井上靖著。昭和文学全集10。小学館刊。
同じ巻に井伏鱒二、永井龍男、宇野千代も入ってます。長編は収録してませんが、代表的な中編・短編をまとめて読むにはいいシリーズなのです。たきがは家では本棚の肥やしとなってますけど。
というわけで歴史物の井上靖です。最近、寝る前に何か読んで寝る習慣がついているので、短い「楼蘭」を読んで寝ました。
「楼蘭」の名が日本でメジャーになったのは、なんといっても砂漠で発掘されたミイラの少女が日本に来た時ではなかったかと記憶しておりますが、わしも多分に漏れず、これで「楼蘭」を覚えました。桜に蘭とは、またきれいな字面の町だな〜と思ったことを覚えとります。
ただ、実際の楼蘭はそんなにきれいな町ではなくて、中国が漢だった時代、北に匈奴という中国の歴史の中でも最大の強敵がいた頃、ロプノールのほとりにあった小国は東に漢、北に匈奴という大国に挟まれて、いろいろと苦労していたんだよ、という話でした。しかももともとの楼蘭の場所から移動させられ、楼蘭といったらロプノールのほとり以外には考えられなかった楼蘭の人びとは、新しい町を鄯善と名づけ、いつか楼蘭に戻る日が来ることを願っていたというくだりになりますと、島国日本には経験のない、地続きの大陸ゆえの悲劇というのは、ヨーロッパでもどこでも変わらぬものだなぁと思いました。
楼蘭で見つかった少女のミイラの正体については、「シルクロード」シリーズの神坂智子さんも推測していたなぁと懐かしく思い出した次第。
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