野添憲治編。無明舎出版刊。
花岡事件を追い続ける秋田在住のジャーナリストの聞き書き。先日の「
花岡事件 日本に俘虜となった中国人の手記」が中国の人の語りだとすると、こちらは直接的には関係ない人が多数の、言ってみれば普通の日本国民が見た花岡事件という感じです。事件の当事者であり、本来は加害者として扱われるべき鹿島組のなかでも通訳と雇員というあまり重要なポストにいなかったような人たちの証言な上、人によっては花岡事件そのものは見ておらず、敗戦後、俘虜となっていた中国人たちを手当てした看護婦さんとかも出てくるわけです。まぁ、70年も前の事件ですから、当事者が生きていることもないでしょうが、生きていて証言していたら、鹿島組の態度も違うような気もしますので、いちばん俘虜の方たちを虐待した補導員とかの人たちは墓場まで自分の知っていることを持っていってしまったように思います。この本は1986年出版で、著者がインタビューをしていたのは、その数年前でしょうが、あまり生き残っていないか、生きていても表に出てこなかったかもしれませんし。
そう考えると被害者の方の手記はあるのに加害者の告白はないという片手落ちな感じですが、だいたいにおいて日本が強制連行した朝鮮や中国の方たちについての扱いというのは、そもそもどこの誰を何人連れてきたという名簿さえ現存しているのが珍しい状況だったりすることが多いので、花岡事件ほどはっきり残っているのは逆に珍しいとも思いました。
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