シビル=ウェッタシンハ著。松岡享子訳。福音館書店刊。
スリランカの女性作家シビル=ウェッタシンハさん(1928年生まれ)が6歳まで暮らしたというスリランカの田舎の村ギントタでの生活を、幼い少女らしい瑞々しい感性で見つめた回顧録のようなエッセイ。挿絵もご本人。
6歳の時に西洋式の教育を受けるために両親とともに首都のコロンボに移住したので1928〜1934年のスリランカの田舎の暮らしを綴っているのだけれど、その時代といったら、ヨーロッパもアメリカも無論、日本も世界恐慌の大渦に巻き込まれ、大変な騒ぎになっていたはずなのに、そうした所謂文明国から遠いスリランカの暮らしはのどかで、仏教と呪術が混在したような宗教的な匂いが多々あるけれど、なんとも平和的で、まるで地上の楽園のような風情であります。
わしは、こういう見知らぬ土地の見知らぬ暮らしとか日常というものが大好物なもんですから、ページをめくるのが楽しくて楽しくて、周りにあるものを豊かな感性で受け止め、見つめるシビルさんの記述は、現代の日本の子どもたちが決して得られることのない得難い体験なのではないかなぁと羨ましくなりました。
固有名詞がまたふるっておりまして、料理ひとつをとっても
アッガラー、モルディブのかつお節、マッルン、ポル・サンボール、ホッパー、ヒールバッ、ジャッガリー、トディ、シーニ・ラブラ、ココナッツ・サンボール、コンピッテュ、キャウン、キリジェー、イラムスシロップ、ゲッコー・エッグ(フーヌ・ビッタラ)、キリバットゥ、アースミ、アティラサ、コキス、アルワ、ルヌミリス、ビビッカン、ヴァンデュ・アーッパ、ウェリタラパ、ピッテュ
果物の名前は
ジャンブ、ナミナン、ゴラカ、バキニ、キララ、ビンロウジュ、ジャックフルーツ、パンノキ、ギラ・アンバ、ウグラッサ、ジャンブ、
道具の名前は
キッロタヤ、クッラ、ワッティ、アテュルパタ、ペネーラヤ、カンバヤ、ゴッコラ、ドーティ、パンチ、ラバーナ、
植物の名前は
キテュル椰子、ウァテュ・スッダ、ボーウィッティヤ、ピンナ、クシガヤ、ランタナ、キンマ、
てな感じで、1つ1つ具体的に描写されているものもあれば、そうではないものもあって、言葉1つをとっても想像力をかき立ててくれるのは、こういう異国情緒あふれるエッセイならではだなぁと思います。
スリランカはとても遠い国ですが、いつか行ける日が来たら、そこにある物をたくさん見てきたいと思わずにいられません。
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