監督:カン=ジェギュ
出演:イ=ジンテ(チャン=ドンゴン)、イ=ジンソク(過去・ウォンビン)、ヨンシン(イ=ウンジュ)、北朝鮮の兵士(チェ=ミンシク)、青年団長(キム=スロ)、ほか
音楽:イ=ドンジュン
2004年、韓国
たきがはのいっとう好きな映画「シュリ」の監督カン=ジェギュさんの作です。2004年というと、ちょうど見に行ってない頃なので、2010年の最後の映画で、実家で録っておいてもらったケーブルテレビの放映で見ました。
1950年、ソウル。学生のジンソクと靴磨きのジンテは仲のいい兄弟。ジンテにはヨンシンという結婚を約束した娘がおり、その幼い弟妹3人と、病気で言葉を失った母と暮らしている。だが朝鮮戦争が勃発し、疎開先で徴兵されたジンソクを追ったジンテも兵士とされてしまう。弟を家に帰そうと奮戦する兄、その兄の人が変わったように忠誠心あふれる兵士となっていく姿に不安を覚える弟。一度は釜山まで追い詰められた国軍だったが、アメリカ中心の国連軍の参戦により、共産軍を押し返していくが、中国との国境間近で中国軍が参戦し、事態は硬直状態に陥る。家族の無事を確認しにソウルに寄ったジンソクは、ヨンシンが赤狩りにさらわれたところに立ち会い、助けようとするが、ジンテも現われたのに、ヨンシンを殺されてしまう。敵の総攻撃を受けるなか、北朝鮮軍のスパイと疑われたジンソクは捕虜とともに倉庫に閉じ込められ、駆けつけたジンテが見たものは、誰のものかもわからぬほど焼け焦げた死体と、弟に送った名前入りの万年筆だった。恋人も殺され、弟も殺されたことで、太極勲章を受けたほどの英雄だったジンテは北朝鮮に寝返り、勇猛な旗部隊の隊長となる。しかしジンソクは生き延びていた。彼は兄の部隊との戦場に向かい、軍を脱走してまで兄に会おうとする。ようやく取り戻した兄弟の絆、だが、それは永遠の別れでもあった。2004年、横たわったジンテの骨は、身元を確かめる物はただ、弟の名を刻んだ万年筆のみ。連絡を受けたジンソクは、兄に仕立ててもらうはずだった革靴を持ち、泣き崩れるのだった。
最初は2004年の韓国、朝鮮戦争の遺骨収集調査団から、現在のイ=ジンソクに電話が入るところから物語が始まります。生きているジンソクの遺骨が見つかったという連絡。しかしジンソクには行方の知れない兄ジンテがいて、ジンソクは老いた身体に鞭打つようにして、孫の運転する車で発掘現場に向かいます。
そこから時代は一気に50年以上遡り、1950年へ。
貧しいながらも兄、弟、母、兄の恋人、その弟妹たちと幸せに暮らしていたジンソクとジンテの兄弟。ジンソクは学生でしたが、弟を大学にやるため、兄のジンテは靴磨きをやって金を貯めていました。また病気のために耳が聞こえなくなり、話せなくなったというお母さんは、ジンテの恋人のヨンシンと青空食堂を経営しており、ヨンシンの幼い弟妹3人も引き取って一緒に暮らしてます。で、兄弟のお父さんはジンソクが7歳の時に死んだということで、日中戦争に行かされたと考えるのが妥当そうですな。
兄のジンテには、そういうわけで学がありません。彼にとってはヨンシンとの結婚も待ち望んでいたものだったでしょうが、実はいちばん気にかけていたのは弟で、2人が徴兵されてしまったのも、先に徴兵されたジンソクをジンテが助けようとしてだったのでした。
で、人のいい兄貴だったジンテが、弟を除隊させようとして、自分が勲章をもらおうと躍起になり、人が替わったように敵兵を殺していく変貌ぶりは痛々しいほどでした。そうでなくてもチャン=ドンゴンさんって、目がドングリ眼で可愛い顔しているのに、後半になると手柄を立てることしか頭にない、かつての知り合いが無理矢理に北朝鮮軍に徴兵されたのを知っても「敵にしか見えない」と冷たい様子で、どんどんジンソクとの間に溝ができてしまうわけです。
