横山光輝著。講談社漫画文庫刊。全2巻。
横山先生のスペオペです。主人公が少年ぽい風貌の一色健二ですが、内容はわりとハードでヒロインが出てこないところもいつもの横山漫画です。
全部で5話からなっており、「疫病神ジャック」「ガニメド」「マロー星探検隊」「反乱」「宇宙からの帰還者」というのがそれぞれのサブタイトル。
「疫病神ジャック」というのは健二くんがパイロットになるための最終試験を突破するまでとタイトルロールのパイロット、ジャック=ローレイ大尉とともに木星に向かい、ジャックを失うまでの成長を描きます。
「ガニメド」は宇宙船が行方不明になった原因を探るため、一癖も二癖もある部下たちを率いることになった健二くんの奮闘記です。最後は四人も部下を失いますが、役目を果たした健二くん。一人だけ生き残った部下の那須野大作さんは、後の話でも部下として再登場。
「マロー星探検隊」は地球に楕円軌道で接近するマロー星の衛星マグマに向かう話で、現状の宇宙船ではマグマまでの片道分しか燃料を乗せられないけれど、マグマに5年前に大量に打ち込んだ燃料のおかげで、そこを足がかりにさらに宇宙を探検できるというスケールの大きな展開が横山先生ならでは。ま、実際にこんなことをしたら、燃料のせいで着陸した時に爆発するんじゃないかとか余計な心配もつきものですが、そこはスペオペの気楽さです。あと、一応、「半分くらいが着けば」ってフォローもあります。そこに部下の一人が死刑囚の弟と入れ替わっていたというサスペンスが加わるあたりも横山先生のサービス精神の旺盛さを伺わせます。
「反乱」はサイボーグの反乱を調査することになった健二くん。ここで部下の那須野さんが再登場します。ところが実情はさらに複雑で、サイボーグ同士の権力争いであることが判明、さらに一緒に行った部下の3人がサイボーグの延命に身体を奪われるなど巻き込まれてしまいます。結局、反乱を解決することはできず、健二くんは那須野さん、イケメンで銃の名手・五十嵐くんという部下2人と脱出、サイボーグたちの住むハイモス星は滅んだことがエンディングで語られるというドライな展開。この話に登場する看護婦さんが唯一の女性キャラとはどんだけ硬派なの横山先生。
「宇宙からの帰還者」は宇宙から帰還したロケットが積んできた生物から伝染病が発生、その薬となる原料を取りに行く健二くんと新米パイロットの面々。しかもそこに目的地の星に大量の水爆が向かっているという時間制限も加わるスリリングなシチュエーションと、恐竜っぽい生物が多数いる惑星探検がメインなあたり、盛りだくさんな展開です。
肩の凝らない、それでいて硬派なスペオペが楽しめる横山先生ならではの作品でした。
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