監督・脚本:熊井啓
原作:遠藤周作
出演:勝呂(奥田瑛二)、戸田(渡辺謙)、橋本教授(田村高廣)、婦長(岸田今日子)、上田看護婦(根岸李衣)、柴田(成田三樹夫)、浅井(西田健)、GHQの取調官(岡田眞澄)、おばはん(千石規子)、権藤(神山繁)、ほか
見たところ:シネマノヴェチェント
日本、1986年
「
日本の熱い日々 謀殺・下山事件」に続いて熊井啓監督の特集です。
GHQの取り調べを受ける元医学生の勝呂は、そもそもの発端となったF帝大医学部内の権力争いなどを問われるままに語る。それは医学部の部長が亡くなったことに端を発した事態で、勝呂が面倒を診ていた学用患者のおばはんも、そのために利用されようとしていたが、勝呂と友人の戸田が指導を仰ぐ橋本教授が票稼ぎのために行おうとしていた手術を失敗したことで勝呂が思いもしなかった方向に向かっていく。F帝大が空襲を受けたことで、すでに助かる見込みのない重症の肺結核患者だったおばはんを失った勝呂は田舎に帰って医者になりたいという希望も失っていくが、そんな時、大学を爆撃したB29の搭乗員たちが捕虜として囚われており、軍の命令で生体解剖することが決まる。橋本教授が出世する道を絶たれたことを知った柴田や浅井たちは軍に近づくことで出世街道に乗ろうとしており、勝呂と戸田を実験に誘う。ふたつ返事で承諾した戸田に対し、勝呂は迷いながらも実験開始までつき合ってしまう。しかし、いざ実験が始まると勝呂は何も手伝うことができず、捕虜が生きながら殺されていくのをただ見守るしかできなかった。実験は橋本教授と対立していた第二外科の権藤教授らも巻き込んで捕虜8人全員を殺すまで続けられた。戦後、関係者20人以上がGHQに有罪の判決を受けたが、日本の敗戦前から始まっていた東西冷戦を前にアメリカは刑を執行せず、関係者は釈放されてしまったという。
実際にあった事件を遠藤周作が1958年に小説化、それを熊井啓監督が1969年に脚本化したけれど内容が内容なもんでスポンサーがなかなかつかず、1986年に映画化したという問題作。
クリスチャンである作者が日本人が宗教的な倫理観を持たぬことで集団心理と現世の利益で動きやすいと思って書かれたという今作。勝呂も戸田も特別な人間ではなく、ごく普通の日本人に過ぎず、戦時下という特殊な場に置かれ、周囲の圧力に同調するように人体実験に参加してしまうがキリスト教徒ならば拒否するのではないか。
でもキリスト教徒もメンゲレとか人体実験やったわけだし、アメリカだって731を免除したわけだし、宗教は関係ないと思います。
ただ、同調圧力という点においては今の時代にも通用するテーマだと思いました。
たんぽこ通信 映画五十音リスト
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