山本おさむ著。戸部良也原作。双葉社アクションコミックス刊。全10巻。
第2巻では、いよいよメインとなる福里ろう学校が登場します。そこは沖縄の風疹による聴覚障害児のためだけの1学年のみの学校なので、武明たちには先輩も後輩もいませんし、武明たちが卒業すると廃校になってしまいます。もっとも、この学校は中高一貫校なので武明たちは中学生から福里の生徒なのですが、1巻からこの巻の2話目までは少年野球チーム・ベアーズが活動の場となっています。
武明たちは福里ろう学校で野球部を作り、ベアーズの伊波コーチも武明たちと野球をやるために福里に転校します。
しかし、タイトルが「遙かなる」とあるように、実は高野連に加盟までが長い、この物語のメインテーマと言ってもいいくらいの長い険しい道のりでして、そのために学校長を初め、武明たちも戦いを強いられていきます。高野連が守る日本学生憲章には福里のようなろう学校を除外する決まりがあったので、福里の加盟は最初のうちは議題にもかけられることなく断られてしまうからです。
しかし、花城校長が
「100回でも200回でも…… 地べたに額をこすりつけてでも必ずやります 悔しいことで涙を流すのはこれで終わりにします」
と言って決意を固めれば、たとえ1試合もできないかもしれない野球部でも16人が残り、マネージャーも加わったところで以下、続刊です。
前後の盛り上がりに比べると、静かな戦いの始まりという感じもする巻ですが、花城校長の人柄とか、マネージャーを希望する3人の女子たちの、スポーツができないながらも野球部を応援したいという気持ちとかが丁寧に描かれてて、涙なしにはページをめくれないのでした。
この巻ではまだ不良という位置づけの安永とか、聴覚障害者でありながら手話を使わない知花美穂とか、新しいキャラクターがどっと登場して、以後の盛り上がりを予感させるのもお上手。
特に安永は、第1巻でいい子ちゃんになってしまう武明に比べて、言ってみれば「
はだしのゲン」の隆太みたいなポジションの健の引き立て役っぽいというか、安永がいる分、健がクールに見えちゃうというかで、彼の父親とのエピソードもまたいいんですけど、武明に比べると両親が離婚している分、より悲劇性が際立っちゃう健がまたいいっていう… あと、この巻を最後に過去話以外で健が涙を見せないのも武明とは別の意味で主柱なんですよね、健は。
知花はヒロインって感じの美人さんですが、手話を禁じ、口話を強いた両親に向ける屈折した思いとか、またいろいろありまして、続きます。
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