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されど平穏な日々

日々のつぶやきと読んだ本と見た映像について気まぐれに語るブログ。Web拍手のメッセージへのレスもここ。「Gガンダム」と「ジャイアントロボ」への熱い語りはオタク度Maxにつき、取り扱い注意! 諸事情により、コメントは管理人が操作しないと反映されません。時々、サイトの更新情報など。

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折れた魔剣

ハヤカワ文庫。ポール=アンダースン著。関口幸男訳。

人間の世界ミッドガルドがいまだアルフヘイムやトロールヘイムと行き来できた時代。イングランドの強者オルムに長男が生まれた。だが、その赤子はエルフの太守イムリックに連れ去られ、スカフロクと名づけられて強力な魔法戦士として成長していく。オルムのもとに残されたのは取り換え子ヴァルガルド、だが、2人は長じて戦う運命にあった…。

かの「指輪物語」と同時期に発表された古典的なファンタジー。全編を彩る運命論と、最後にはかなりの者が滅び去るラストなどは、神々の戦いラグナロクで終わる北欧神話を彷彿とさせまする。「指輪物語」のエルフやトロールとは違ったエルフやトロールは、どこまでも血腥く、生々しく、聖人君子のようだったエルロンドに比べると、まぁ、イムリックのなんと俗っぽいことか、それでいてエルフらしいことか。優雅で残酷という言葉の似合ったトールキン教授のエルフに対し、こちらのエルフは同じ残酷なんだけど、より血腥い残酷さちゅうか。で「指輪物語」のトロールがサウロンによって造り出された怪物であるのに対し、こちらのトロールはもっと知性的で、でも乱暴で、獰猛で、どちらかというと日本の鬼を彷彿とさせるところがあったり。
「ロード・オブ・ザ・リング」のエルフって、間違いなくこっちのイメージだよな〜と思います。あのですね、トールキン教授のエルフって、きれいなんですよ。決して自分の汚物にまみれない、そんなもの出さない、少女漫画とかでよく悪口みたいに言われるけど、トイレとか要らなさそうな、セックスとか超越してるような、そういう存在なんです。だから、きれい。そんな印象があります。ですが、「折れた魔剣」のエルフって人間ともトロールとも寝るんです。作中、ガラドリエルの奥方みたいな(そこまで力があるわけではないが)キャラがそうするんです。逆にセックスしてるガラドリエルの奥方って想像つくか? アラゴルンとアルウェンって43年ぐらい婚約してから結婚するまでかかってるんだけど、やってそうか?(お下劣なネタですまん) わし、「指輪物語」のアラゴルンとアルウェンって清い交際だったと思ってます。だってトールキン教授のキャラってそんな感じだから。でも、「ロード・オブ・ザ・リング」のアラゴルンとアルウェンって、なんかエルロンドの目を盗んでやっちゃってそうじゃないですか? 人間が演じてるんだからしょうがないんだけど、なんか生臭かったですね。だって土台が違うもん。「指輪物語」はイギリス、「折れた魔剣」はアメリカ、アメリカの監督が「指輪物語」を映画化しようと思ったら、「折れた魔剣」に近くなっちゃうんじゃなかろうか? いや、監督、ニュージーランド出身だけど、映画会社はアメリカじゃないっすか。そんなことねーかなー? そんなこと言ってるの、わしだけかなー?

で、主人公がおそらくスカフロクになるんでしょうが、わしはどっちかというと、ヴァルガルドの方が好きだったりします。スカフロクの取り換え子、そのためだけにこの世に生を受けさせられたヴァルガルド、トロールの激情をもてあますような形で弟や父を殺し、最終的にはスカフロクと対決することになるわけですが、「それでも俺には何も残らないのだ」みたいなことを言ってるあたりがつぼ。スカフロクはいいんですよ、エルフとして育てられ、エルフの魔術を身につけ、エルフの強者となり、神々から強力な剣(タイトルの魔剣ティルフィング)まで授かり、エルフのために戦い、倒れてゆく。実の妹と契っちゃったり、お約束的な悲劇に見舞われたりもしますが、基本的にスカフロクって迷いがないもんね。オルムの息子だってわかったって、別にヴァルガルドを「親父の仇〜!」とか言ったりしませんし。彼の心は常にアルフヘイムにあるんですよ。最後までアルフヘイムの戦士として戦うんですよ。オルムとか弟とか殺され損ですが、もとはといえば、オルムのせいですからねぇ、親の因果が子に報い、な話なもんですから、関係者みんな死んで幕、というところがラグナロクっぽいちゅうか。でも、ヴァルガルドって、単にスカフロクを人間から奪ったイムリックが代わりに置いてきた子なんで、性格は凶暴でも本人、そんなこと望んだわけじゃないし、巡り巡ってトロールヘイムについて、最後はトロールとして戦うんだけど、そんなこと願ったわけじゃなかろうし、なんちゅう皮肉な話なんだろうと。
そういう意味では、オルムを除くと全ての元兇であるイムリックが、最後までのうのうと生き延びるのはなんだかな〜な感じもしますが、作中ですでにアルフヘイムの滅亡とか匂わされているんで、エルフやトロールが世界から消える日も近いわけだから、最後の灯火というんですか、破滅の足音はすでに聞こえてきているっちゅうか、やがてイムリックが滅びるのはわかってるんで、これはいいか、とか。

本書はマイクル・ムアコックなどに影響を与えたそうで、確かに、あちこちにエルリック・サーガの悲劇と似た部分も見つけられなくはありません。
「指輪物語」が上記の理由などで、きれいすぎる、と敬遠する向きにはおもしろいのかも。
でも、そうではなくても、これぞファンタジーな傑作です。

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