青空文庫。
まだまだ太宰。
芹川進という俳優志望の若者の日記という体裁を取って、16〜18歳の成長と心の揺れ動くさまを綴った。
最初は著者自身のことかと思って読み始めたら、「芹川進」という名前が登場、完全な創作だとわかります。
なんとも初々しい感性の持ち主の少年で、ある時は中学校(旧制)のくだらなさに憤り、ある時は結婚する姉の身を案じ、昨日書いたことが翌日になると一変したり、何とも真っ直ぐな少年時代だなぁと思いました。
お兄さんも大学を中退して小説家を志していたり、母親が病気で寝ていて、父親も亡いのに誰も働かないで生活が成り立っているところはかなり恵まれた家庭のようです。書生(誰の?)やお手伝いさん、看護婦さんもいるので、「
斜陽」のうちよりもっと豊かな感じ。
紆余曲折はあったものの、念願の俳優になるため、劇団に入ると、一転して日記が減り、最後はラジオで朗読なんかも任されちゃって、練習生とはいえ、なかなか芸達者の模様。
どっちかというと挫折したり、敗北者だったりする人物が主人公の印象が強いので、「走れメロス」に近い時期の、若い太宰なのかなぁと思いましたよ。
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