかなか溶け込めないでいた自分だけど、ニーチェ曰く「組織に溶け込めない人間というのはすでに完成した部分があるのだ(うろ覚えなので、かなり意訳しています。意図が逆かもしれません。そのうちに書店で確かめてみます)」だそうで、無理に組織に溶け込む必要はないのかなと気が軽くなった、みたいなことを言っておったのだった。
でもね〜、俺も初対面で打ち解けるタイプじゃないし、なかなか友だちとか作りづらい人間なもんで、兄ちゃんの言いたいことはわからんでもないのだけど、組織にいる以上、それは多かれ少なかれ溶け込む必要はあるし、今のままでいられては周りもやりにくいんじゃないかな〜? 俺様OK!みたいにニーチェに肯定されたとしても、一緒に仕事するのニーチェじゃないし。まぁ、実際のところはどんなものだかよくわかりませんけど。
で、こういう風にわかりやすいニーチェ本が今、24万部も売れているんですよ〜という話だったんだけど、俺、それって、ニーチェを自分のところまで引き下げるってことじゃないかな〜と思ったわけですよ。
なんていうの、本って、子どもの頃に読んでもわからないけど、大人になって読み直したらわかったってあるでしょう? それは俺が本のレベルに追いついたのであって、決して本を俺のレベルまで引き下げたわけじゃないんですよ。
だけど、この本の場合、わかりやすい言葉でニーチェの言葉を綴ることによって、ニーチェを読むだけの読解力のない人間が、ニーチェをわかったような気になってるだけなんじゃないかと。本との付き合い方ってそれちゃうんじゃないかと。
俺がよく見に行くブログさんは、浅い知識しか持ってない、語彙不足の俺なんか、とてもわからないようなネタをロッキード事件から差別の問題から裁判の問題まで幅広く取り扱っていて、俺なんかが下手に感想を書いても、こんなことも知らんのか!って言われちゃいそうな、わかるようになるまで黙っとけって言われそうな、そんなところがあるんだよ。
本も、そういう本ってあると思うの。特に哲学書というのは、わかんないなら読まなくてもいいよ、でも、読んでわかるようになったらなおいいよって感じがある。本とはそういう付き合い方をするのではないかと思う。
まぁ、この本を機会に、ニーチェの本を読んでみようかな、という人がいたら、この本は入門書としては最適なのかもしれないんだけど、こういう本を読む人って、きっとその先にはいかないで、わかったつもりで満足してそうに思うわけですよ。だって、緒方正人さんが言うてはったもん。わかった時に人はそこで止まるって。わからないから、先へ行こうとするって。俺、ニーチェもそういう本だと思う。
あと、俺も
よくやるんだけど、言葉の一部分だけ切り取るというのは、危険も伴うものだなと。前後の文脈があって、どういう話の内容の中で言われたかということはとても重要なのではないかと。
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