監督:成瀬巳喜男
原作:室生犀星
出演:もん(京マチ子)、さん(久我美子)、伊之吉(森雅之)、母親(浦邊粂子)、父親(山本礼三郎)、小畑(船越英二)、ほか
1953年、日本
妹のもんが妊娠させられて帰ってきたため、兄の伊之吉は機嫌が悪い。そこへ看護婦として働く末っ子のさんが帰ったが、さんざん兄に虐められてもんは家を出ていってしまう。居所のわからぬまま月日が流れ、ある日、もんの実家を小畑と名乗る若者が訪ねてきた。彼こそもんを妊娠させた張本人だったのだ。父親とは穏やかに話がついたが、後をつけた伊之吉は小畑にからみ、もん可愛さで辛く当たったことを打ち明け、小畑を殴る。1年後、実家に戻ったもんは、兄が「小畑を半殺しにした」と言ったことを怒り、とっくみあいの喧嘩に至るほど強い女になっていたのだった。
「
めし」と同じような感じの作風で、劇的な事件は起こりません。まぁ、もんが最初から孕まされて出戻りですんで、それがいちばんの事件か。しかし、この一家、女性陣は働いてしっかりしていますが、父親はかつて「親方」と呼ばれた過去におんぶにだっこな感じで、今は酒を飲んでくだを巻く毎日。長男の伊之吉も同様でチンピラまがいのプー太郎です。末っ子のさんと母親がいちばんしっかりしていますな。成瀬作品では男性がだらしないのがデフォルトなんか… (´・ω・`)
で、最初は団扇とか氷とか出てくるんで夏なんだなとわかりますが、冬が来て(雪が降っている)、小畑が訪ねてきます。もんを孕ませた張本人ですが、優男の学生です。見たまんまのいいところのお坊ちゃんで、親の監視が厳しくてうちを出られなかったという言い訳がどーしようもないです。その上、もんには中絶させたかったらしく、その代金を負担したいとか言ってますが、要するに手切れ金を持ってきまして、何とも煮え切りませんが、もんが後で「小畑がいちばんちょうどよかった」と言ってるので、無難な男なのかも (´・ω・`) 男として、そう言われるのは屈辱な気もしますけど。
そこで伊之吉が小畑をつけて、もんのことで文句をつけまして、この人、本人には憎まれ口ばかりたたいて、夏はもんを家から追い出してしまいましたが、実はもんのことは赤ん坊の頃から可愛がっていたシスコンのツンデレでして(今風に言うと)、もんに冷たく当たっていたのも、自分がそうすれば、両親は逆にもんに同情するだろうという計算のもとだったのでした。で、いまさら、のこのこと現れた小畑が気に入らないとさんざんに打ちのめしますが、顔に痕も残らないほどなんで、後でもんに「半殺しにした」なんて嘯いたのは全然当たってないわけです。
で、母親が「三月ぐらい前か」と小畑が訪ねた時を言っていますが、たぶん、物語の冒頭から1年後くらいの夏に、もんとさんが揃って里帰りで、前は泣いてうちを出たもんも、都会で揉まれ、すっかりすれっからしになって、相変わらず悪態をつく兄にくってかかるような女になりました。で、初っぱなからいちばんしっかりしていて、養子の恋人が親に勝手に相手を決められるのが嫌だから駆け落ちしようなんて言ってきたのをきっぱり断ってる辺り、なかなかできた女で、最後までできた女を通すんですけど、末っ子のさんがもんと仲良く都会に戻っていくという筋で、相変わらず、凄い山も事件もないけど、何というか、成瀬節だなぁという映画なのでした。
川向こうが東京だと言っているので、ここは神奈川か埼玉か、あるいは千葉かと思って見てましたが、「菅間駅」で検索したら埼玉県川越市にある地名なことが判明、ただ、特に舞台は特定してない感じの話でしたが、田舎っぷりはなかなかな風景でした。
それはそれとして、「
白痴」や「浮雲」や「羅生門」のようなインテリっぽいキャラの多い森雅之さん、兄キだってわからなかったよ、おいら!
たんぽこ通信 映画五十音リスト
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