山本周五郎著。新潮文庫刊。
「
椿三十郎」の原案(原作ではない)「日日平安」のほか10作を収めた短編集です。収録作は「城中の霜」「水戸梅譜」「嘘ァつかねえ」「しじみ河岸」「ほたる放生」「末っ子」「橋の下」「屏風はたたまれた」「若き日の摂津守」「失蝶記」で、うち「城中の霜」「水戸梅譜」「日日平安」「しじみ河岸」「末っ子」「橋の下」「屏風はたたまれた」「若き日の摂津守」「失蝶記」が武家物、「嘘ァつかねえ」が下町物、「ほたる放生」が岡場所物と、馴染みのジャンルですね。「日日平安」と「末っ子」は滑稽物、「屏風はたたまれた」は不思議物でもあります。
そう言えば、2017年は没後50年なんですが、著作権切れたんでしょうか?
「ほたる放生」の、たちの悪い男にまとわりつかれてしまい、流れ流れて、とうとう潮来にまで行くことになった遊女の話がしみじみとした風情で良かったです。ただ、最後は、そんなヒロインに思いを寄せる男が情夫を殺すというアンハッピーエンドなんですが。
武家物は全般シリアス物で、武士は辛いよが多かったです。特に「水戸梅譜」と「若き日の摂津守」は為政者の苦労という感じで、「水戸梅譜」は珍しく水戸光圀が描かれたりしてます。
「嘘ァつかねえ」は下町物ですが、恐妻家の男の話というのがちょっと珍しいかも。
好きな作は「
樅ノ木は残った」と「
さぶ」と長編が多い周五郎さんですが、短編の隙のなさは相変わらずの完成度ですね。
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