監督:黒澤明
原作:ドストエフスキー
出演:那須妙子(原節子)、亀田欽司(森雅之)、赤間伝吉(三船敏郎)、大野綾子(久我美子)、大野(志村喬)、大野里子(東山千栄子)、香山睦郎(千秋実)、香山孝子(千石規子)、軽部(左卜全)、香山順平(高堂国典)、香山薫(井上大助)、東畑(柳永二郎)、ほか
音楽:早坂文雄
日本、1951年
朝日新聞社から出ていた「黒澤明DVDコレクション」の「白痴」、一回、第1部しか見られなくて、DVDドライブを買って改めて第2部を見直しました。
今回の発見は以下。
・東山千栄子さん演ずるお母さんが、わしの好きな黒澤明映画のおばちゃんカテゴリに合致しており、ずけずけ物を言う気の強さと基本、作中でも善人なところがとても良かった。
これは「
生きる」とか「
赤ひげ」なんかがそうなんですけど、おばちゃんがいい味出してる黒澤映画に外れはない、です。
作中でも屈指のうっかりさんポジの香山くんや、白痴の亀田くんをポンポンやり込める物言いと、娘の綾子(ツンデレ・ヒロイン)への理解、それでいてまた善人なところが憎めない、愛すべきおばちゃんでした。
いやぁ、好きやわ、このお母さん。
反して、夫の大野とか、長女の範子さんの俗物っぷりがまた好対照で、綾子は母親そっくりという… ただ、綾子の場合、お母さん以上に意地っ張りな上、度がつく潔癖症で、妙子を理解できずにラストの破滅へ突き進ませてしまうのが、本人、悪意はないだけに始末が悪いんですが。
・赤間は妙子を好きすぎて自滅
ラスト、妙子の死、亀田と赤間が狂人となることで衝撃的な終わりを遂げますが、亀田くんはかなり赤間くんとその前の妙子に引きずられた感がありました。まぁ、赤間くんが妙子を殺しちゃったことを知った時点で亀田くんには耐えられないのはわかりきってることなんで時間の問題なんでしょうけど、先に逝っちゃったのは妙子と赤間くんで、この2人と密接に繋がっていた亀田くんは引きずられるを得なかったのだろうなと。言ってみれば妙子・亀田・赤間の三角関係に綾子の入る余地などなかったのだなと。しかもこの関係、妙子と亀田は相思相愛で、赤間は妙子に片思いなんだけど、妙子が亀田を愛する余り、綾子とくっつけようとしたのがまた悲劇の元で、でも妙子にはこんな真似しかできないほど作中でも屈指の不幸で、最後、綾子がこの三角関係に茶々を入れずに、おとなしく亀田と結婚しても、やっぱりどこかで妙子は破滅的な最後をたどることになりそうな感じがしました。そして赤間、亀田も引きずられていくんだろうなと。
赤間くんの場合はこの人もたいがい不幸なんで、妙子と結婚してもどっちも幸せになんかならないんだろうなぁと思うんですけど、そういう意味では亀田があいだに入れば3人でめでたしなのに、そういう幸せは亀田くん以外、誰も望んでいないっていう…
・うっかりポジの香山くんが扉の向こうでぽつねんシーン多すぎだろ
第2部で3回もあったんで、たぶん第1部でももっとある。3回とも綾子がらみというのがまた… 香山くんは範子さんとくっつくか(そして尻の下に敷かれる説)、大野家(上司)と無関係な嫁をもらった方が幸せになれると思いました。ちなみに1回は雪のフェスティバルで妙子と赤間くんに責められて残るシーンですが、シチュエーション的には扉の向こうでぽつねんと同じだろうと思います。
おもしろかったです。
たんぽこ通信 映画五十音リスト
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