製作・監督・脚本・主演:パク=ジョンボム
出演:スンチョル、ギョンチョル(チン=ヨンウク)、スギョン(カン=ウンジン)、ペック(白い犬)、ほか
2010年、韓国
見たところ:横浜シネマ・ジャック&ベティ
「
クロッシング」以来の脱北者ものです。
公開中の映画につき、続きにしまっておきますが、こういうネタバレはどれだけの人が気にするのだろうか…?
北朝鮮のムサンから脱北してきたスンチョルは、ソウルに来て8ヶ月、良い仕事が見つけられず、かつかつの生活をしている。そんな彼の心のよりどころは教会で見かける聖歌隊のスギョンだが、やがてスギョンの父が経営するカラオケで働くようになる。しかし、中国でブローカーとして北朝鮮に金を送る叔父を持つ親友ギョンチョルの叔父が、公安に捕らえられたことで、スンチョルの周囲も変わってゆくのだった…。
最初から最後まで主人公に共感できない話でした。ドキュメンタリーっぽい描き方で、公式サイトを見に行ったら、ラストで「故チョン=スンチョルに捧ぐ」とあり、映画の主人公と同じ名前だったのは監督の親友だったとわかり、監督の親友は亡くなったけど、映画では主人公は生き延びる道を選んだのだなぁと思いました。
共感できなかった最たるところは、スンチョルが脱北者に特有のおかっぱ頭をいつまでも変えないで、生きるために韓国に逃げてきたはずなのに、その生き方が生きようとしているようには見えなかったことでした。
しかし、ギョンチョルの叔父が捕まり、叔父の威光で威張っていられたギョンチョルが急に危ない立場(スンチョルが時給4000ウォンのアルバイトをしているところで、2500万ウォンの仕送りを北朝鮮にしているのに、その金がそっくり消えた)に追い込まれた辺りから、ポスター貼りの仕事をしていたスンチョルが、同じようにポスターを貼る同業者から虐められて反撃をしたり(それまでは2回遭遇して、ただ殴られているだけだった)、教会での集まりで、北朝鮮にいた時に食料のために人を殺した話をしたり、ついにはギョンチョルがため込んだ金をぱくってしまい、その金で髪型を変え、服を買い、スギョンと同じ聖歌隊に参加するという生き方を選んだ時、スンチョルが可愛がっていた白い犬が死んでしまったところで、エンド。ああ、白い犬は、スンチョル自身の白い心の象徴であったのだと思いましたが、その心を守ろうとして死んでしまうより、わしは何度も書いていますが、生きている方に肩入れをするので、スンチョルが生きようとした方がよほど良かったのではないか、そうしなければ、何のために故郷を捨ててきたのか、何をしにソウルまで来たのかわからんではないかと思いました。
お涙ちょうだいかと思っていたら、意外と硬派なドキュメンタリー・タッチ。だから韓国映画は侮れない。
たんぽこ通信 映画五十音リスト
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