上橋菜穂子著。角川書店刊。全2巻。
本屋大賞とかもらっていたんで知っている人も多そうですが、たきがは、
本屋大賞は毎年、百田尚樹の著書が含まれている時点で信用してないので、どうでもいいです。あと、著者が本屋大賞の受賞のコメントで「本をいちばん読んでいる方たちに選ばれて嬉しい」と言ってましたが、本屋というのは読者ではなくて本を売りたい人種なので、的外れなコメントだと思いました。
と、のっけから批判的なことを書いていますが、正直、この人の著作は二度と読まなくてもいいと思うぐらい、外しました。期待外れどころではありません。個人的には「
神の守り人」あたりから「
獣の奏者」まで、新刊追っかける必要がなくなってきた感じです。たぶん、次は気が向いたら読みます。
奴隷に落とされた戦士長ヴァンと、その養い子ユナ、医術に携わるホッサルという2人の主人公を置いて強大な帝国と、それに翻弄される征服された国、民が繰り広げる陰謀と戦いの物語。
上下で1000ページ以上の大作ですが、集中して読んで三日もかかりませんでした。ボリュームが少なすぎます。数えてみたら原稿用紙で2000枚ありません。今読んでいる「火山島」を中断して読み始めたのですが、こちらは11000枚、全7巻です。比べるのは、あちらは事実を下敷きにした歴史小説、これはファンタジーと違いすぎる気もしますが、そういう点で比較して貶めるのは、それこそ的外れな意見だという声も聞こえなくもありませんが、あまりに内容が足りません。そのくせ、事件はぽんぽんと起きます。無駄な章立てがないというのはストーリーテラーとしての著者の力量の高さではあると思うのですが、ぶっちゃけるとご都合主義にしか見えません。何でも都合良くいきます。無駄なことを、と登場人物が臍をかむようなシーンはありません。
しかも、この著者、主役級の人物に天才が多いです。ヴァン、ホッサルだけにとどまらず、リムエッル、サエ、皆さん、達人です。もちろん天才には天才なりの努力があってこその天才ですが、「精霊の守り人」ではここまで登場人物のインフレはなかったです。バルサは短槍の達人でしたが傷つきもしました。「獣の奏者」のエリンは天才といったら天才ですが、その能力さえ上回る王獣の扱いで傷ついてもいます。前線に立つヴァンやサエが傷つかないわけではありませんが事件が都合良く起きて、能力がそれに見合って、というのがいい加減鼻につきました。
相変わらずの異世界ファンタジーですが、ボリュームが足りないために描写がうわべだけにとどまってる気がします。だから何も残りません。その場その場でのシーンは頭に入ってますが、そのシーンが終わると何があったか覚えていません。印象的なシーンはないのです。
これが「精霊の守り人」のような児童書ならば、いいボリュームだったと思います。でも、これは児童書ではありません。そう言っては売っていません。ならば、それに見合うボリュームがなければなりません。著者しか知らない世界を積み上げなければなりません。
好きな作家さんでしたが、このような著書が高く評価されるのは残念です。
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