中塚明著。高文研刊。
副題は「戦史から消された日本軍の『朝鮮王宮占領』」です。
そのサブタイトルのとおり、扱いのほとんどは日清戦争の発端となった「朝鮮王宮占領」ですが、ひいては「坂の上の雲」や「龍馬がゆく」などがもてはやされている司馬遼太郎の歴史観などにも突っ込みが入り、日本人が敗戦後、どうして原爆や東京空襲、沖縄戦などの被害者意識ばかり拡大し、戦場となったアジアの人びとを2000万以上も殺害したという事実は触れず、ほとんど加害者としての立場は忘れ去ってきたか、その発端がこの朝鮮王宮の占領にあるという指摘にまで及びます。
歴史は勝者が書くもの、という意識はたいがいの人が持っていると思いますが、まぁ、ここまで自分たちにだけ都合がいい(よって一歩、国外に出るとまったく通用しない)歴史観をよく日本人は育ててきたものだと。
日本という国が100年後に名を残すとしたら、それは「第二次世界大戦を引き起こしたファシズム国家であり、アメリカの物量の前に敗戦、しかし、そのことを忘れて、折しも突入した冷戦でアメリカに尻尾を振ることにより、朝鮮戦争などの犠牲の上に経済大国として復興したが東日本大震災における原発事故の収束を誤り滅亡」とか、ろくでもないことだけは間違いがないと確信しました。
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