監督:溝口健二
原作:上田秋成
出演:若狭(京マチ子)、宮木(田中絹代)、阿浜(水戸光子)、源十郎(森雅之)、藤兵衛(小沢栄太郎)、ほか
音楽:早坂文雄
見たところ:桜坂劇場
日本、1953年
というわけで溝口健二の2本目です。これがいちばん短くて、いちばんおもしろかったですが、
ラストの宮木の独白は蛇足だろ、あれ。
百姓をやる傍ら、瀬戸物を焼く源十郎は、ある日、長浜で大金を手にしたことをきっかけにさらに瀬戸物を作り、もっと金を得たいと願う。源十郎の妹の夫、藤兵衛は、貧乏な暮らしが嫌で侍になろうと源十郎とともに長浜に出るが、侍になるには具足と槍が必要と言われ、源十郎の仕事を手伝う。しかし、世は戦国時代、源十郎たちの住処を柴田軍が通っていき、源十郎たちは焼きかけの瀬戸物を置いて避難しなければならなくなるが、瀬戸物は無事であった。船で琵琶湖に漕ぎ出した源十郎と妹夫婦、それに源十郎の妻子だったが、途中で海賊が出ると聞き、源十郎は妻子を船から下ろして家に帰らせ、大溝で商売をする。藤兵衛は念願の金を手に入れ、具足と槍を手に入れるが、藤兵衛を追った阿浜は落武者たちに犯されてしまう。一人残された源十郎は瀬戸物を買いに来た身分の高そうな女性、若狭の言う朽木屋敷を訪れるが、そこで若狭の虜になってしまう。藤兵衛は偶然、敵の大将の首を手に入れて出世するが、休もうと寄った先で遊女に身をやつした阿浜に再会する。源十郎は若狭に反物を贈ろうと大溝に出向くが、源十郎が朽木屋敷から来たと聞いた亭主は金は要らぬと言い、途中で会った神官に「死相が出ている」と言われてしまう。屋敷に帰った源十郎を若狭は引き止めようとするが、妻子のことを思い出した源十郎に若狭は触れることができず、それも神官が源十郎の身体に書いた呪符のせいだった。やがて気が触れたように刀を振り回した源十郎は気絶してしまうが、目が醒めるとそこが屋敷ではなく、ただの焼け跡だと知る。急いで村に帰った源十郎を妻の宮木と息子の源市が出迎えるが、朝になってみると村名主から宮木の死を知らされ、悲嘆に暮れるのだった。一方、妻と再会した藤兵衛は具足や槍を捨て、村に戻ってくる。藤兵衛が畑を耕し、源十郎が瀬戸物を焼く生活に二人は戻ったのだった。
最後まで粗筋書きましたけど、ラスト、死んだ宮木が「これで良かったんだ」みたいなことを延々と言ってるのは蛇足でした。別に要らんだろ、あれ。だって、元の生活に戻った時点で二人ともそっちを選択したわけじゃないですか。何でそういう余計なもん、付け足すかなぁ。
源十郎は森雅之さんでしたが、なかなか「
白痴」とか「浮き雲」の森さんと結びつきませんでした。うーん、無精髭が悪かったのかも…。むしろ、「
あにいもうと」で京マチ子さんと兄妹やってたんだよなぁと思ったら、伊之吉が出てきたんで、髭を剃っちゃえば森雅之さん以外の何物でもなかったんですが。
で、良妻賢母ながら、脇に引っ込んだ田中絹代に対し、京マチ子がヒロイン(悪女だけど)として前面に出てきた本作、さすがの京マチ子さん、外れませんでした。むしろ、この人、何で化け猫とかやってねぇんだよな後半の物の怪っぷりがおっそろしく良かったです。そしてそれ以上に、付き人の右近という婆さんが淡々と、あくまでも淡々と裏切った(事情を打ち明けていないのでお互い様とも言えますが)源十郎に恨み言を述べるシーンなんか、下手なホラーも真っ青でした(たきがははホラーには弱いですが)。もう
京マチ子とセットで怖かった!!! ((((;゜Д゜)))))))一方、もう1組の主役夫婦とも言える藤兵衛と阿浜ですが、こっちは何といいますか、侍の醜さというか、酷さというか、何ていうの、
日本軍以前から、日本人って強盗殺人強姦魔なんじゃねーの!!!って言いたくなるようなシーンばっかりでした。まぁ、悲劇性も強調されてるんでしょうけど。
あと、落武者なのか正規兵なのか知りませんが、人の家でご飯漁ってるのとか見たら、この時代から食糧の調達は現地が基本かと思って、それから300年も経ってんのに進歩してないことに驚いた!!!
日本軍の補給は現地調達が基本なので、いくら「欧米の植民地支配から解放」と称しても現地の人の恨みを買いまくったわけです。
なもんで、溝口健二の美学よりも、そっちの方に目が行ったんで、その落武者に殺された宮木が、ラスト、わかったようなことをナレーションっぽく言ってたのはちょっとしらけたというか、ほんとに蛇足としか言いようがなかったです。
たんぽこ通信 映画五十音リスト
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