「必殺仕事人」シリーズなどで中村主水さんの姑を演じたほか、黒澤映画の名脇役でもあった菅井きんさんがお亡くなりになったそうです。
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「必殺」で覚えたので、その印象が強いのですが、個人的な白眉は「生きる」の市井のおばちゃんでしょう。
「生きる」のおばちゃんは何度も言ってますが、たぶん、これからも言いますが、主人公・渡辺勘治との絡みが印象大です。末期の胃がんを抱えて、それでも生きた証のために下町のドブをさらい、公園を作ろうと奔走する主人公が、ようやく念願の工事が始まり、まるで我が子を愛しむようにその様子を見守るシーン、土砂降りの雨にもかかわらず、歩き出してつまづいた渡辺勘治に、雨をものともせずに走りより、傘を差しだしたのは菅井きんさん演ずるおばちゃんでした。赤ん坊を背負い、きっとほかにもたくさんの子どもたちの母親であったろうおばちゃんが渡辺勘治に寄せる愛情は、その前後に重なる渡辺勘治のお葬式にやってきて焼香を上げるおばちゃんたちの泣き声と相まって、一気に感動を高める効果を持っています。台詞はありません。でも、菅井きんさんは全身全霊でこのおばちゃんを演じられたに違いない。そのシーンが今もまぶたに浮かびます。きっと永劫にこのシーンを思い出すでしょう。
「どですかでん」では一転して、電車気違いとも呼ばれるろくちゃんを案じて、太鼓を日がな一日中叩いている母親です。
あと忘れちゃいけないのが「赤ひげ」で、その舌っ足らずっぷりと、反する頭の良さで主人公も霞んだ長坊の母親役です。残念なことに長坊一家が心中し、療養所に運び込まれたところでしか出番がないんですが、高いびきで眠りこける夫(長坊の父親)を尻目に真っ先に目覚めた菅井さんがしみじみと話す貧乏は、その後のおとよや療養所で働くおばちゃんたちの長坊を黄泉の国から返さんと井戸に向かって叫ぶシーンの良さともあいまって、外せないシーンの1つです。ほんとに、タイトルロールは赤ひげだけど、主役は保本でもない、市井の人たちや患者たちというのがこの映画の素晴らしいところですよ。
菅井さんのご冥福をお祈りします。もう一回、「婿殿!」って聞きたかったなぁ…
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