監督:パク=フンジョン
出演:チョン=マンドク(チェ=ミンシク)、ク猟長(チョン=マンシク)、チョン=ソク(ソン=ユビン)、前園長官(大杉漣)、チルグ(キム=サンホ)、リュ少佐(チョン=ソグォン)、ほか
韓国、2015年
1916年の朝鮮半島、智異山。山の神様とも崇められる1頭の大虎を巡る、地元の猟師たちと日本軍の戦いの物語。
個人的には、これがいちばんおもしろかったです。というか、猟師たちに神と崇められながら、その毛皮に魅せられた日本軍に狩られていく虎たちの最後の生き残りの大虎の立場を思いますと、連れ合いも殺され、子どもたちも殺され、さらに子どもたちは誘い出す餌にされ、と酷い目に遭っているので、虎さんへの同情がめっちゃ湧いてしまいました。しかも終盤、マンドクが、実は母虎を撃ち殺し、幼い大虎さんを助けたことがあったとか、その因縁というか出会いというか、ただの猟師と虎じゃない、ただの狩る者と狩られる獲物じゃない関係なんかが虎に感情移入しやすくできとったんじゃないかと思います。
一方、この孤高の王者、最後の虎に対抗するのが、やはりかつては名猟師として名を馳せたチョン=マンドクという対比がチェ=ミンシク氏ならではの重厚さを感じる演技によって、もはや他の誰も分け入れない、俺とおまえな世界というのが二度の虎退治に大軍繰り出して、という展開で見えてしまいました。まぁ、それはそれでいいんですけど。大杉漣さんの嫌みっぷりとかもはまってたし。最後はやたらに潔かったですけど。
だから、最初からこれは名手と大虎の物語で、この一人と1頭でしか決着がつけられない話だと思いました。そこら辺の渋さがかなり好み。
で、脇をがっちり固めるのがク猟長とかチルグさんといった、マンドクのかつての同業者とか、朝鮮人でありながら日本軍の将校であるリュ少佐とか、マンドクの息子のソクくんとか、植民地とされて間もない時代背景だったりするわけです。
ク猟長は、かつて大虎に弟を殺され、自身も顔にひどい傷を負ったためもあってか、大虎狩りに異常な執念を燃やしてましたが、最後はやっぱり大虎に倒されちゃいました。「
7番房の奇跡」ではイェスンが房に持ち込んだ携帯電話で嫁と話してたシーンが印象的。
チルグさんはクールなク猟長に対して、わりと人情派。最後まで生き残ったけど、性格的に猟師向いてないように思うんですが、どうなんでしょう。「
黒水仙」が映画デビュー作っぽいけど、その他大勢の捕虜役だから、ちょっとわかりません。「
ユゴ 大統領有故」ではハン=ソッキュ氏の部下役でしたが、これも記憶になく…。いかにも人の良さそうな笑顔が印象的。
ちなみにその嫁が「
詐欺師キム=ソンタル」とか「国際市場で逢いましょう」出演の人情派なおばちゃんが印象的だったラ=ミランさん。ただ、今作では猟師という不安定な立場の夫に不満をあからさまに言うことはないけど、マンドクの息子のソクと相思相愛な末っ子ソニちゃんを「食うに困らぬ」という理由で米屋に嫁がせようとしているしっかり者のお母さん。
で、そのために「大金が必要なんだ」と思い詰めちゃったソクくんは、まさか生きてるかなぁと思いましたが、全編に流れるシリアスさからやっぱり死んでたようで、マンドクに先立ってしまいました。ソクくん、せめてマンドク父さんに「ソニと結婚したいから金が要るんだ」ぐらい言っても良かったんじゃないかと思ったよ…。
リュ少佐は、日本の長官と地元の漁師(主にク猟長)の間に立つ典型的な中間管理職。チョン=ソグォンさんはこの次に見た「監獄の首領」にも出演してたんですけど、薬物違反で逮捕されたとか…
虎さんはどうやら全面的なCGだったらしかったんですが、ラストまで動きとかも良かったと思います。まぁ、日本軍相手に絶対的な強さを見せちゃう辺りが「そんなわけねーだろ」的な意見も見ましたけど、そこはそれ、エンタテインメントでいいんじゃないかと思いました。植民地の時代だしね…
作中の大虎さんは「朝鮮虎の最後の1頭」と言われてますが、実際に1946年までには半島全土から虎は狩り尽くされたようです。
マンドクと一人と1頭で倒れ、雪に埋もれていくさまは、是非、映画館で見たかったなぁ!と思わせる美しさでした。
たんぽこ通信 映画五十音リスト
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