船戸与一著。徳間書店刊。
下巻。
いよいよ激しくなる西軍と列藩同盟の戦い。その中で、小さな藩がだんだんと列藩同盟を抜けていき、列藩同盟のそもそもの目的が会津藩を守れだったもんで、会津藩はだんだん追い詰められていきます。
そうした中で右近も寅蔵も殺されてしまい、ただ物部春介だけが生き延びるというラストは、春介が長州藩の間諜だったという立場もあるのでしょうが、あれだけ間諜として農民一揆を煽った春介が最後の方になると、死を倦むようになって、もはや父の仇と追いかける露口数馬さえ自分の手で倒せれば、と思うようになっていったことも無縁とは思えません。
会津藩士として戦うことから逃れられなかった右近も、長岡藩の「越後の蒼竜」と呼ばれた家老・河井継之助に信奉した寅蔵は、春介が言うように時代の流れに乗れなかったのかもしれません。
終章では意外なことに作者が登場、戊辰戦役に関わった人びとのその後を淡々と綴ります。
戊辰戦役とは何だったのか、日本最大の内乱と位置づけられたそれは、その後の東北蔑視なども植えつけて、今も日本人の心に深く根づいているようです。その眼差しは「龍馬伝」みたいなヒーロー譚からは決して読み取れないものを汲んで、私たちに提示しているようにも思えます。
さて、「蝦夷地別件」に戻ります。こっちもいよいよクライマックス。
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