朝日文庫刊。朝日新聞社編。「いま、戦争を考える」シリーズ。
被爆22年後の1967年、朝日新聞社が全国の被爆者500人にとったアンケートについて記した本。
帯にあるように「統計的な数字を食い破り、一人ひとりの生身が姿を現わ」した稀有な記録なのだが、なにしろ40年前のものとあって古い。しかも、こんな古いものをまるで新刊のように出版した朝日文庫の厚顔さに呆れる。
確かに、このアンケートも、1人ひとりの証言も価値のあるものだと思うが、2008年に出版するのならば、500人のその後を追うぐらいのことはしても良かったのではないか。500人のうち、何人が生き延びられたかはわからないが、その後を追うだけでも、価値はずっと高まったはず。被爆22年後の被爆者500人の記録と、さらに41年経った記録、そこに流れた時間がどれだけのものをもたらしたか、見せるべきではなかったのかと思う。
新聞社が本を出版するのはいいと思うが、手前味噌に新聞の中で自社出版を宣伝するのはどうか。少し控えめにした方がいいんじゃないかと思うことがある。
少なくとも当シリーズが「いま、戦争を考える」のであるならば、1967年の記録をただ出すのではなく、その後を追った調査を加え、被爆者たちのその後を追うことが必要だったのではないか。そうでなければ、とても「いま」などとは名乗れたものではないと思うのだが。
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