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されど平穏な日々

日々のつぶやきと読んだ本と見た映像について気まぐれに語るブログ。Web拍手のメッセージへのレスもここ。「Gガンダム」と「ジャイアントロボ」への熱い語りはオタク度Maxにつき、取り扱い注意! 諸事情により、コメントは管理人が操作しないと反映されません。時々、サイトの更新情報など。

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黒澤明「七人の侍」創作ノート

黒澤明著。野上照代解説。

という本があるのは前から知っていたのだが、出た当時は買うつもりがなく、立ち読み程度で済ましていたところ、沖縄県立図書館に置いてあったので読んできました。

個人的には菊千代の姿を黒澤監督がスケッチして「バレリーナのよう」というコメントがついているというカットが見たかったのですが、どうやらこれではなかったらしく(あるのは間違いないので)、カットは絵コンテのみでありました。

ただ、そのなかで衝撃の事実(「七人の侍」好きとして)があったので、なぜか話題にもなりませんけど紹介しときます。

「七人の侍」の脚本を書くに辺り、黒澤監督が7人の性格をノート一冊に書き留めていたのは有名な話だと思いますが、わしは当然、その比重はみんな、わりと同等だと思ってました。7人のキャラ立ちから言っても、それぞれが詳しい経歴の持ち主なんだろうと思ってたのです。
ところがどっこい、その比重はキャラによって全く異なり、そこに衝撃の事実が隠されていたのでした。

7人についてのメモは以下の順で量が多くなっています。

五郎兵衛<勝四郎、平八<七郎次<久蔵<勘兵衛<菊千代(ノートの時点ではこの名前ではない)

まぁ、予想どおりと言いますか、「七人の侍」を初めて見るような観客にとり、覚えやすい順番です。平たく言うと。
三船敏郎のネームバリューでいったら、やはり菊千代は、その奇異な生い立ちとトリックスター的な目立ちっぷり、圧倒的な強さと壮絶な最期、どこか子どもっぽさの抜けない性格などからいっても「七人の侍」初心者がすぐに覚えられるキャラだと思うんです。わしもそうだったし。
さらにリーダーの勘兵衛と、剣豪という強さと秘めた優しさというギャップ燃えができちゃう久蔵は覚えやすいキャラの筆頭でありましょう。

監督メモは多いにもかかわらず、縁の下の力持ち的な役割に徹する七郎次より、ロマンスのある勝四郎が覚えやすいのも、まぁ常套です。

わしは最近、「七人の侍」でいちばん好きなのは勘兵衛を差し置いて七郎次ではないかと思ってるぐらい、七郎次燃えなんですけど、何回か見ていくと七郎次の良さはじわじわと効いてくるのですよ。勘兵衛の古女房で、何かと世話をやく気の効き方(繕い物をしてるとか、脱いだ草鞋をそっと揃えるとか、足を洗う水を差し出すとか、ほんっと七郎次いいわvv)や、勘兵衛の誘いを笑みひとつで受ける忠誠ぷりとか、万造に対する気の使い方とか、七郎次の話をしだすと長くなるので、ここら辺でやめますが、何回か見ると次第に七郎次や平八に目が向いていくわけです。たぶん。わしがそうだったから。

で、平八は何度も書いてますけど、飄々とした性格と、その性格からは予想もできない最期がきっと印象に残りやすいんじゃないかと思うんです。旗を作るとか、いろいろ動きますしね。

で、誰もがつまづくのが五郎兵衛。まず、7人のなかで唯一、最期が描かれない。どうしても勘兵衛とセット。という理由できっと覚えにくい筆頭にいるんじゃないかと思います。黒澤監督のメモにだって五郎兵衛で真っ先に書いてあるのは「勘兵衛の小型化にならないように」って注意書きであってキャラクター性ではない。だからメインのキャラクターのなかでは覚えづらい。下手すると自己中で娘が全ての万造、気弱な与平、女房を野盗に盗られた利吉といった百姓のが先に覚えられるんじゃないかと。茂助はたぶん、名前を呼ばれないので覚えづらいけど、リーダーシップを取ることが多いので、ああ、あの人ね、くらいの印象はあるんじゃないかと思うのですが、五郎兵衛はたぶん、その下。じさまより下。

それもそのはず、監督のメモの量が圧倒的に少ない。下手すると百姓4人より少ない。

そう、わしが日本映画の最高傑作と言い切る「七人の侍」ですが、思わぬところに致命傷になりかねない弱点が潜んでいたのでした。それが五郎兵衛です。

しかも野上照代さんの解説によると、五郎兵衛を演じた稲葉義男氏は、実は7人のなかではいちばん芸歴が浅く、ただその風貌だけで五郎兵衛を割り振られた役者さんだったというんですから驚き桃の木です。そう、この時代、わりと監督と俳優はセットでした。○○組みたいな感じで、この監督の映画には馴染みの役者というのが当たり前の時代だったのです。ところが稲葉義男さんだけ黒澤組じゃないんですよ(たぶん他の映画には出演してない)。しかも会社も違う。

撮影当時、稲葉さんは黒澤監督に怒られてばかりいたそうです。あんまり怒られるので朝が来なければいいと言ってたとか。こりゃあ、かなり重症です。それもそのはず、五郎兵衛のキャラができてないんだから無理もない。監督、自分の責任は棚に上げて五郎兵衛の解釈を稲葉義男さんに全振りしちゃったわけです。しかし、そこまで引き出しのない役者の浅さで監督には怒られてばかり。なにしろ、ただの通行人だった仲代達矢が、歩き方が悪いと一日歩かされたという逸話があります。すでに「羅生門」でグランプリ摂った後ですから、天狗にもなっていたでしょう。でも五郎兵衛がどんなキャラかは決まってない。決まってたのは風貌だけだったとは、よくもあんなキャラ立ちさせたものだと映画を見てると思います。

だいたい、五郎兵衛の初登場シーンって、物陰で待ちかまえる勝四郎の雰囲気を察して、「ご冗談を」と言っちゃう剣の達人なんですよ。勘兵衛が後で久蔵のことを褒めますけど、たぶん、実力的には久蔵に負けず劣らぬなのが五郎兵衛ではないかと、わしは思ったものです。だから実は戦闘シーンで五郎兵衛を見たかったんですけど、きっと撮れなかったんだろうと思いました。久蔵を演じた宮口精二さんが、それまで剣を持ったこともない、剣道の心得もない素人とは有名なエピソードですが、こちらは黒澤組のベテランです。そこはきっちり仕上げてきたんでしょう。でも五郎兵衛はきっと間に合わなかった。だから、五郎兵衛の死ぬシーンって描かれなかったんじゃないかなぁと邪推します。もっとも種子島では平八も久蔵も菊千代も死んでるんで、五郎兵衛の死因もそれなんですけど、死ぬシーンだけは撮れなかったんだろうなぁと思いました。

改めて役者さんと映画の凄さに、凄いなぁと感心した次第です。監督は、まぁ、いいや。

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