五味川純平著。光文社文庫刊。全9巻。
やっとこ最終巻です。
インパール作戦から敗戦まで描きますが、予想どおり、解説が多いもので、小説の体をなしていません。
インパール作戦には標耕平が参加していたので、まだ小説っぽい部分は残っていたのですが、解説の部分はどうにもおもしろくないです。そして耕平、あっさり濁流にながされて絶命…
英介は根が小心者なので日本の敗色が濃厚になってくると慌てていますが、ここに来て、由紀子がどっしりとかまえた感じです。どうして長男だけこんなに俗物なのかと思うくらい、由紀子、俊介、順子と誰も似てません。
ソ満国境にやられた俊介は、玉砕に玉砕の継ぐ太平洋戦線から離れて平穏無事だったりしますが、苫と再会して、ひたすら睦み合ってます。極限状態の男女なので、そっちに行っちゃうのもわからなくもないんですが、なんというか、ここに来てそういうシーンばかり延々と書かれても… (´・ω・`)
そして、前巻で囚われの身となってしまった趙瑞芳さんは、とうとう731部隊の丸太にされて、殺されてしまいました。服部医師がそこにやられて、丸太たちの健康状態を診るという役割を負わされ、眼光鋭い女性丸太がいたところ、実はそれが瑞芳さんだったという… 印象的な人物はどんどん死んじゃうなぁ… まあ、「人間の條件」で主人公を野垂れ死にさせたんで、みんなが生き延びてハッピーエンドみたいな最後はわしも予想してませんでしたが、まさか、瑞芳さんが731部隊とは…・゚・(つД`)・゚・
さすがに敗戦後、大塩雷太は捕まって、処刑されましたが、悪の師匠だった鴫田は生き延びて、武居に至っては行方も知れません。
行方不明と言えば、7巻あたりで出番のなくなった柘植も、とうとう最後は書かれず、軍人なのでどこかの戦場で倒されたんでしょうが、最後ぐらい書いてほしかったなぁと思いました。あれだけ多彩な登場人物を出しながら、どうも比重が偏りがちで、やっぱり大河ドラマのラストって数ある登場人物たちの最後というか、その後というかを見るのも楽しみの1つじゃないですか。意外なその後とか、予想されていた死に様とか、そういうのが全然書かれなくて、つまらないなぁと思いました。
俊介もさんざん「最後は見られない」とか言われちゃってたんで、ソ満国境で野垂れ死には予想していたんですが、最期は描かれず、名もない敗走する日本兵が俊介の死体の傍を通り過ぎるだけで、さんざんスケッチを描いていた手帖があったので俊介とわかるようなもので、呆気ない死でした。
ラストは男たちの死んだことも知らず、揃って待つ順子と邦で締め。ちょっと味気なかったです。
今までさんざん書きましたが、やはり伍代家を中心とした架空の財閥とそこに関係する人びとを描くか、実在の事件、日本が戦争に至った事件とか作戦とかを描くかという二兎を追う者は一兎をも得ずな感じで、どっちも中途半端な読後感でした。第1巻の時点だと大した事件も起きていなかったせいか、いろいろな登場人物の動きとかダイナミックでおもしろかったんですが、実際の事件に誰もからめないせいで解説ばかりになってつまらなくなってしまいました。
この小説を戦争文学の最高峰とは認めたくないものだな…
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