そういや、たきがははまったく興味がないのですが、2人とも韓流四天王だったりしましたっけ? だけど、ウォンビンさんもチャン=ドンゴンさんも戦闘シーンのリアルさは半端なく、泥にまみれ、血を流し、体当たりの演技でありました。いつまでもアイドル扱いは失礼だと思いました。
だんだん亀裂の生じていく兄弟。2人の仲は、北朝鮮軍に徴兵された知り合いとの再会により決定的になっていきますが、兄の心の中にあったのは、弟を母のもとに帰したいという、それだけの強い思いでした。
そして、戦争前から共産党の息のかかった集団から麦や米などをもらっていたヨンシンが、政府公認の赤狩りにより、スパイと断定されて殺されます。ジンソクもジンテも彼女を助けようとするのですが、多勢に無勢、力及ばずに彼女を失ってしまいます。ヨンシンが殺されたのも兄のせいだとジンテを責めるジンソク。その真っ直ぐな眼差しが痛い。登場時からほとんど変わることのないジンソクがジンテを責めるのは当然かもしれないのだけれど、ジンテの気持ちが、彼女<<(越えられない壁)<<弟に向いているのが見えているので、そんなに責めてくれるな、と思いました。
それは、彼女を殺されてもまだ韓国軍にとどまっていたジンテが、弟が殺されたと思い込んだところで朝鮮軍に寝返ったところにも現われていましたから。
でも弟は「あんな英雄は僕の兄じゃない」と責めて、決戦の場に赴きます。
ただ、そこでほっとするというか、無茶するな〜というのは、自分(ジンソク)が生きているとわかれば、兄はまた韓国軍に戻ってくると考えて、ジンソクが敵中に突撃してしまうところです。まぁ、こういう荒唐無稽な展開もカン=ジェギュ監督だからないとな。
その間に戦端が開かれてしまい、大混乱の中、ジンソクはジンテを捜します。
ですが、やっと再会した兄は、なかなか弟が生きていたことを認めず、白目をむき出しにして、ただ敵を討とうとするのでした。ジンテの弟思いの深さがこれほどのものだったのか!と思わされるシーンです。
けれど、やっと心が通じ合った時、それは別れの時でもありました。
一緒に戻ろうと言うジンソクに、「投降すれば戻れるから先に行け」と言うジンテ。でも、そのまま何もしなければ、そうもできたろうに、逃げる弟の負担を少しでも軽くするためか、ジンテは猛然と今までの友軍に攻撃をし、そのまま帰らぬ人となってしまいます。最期まで、弟思いの兄であり続けて…。
一人、母のもとに帰ったジンソクを迎えたのは、変わることのない母の愛情と、ヨンシンの弟妹たちの無邪気さ。それが、傷心の彼にとっていかに救いであったかははかり知れません。
でも、50年も経って、ようやく骨が収集された兄と再会したジンソクは作りかけの靴を手に、ただ泣きじゃくるのでした。( ´Д⊂ヽ
韓国の原題は「太極旗翻して」だそうです。ずっといいと思います。なんて芸のないタイトルだ。
音楽もたきがはの好きな「シュリ」や「リベラ・メ」のイ=ドンジュンさん。
そして! そして〜! チェ=ミンシクさんが北朝鮮軍の兵士として出演していたって、どこにいたんじゃ〜ッ?! 見直そうにも消しちまっただよ〜! はぁ、お会いしたかった…
「反則王」や「リベラ・メ」での演技が印象的なキム=スロさんも気づかず…orz 映画離れってこういうことかもしれない…
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