レイ=ブラッドベリ著。ハヤカワ文庫刊。小笠原豊樹訳。
短編集。それも長くても30ページたらずの短編ばかりなので、さくさく読める。
「霧笛」 海の底から現れ、灯台の霧笛の音を仲間の声だと思っている古代生物の悲哀を描いた掌篇。「海のトリトン」の「霧に泣く恐竜」って、この話から来てるんだな。ただ、あちらは描き方がいまいち。ちょっとお子さまだましな印象が拭えなかったんですが、うーん、ブラッドベリだと、情緒がある。しみじみと淋しい。きっと「トリトン」では恐竜を描きすぎたのが問題ではないかと思うのですが、どうなんだろう。
「歩行者」 一見、なんてことのない夜の散歩が、実はクライマックスで高度に管理された社会を描いていたことが判明。いや、なかなか。
「荒野」 火星行きのロケットに乗り込む若い娘2人の話。筒井百々子さんの「火星ロケットのシーズン」って、この話に似てる。というか、オマージュと見た。2003年って設定が時代を感じさせるなぁ。
「人殺し」 ポーランド旅行やスペイン旅行から帰ってきたたきがはは、こんな気分になりました。日本の町のうるささは異常です。なんでどこへ行っても、音楽から解放されないのか。
「ぬいとり」 一見、老婆3人の刺繍風景が、一転して終末になる恐ろしさ。
「サウンド・オブ・サンダー」 バタフライ効果ってやつですね、もろに。
「発電所」 くたびれた夫婦が町へ行くのに、とある発電所で雨宿りして、という話。この短編集の中ではイランとかの短編映画みたいな味わいで好き。
いいなぁ、ブラッドベリは。たまに帰ってきて、ほっとする場所、みたいな味わいがあるっす。
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