監督:ジョージ=スティーブンス
原作:セオドア=ドライサー「アメリカの悲劇」
出演:ジョージ=イーストマン(モンゴメリー=クリフト)、アリス=トリップ(シェリー=ウィンタース)、アンジェラ=ヴィッカー(エリザベス=テイラー)、ほか
アメリカ、1951年
見たことがなかったんで見てみましたが、思わぬ落ちに驚いたよわしゃ。
叔父のコネを頼ってイーストマン水着工場に就職した貧しい青年のジョージ。気晴らしに出かけた映画館で同じ工場で働くアリスと知り合い、仲良くなるが、叔父の屋敷で見知ったアンジェラにも惹かれていく。しかしジョージはアリスを妊娠させてしまい、彼女に結婚を迫られるが、アンジェラもジョージと結婚したがっていた。切羽詰まったジョージはアリスを湖に誘い出すが、ふとしたことで口論になり、アリスは事故死してしまう。逃げ出したジョージは、やがて捕らえられ、検事の陪審員の巧みな誘導によって有罪とされてしまう。殺人に与えられる罰は電気椅子による死刑であった。ジョージは殺意を否定するが、牧師により、溺れるアリスを助けられなかったのを「心で殺したのだ」と指摘され、罪を受け入れるのだった。
最初のうちは田舎から出てきた青年が彼女もできて、金持ちの娘にも思いを寄せられて悪い気がしなかったのが、アリスが妊娠したと打ち明けた辺りから一転してサスペンスな雰囲気に。しかし、粗筋でアリスの死を「事故死」と書きましたように、ジョージにはそんな度胸も野心もなかったのでした。まぁ、モンゴメリー=クリフトには無理だよね… せいぜい田舎の好青年… これがアラン=ドロンだったら殺す気満々で、金持ちの彼女を足がかりに叔父の工場を乗っ取って…とか野心溢れる展開が期待されるんですががが。
それだけにジョージが有罪になったという展開は驚きましたが、アメリカは陪審員制度なので、検事の巧みな演出というか、ジョージを有罪にしようとする誘導に乗せられちゃったんで、日本の裁判員制度にも通じる素人判断の危うさをしみじみと実感しました。
たきがはは人を裁くなどというのは真っ平ごめんですので裁判員なんかやりたくありませんし、蛭子能収さんだったかが、「人を裁きたくないから漫画家になったんだから、裁判員なんかやりたくない」と言うのには全面的に同意するのですよ。
あと、作中の新聞へのインタビューでジョージを電気椅子に送る気満々の検事によって巧みに印象を操作されちゃったジョージの朴訥さとか、何も考えてませんでしたな感じを陪審員によって「有罪」にされた辺り、まぁ、悪意まで感じました。
ただ、牧師(だと思うんですが、背広着てるんだが誰だあれ)によってアリスを助けなかったことを「心で殺した」と言われて納得しちゃう辺り、アメリカ的だなぁと思わなくもなく。
いやいや、そんな「心で殺した」なんて言われたら、無罪の人間なんかおらんわけでして。そんなところを突っ込まれてもとか思うんですが。
もっともジョージはこれで納得しちゃって、獄中にまで見舞いに来たアンジェラに「罪を償う」みたいなことを言ったんで、最後は電気椅子に送られるシーンで終わりですから、アメリカ人的には納得できる展開なんじゃろうかねぇ? まぁ、原作のタイトルが「アメリカの悲劇」ですからねぇ。作者はマーク=トウェインと並んで評価が高いそいうですが、どこら辺が「アメリカの」悲劇だったのやら…
それにしても「
ウェスタン」でかの名優ヘンリー=フォンダが悪役やったんでアメリカでの興行が悪かったのは有名な話なんですが、モンゴメリー=クリフトではそういう拒否反応は起こらなかったんだろうか… 1951年と10年以上も前なのに… 5作目だし、若いからかな。
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