監督・脚本:黒澤明
出演:新出去定(三船敏郎)、保本登(加山雄三)、六助(藤原釜足)、森半太夫(土屋嘉男)、佐八(山崎努)、入院患者(渡辺篤、左卜全)、お杉(団令子)、狂女(香川京子)、五平次(東野英治郎)、まさえ(内藤洋子)、おなか(桑野みゆき)、両替屋(志村喬)、おとよ(二木てるみ)、娼家の主人(杉村春子)、登の母(田中絹代)、長坊(頭師佳孝)、長坊の母(菅井きん)、登の父(笠智衆)、ほか
原作:山本周五郎
黒澤映画の集大成ともいえる、傑作ヒューマニズム映画。主役こそ加山雄三に譲ってるが、主題はタイトルどおり「赤ひげ」であり、その赤ひげに、「用心棒」の桑畑三十郎、「七人の侍」の勘兵衛、「隠し砦の三悪人」の真壁六郎太の集結を見ることができるという点において、黒澤映画の集大成だと思う。
なんちゅうても、見よ、黒澤一家の総出演だ〜! 毎度おなじみの志村喬さん、藤原釜足さん、左卜全さん、渡辺篤さんに加え、東野英治郎さん、香川京子さん、杉村春子さん、土屋嘉男さん、菅井きんさんときては、ファンとしてはうれしくてたまらないのである。もうキャスティング見てるだけでうきうきするなんて、わしは黒澤映画以外には今川アニメぐらいしか経験がないのであった(←それもどうだと小一時間…)。
しかも、そこに「天国と地獄」の犯人役で強烈な印象を残した山崎努さん、小津映画の常連、笠智衆さん、溝口映画の常連、田中絹代さんときては、映画ファンならば、来た━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!と歓喜でもって迎えるのが礼儀というものであろう!
たきがは的には黒澤映画ベスト・ファイブ(白痴、七人の侍、生きる、我が青春に悔いなし)に入る文句なしの傑作である。原作の山本周五郎さんもいいのだが、実は原作はもっとあっさりテイストで、「赤ひげ」とタイトルはあるが、短編連作集だったりする。それを、このうねるような大河ドラマに仕立て上げた脚本の力に拍手〜!
さらに、黒澤ヒューマニズム映画といったら、「生きる」でもそうだったが、おばちゃんがいい!(・∀・)イイ!! 決して主役を張る方々ではないのだが、その存在感、そこにおばちゃんがいなかったら、このドラマはどんなに無味乾燥なものになっちまっただろう。否、養生所に引き取られ、登になつくおとよという少女に向ける怒り、愛情、子ネズミと罵る7歳のこそどろ、長坊に向ける愛情の愛しさよ。おばちゃんたちがいい味を出しているのが黒澤映画のいいところだ!
そして、後半の主役、子ネズミ長坊。演ずるは「どですかでん」で主役を張った、天才子役、頭師佳孝さんだ〜! 正直、今の子ども店長もわしは嫌いではないが、いかんせん滑舌すぎる。なんちゅうの、子ども特有の舌っ足らずなところ、でも、兄を子ども扱いする小生意気さ、おとよに別れを告げるいじましさ、その愛しさは長坊の方が数倍上だなとわしは断言する。
そしてそして、脇を締める方々のいいこといいこと! わしは左卜全さんの舌っ足らずといいますの、あの独特のしゃべり方を聞いているとなんか涙が出るよ! もう、存在そのものがこの人はすごいよ! 一言も物言わんで死んでいく六助よ! 藤原釜足さんにこの役を振ったってことが、黒澤監督がいかに買っているかの証明だ!
もちろん、この人も忘れちゃいけない、新出去定先生、通称・自称、赤ひげだ〜! どんどんぱふぱふ。気に入った奴にはやたらに無愛想。髭を引っ張るのが癖で、腕っ節の強さは三十郎級、金のあるところからふんだくる度胸の良さも超一流。しかも名医であるぞ! 「貧困と無知はいけないという法律を政治が作ったことがあったか?」 今の時代にも通用する台詞である。頭(ず)が高いぞ、政治屋ども! 謹んで赤ひげの言葉を聞かぬか〜ッ!!
久々に映画鑑賞を再開したわけなのですが、今日は泣けるものが見たいなと思って、「赤ひげ」をチョイスしました。「蝶の舌」「聖なる嘘つき」みたいに号泣しないけど、間違いなく泣ける傑作です。お薦めです。ちゅうか、見とけ。映画好きを名乗るなら見とけ。
たんぽこ通信 映画五十音リスト
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