阿川弘之著。昭和文学全集21巻。小学館刊。
学徒出陣した京大文学部の学生の日記という形をとって、特攻兵の心情や心の変化を綴った小説。
主人公の吉野が中心なのだが、「きけ、わだつみの声」なんかにも出てきそうな日記で、正直、違和感ないのが新鮮みがないというか。むしろ小説なんかより実際の手記読んだ方がよくね?っていうか。
むしろ、戦争に反対しながら、出撃する前に事故死してしまった藤倉の方がよほど共感が持てる。藤倉も恩師への手紙という形で自らの心情を綴っている。
ラスト、おそらく回天だと思うんだけど、吉野たち4人のなかで唯一生き残った鹿島が、死亡フラグ立てまくっていただけに意外。
あと、吉野たちが出水の海軍基地に赴任して、水俣に行って、地元の名家と昵懇になったというエピソードは、水俣だったら名字は「深井」じゃなくて、もっと見かけるのあったな〜と思ったよ。
作者にとっては不本意な読み方だと思うんだけど、吉野の文章があまりに最後まで理路整然としていて、特攻兵の死が美化されているようで、そんな意図はないとわかっているんだけど、もう少し人間くささを見せてほしかったと思った。
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