小川一水著。ハヤカワ文庫刊。
久々に骨太のSFを読みました。わしはやっぱり、小手先だけの仕掛けの短編より、こういうじっくり読める長編のが好きなようです。長編といっても300ページもないので読みやすいのですが、タイムパラドックスとかも含めて、おもしろかった〜
時は3世紀の日本。邪馬台国を治める女王・卑弥呼こと彌与は、ある時、使いの王と名乗る男に物の怪から命を助けられる。彼こそ使令(つかいのおきて)に伝えられる救世主であった。その戦いは26世紀から、全人類の存亡をかけて、時を遡り、全世界的に繰り広げられてきた。使いの王ことオーヴィルは、そのために人類に造り出された知性体であり、戦いは10万年の長きにわたっていた。
彌与のキャラクターがなんちゅうても魅力的です。15歳で邪馬台国の女王に祭り上げられ、頑張ってきた彼女の強さともろさが、ETという全人類の敵相手に兵士を引っ張って戦っていく。彼女を支える奴隷だった幹という少年と、超絶的な力を持つ使いの王。けれど、その戦いは絶望的で、オーヴィルはすでに未来で失敗し、ここ邪馬台国のある時代を最後の砦としてやってきているのを我々読者は知っていくわけです。
本来ならばもっと未来に見つけられたはずの鉱脈、もっと未来に発明されたはずの技術、それもこれも全ては人類存続のために、ETと戦うために、世界をまとめ、ただETとの戦いに振り向けさせていくオーヴィルたち。
そういった事情はわからないながらも、若き女王として、人びとを引っ張っていく卑弥呼。
その構図は、ちょっとばかし、「伝説のオウガバトル」のオピニオン・リーダーとその周りの人たちに似てなくもありません。
元来、たきがはは戦う女の子が大好きなんすよ。古くは「スケバン刑事」に始まり、今の「伝説のオウガバトル秘史」でも。それも、女性が女性の強さを持ったままで戦うという構図が好き。
ついにもたらされる勝利、その時、彌与は、オーヴィルは。是非、お手にとってご覧くだされ。
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